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魂の仕事

1月10日。遅めの初詣を終えた私が神社の石段を降りると、小さな机と「易」の文字が目に入った。

その易者は、私の顔を見るなり自信に満ちた表情で言った。

「先生か、看護師だろ。」

少々の沈黙ののち、

「…いえ、会社員です。」

と、私は答えた。

「そうかぁ。絶対、先生だと思ったんだがなぁ…いや、絶対先生だ…」

呟きながら、易者はおもむろに私の左手を取った。

料金表をチラと見やると、「2000円」とだけ書かれていた。一定時間毎に料金が加算されていくシステムではないらしい。

高額な料金が請求される可能性がないことを確認した私は安堵した。

「正月だし、まぁいいか」と、そのまま流れに任せて手相を見てもらうことにした。占いは、割と好きな方だ。

易者は、「この線は頭脳線……、そしてこっちの線はな…」と、なおも呟くようにしゃべりながら、私がいかに教員向きであるかを述べている。

そこで私は、「先月、中途で教員採用試験を受けてきたんです。」と白状した。

「そうか、そうだろう」

易者は顔を上げ、ニヤリと笑った。

「会社員は、魂の仕事ではなかっただろう。…そんなこと、あんただってわかってただろうに、なんで勤め人になった?」

「…学費を、返さなきゃならなくて。つい焦ってしまって。」

月々の給料から引かれる額は少なくなく、毎月カツカツだった。なんとか毎月乗り切る生活に疲れ果てていた。

「良いオファーだったんですよ。」私は付け足した。

企業に転職すると、学校時代よりも100万円ほど年収は上がった。最初こそ飛び上がって喜んだが、税金を差し引くと、手取りは思ったほどではなかった。

「また、学校に戻ろうと思って。」

易者を前に、ついぽろぽろとこぼすように話をしてしまった。

「…このへんだと、〇〇校か?」

「はい。」

「…そうか。」

しばし沈黙があって、彼は続けた。

「あんたは、金を”儲け”ようとしちゃだめだ。魂の仕事をしろ。そうすれば、食いっぱぐれることはない。」

やっぱりそうか。

私は、私の仕事をしなくちゃならない。

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