小石川後楽園で中山道を歩き、花菖蒲を愛でる。┃東京住まいの暇潰し⑥
東京はそろそろ花菖蒲の季節だ。
一番有名なのは堀切菖蒲園だろう。聖地と言ってもいい。
都内には他にも名所がいくつもある。今回はその一つ、小石川後楽園を訪ねてみた。
…とはいえ正直なところ、近くで用事を済ませた帰りである。
東門出入口は水道橋から徒歩5分ほど。大きな観覧車のある駅で降りればいい。案内板も出ているので、迷うことはまずないだろう。
なお、水道橋駅の出口は東西の二か所のみ。JRで行く場合は西口(新宿側)から出てほしい。反対側に出ると、車両分をマルっと歩くことになる。正直遠い。
入園料は300円。安い。
小石川後楽園は、江戸時代に造られた水戸徳川家の大名庭園だ。初代頼房公が中屋敷(のちに上屋敷)の庭園として造り、二代光圀公が完成させた。
三代将軍・家光公も関わった、由緒ある庭だ。
この庭園の面白いところは、中山道を模して巡ることができる点にある。
園内には各地の名所が凝縮されている。
私は実際に中山道を、東京から京都まで歩いたことがある。木曽路の山の深さや、湧水の美味しさ。そんな記憶を引っ張り出しながら園内を巡った。

木が生い茂り、比較的暗い。
本物の木曽路は山深いながら、
非常に美しかったのを思い出す。
藤村の語彙力に脱帽。


過剰に都会だ。
中央の池は琵琶湖、そこに浮かぶのは蓬莱島。なかなか風流な造りだ。
順番に辿っていくと、目的の花菖蒲園に出る。
今回は東門から入って、時計回りに巡った。


満開は来週だろうか。6月に入ったら、また来ようと思う。
一周したところで園内アナウンスが流れ、ガイドツアーの時間だと知る。
せっかくなので参加してみることにした。
東門から集合場所の西門へ向かう。ガイドさんが既に待機されていたので、開始まで少し話を聞かせてもらった。
小石川後楽園は、季節の移ろいがとても分かりやすい。一週間でも緑の濃さや葉の大きさが変わる。それを見ているだけで飽きないという。
素敵な感性だ。素直に見習おうと思う。
時間になり、京都・清水から案内が始まる。

手前のザクロは、子孫繁栄を願って植えられたそう。


五代綱吉公の生母・桂昌院が、70代でこの庭を訪れたことがあるという。その際、「危ないから」と庭の尖った石や不安定なものを取り除かせたらしい。地震の多い時期だったそうだ。
家光公ゆかりの人物だけに、断ることもできなかったのだろう。当時の庭師たちの苦労がしのばれる。

橋は渡月橋。
音羽の滝跡も興味深い。普段は水を落とさず、客が来た時だけ人力水車で水を引いたそうだ。
「今だ」と合図を出す役がいたのだろうか。


歴代当主がちょっとずつ手を入れていたそうだ。
これは6代治保公時代の作。

花菖蒲園の場所は、もともと田んぼだったという。
公家から嫁いできた姫に、「お米はこうやって育っている」と見せるために作られたらしい。


池には能舞台を設け、橋を渡し、舟を浮かべて遊んだという。
なんとも贅沢な遊びだ。


唐門より東側は「小石川後楽園」ではなく「内庭」で、
特別史跡・特別名勝ではないらしい。
この日の参加者は4人。
全員が1人参加だったため、ガイドさんを交えて自然と会話が生まれた。
家光公ゆかりの庭ということもあり、簡単に壊すことはできなかったらしい。維持には手間も金もかかる。
そこに時折、身分の高い客が訪れる。現場は相当大変だったのではないかと思った。
予定は1時間だったが、気づけば1時間半。
少人数で質問を重ねながら進む時間は、なかなかに面白かった。
私にはない角度の鋭い問いや感想が投げられて、非常に勉強になった。
他人の視点を借りると、見え方が変わる。
もし可能なら、平日のガイドツアーに参加してみてほしい。気軽に質問したり、隣の人と話してみると、新しい発見がある。
一人で巡るのとは違う楽しさがある。知的好奇心がくすぐられる、いい一日だった。
次回、花菖蒲の聖地へ。
