十三のサウナでシャンな男に近づく
大阪で有名な難読地名の「十三」は「じゅうそう」と読み、阪急電車の十三駅を中心とした繁華街です。
駅の周辺はラーメン店の激戦区で、駅舎を出てからすぐに見えるラーメン豚山、その隣に最近になって現れた町田商店、ラーメン系ユーチューバーのSUSURUさんにも高く評価されている桐麺、あとはチェーン店の亀王や三豊麺などがあります。
ラーメン屋だらけの商店街を抜けて、横断歩道を渡った先にもまた商店街があるのですが、駅前と違って、少しうらぶれた雰囲気があります。
そして、昼間はわりと静かです。なぜかというと、夕方にならないと開かない類いのお店が、こちら側にたくさんあるからです。ええ、つまり、そういうことですよ。……わかるね?
かつては「名案内コ○ン」という看板がデカデカと掲げられた建物があって、どっかの見た目は子供で頭脳は大人の名探偵みたいな風貌のキャラクターがグラサンを掛けているイラストが描かれていて、ある意味では十三の名所のひとつでした。
背景をレンガブロックにして、「名案内○ナン」のロゴまで本家の名探偵に寄せる、謎の気合いの入りっぷりでした。無料案内所の規制が厳しくなってからは、たこ焼き屋に擬態して続けていたようですが、2009年ごろのガサ入れによって、あえなく営業終了。
近くには「フロ○ス」という、あの某大手消費者金融業者の社名にそっくりな風俗店があって、こちらもまた、真っ黄色の背景に黒字のロゴで、本家にそっくりな看板を掲げていました。
ただ、横に小さく「ゆ」と書いてあって、つまりはまあ、大人のお風呂屋さん。実はうら若き頃にひとりで行ったことがあって、今でもこの辺りを通るとソワソワする……。
当時は銭湯には全く興味がなかったので「ゆ」の文字には心が踊らなかったけど、下半身は踊っていたなあ(やめなさい)。
ちなみにこの近くには、北野高校という大阪府北部では屈指のエリート高校があるのですが、北野高校の学生の皆様は、このディープゾーンを横目に見て何を思っているのでしょうか。
いや、健全な北野高校の生徒の皆様は、そんなところに行かずに友達とラーメン屋に行くか、淡路のラウンドワンとかに行くんでしょうな。そもそも、名案内コナ○もフ○ミスももうないし、あったとしても高校生は入れないけどね。
さて、そんなソワソワする繁華街の一角に、ひときわケバケバしいネオン看板が見えます。
「NEWサウナ シャン」。ド派手な看板とともに、デーンと構える洋風のビル。ビルの正面にはこれまたケバケバしく「CAPSULE HOTEL」「SAUNA ROOM」のネオン。
1972年の開業なのだそうで、おそらくこのネオンは、半世紀が経った現在に至るまで、当時のものを使用しているのだと思われる。
余談だけど、向かいのキャバレーのネオンもまた、昭和の匂いをプンプン漂わせていてかっこいいので、ついでに見ておくと実にエモいです。現役のキャバレー自体がもうあまりないしなあ。
NEWサウナのシャンの自動ドアを潜り、いざ参りましょう。まず目に入るのは、イレズミ者・泥酔者おことわりの注意書き。
これがまた、いかにも昭和後期といった趣のゴシック体の文字で書かれている。もしかしたらこれも開業当時から変わっていなかったりする?
淀川警察署のご指導のもと、イレズミ者・泥酔者は、発見次第つまみ出されるようです。イレズミはともかく、場所が繁華街なだけに、泥酔状態で来る客はたまにいたんだろうなあ。
2階のフロントには、ダンディーなおじさまがおられます。60分コース(1300円)と時間無制限の普通コース(2200円)の2パターン。
かつては夜通し営業しており、カプセルホテルも運営していたそうですが、現在は22時台の閉店で、宿泊は不可、日帰りサウナのみ。
フロントのすぐ横にあるロッカーに衣類を入れて、脱衣場の籠に用意されているサウナパンツをまず履きます。
絶対にこのサウナパンツを履き忘れてはいけません。そうしないと、フル○ンの状態で食堂のお母さんと鉢合わせることになってしまうので……。
この施設はなんとも不思議な構造で、ふつうは脱衣場と浴室は直通で往き来できるように作られているものですが、ここは直通ではなく、脱衣場からUターンしたところにある階段を下りないと浴室に辿り着けない。
そして、その階段の横は食堂になっていて、お母さんが常駐されているのです。
お母さんは毎回のように「お風呂はあっちです」と案内してくれます。初見ではまずわからないようなところに浴室があるものだから、もうこの案内もルーティンに組み込まれているのだろうなあ。
浴室内はとてもシンプルで、メインの大きなサウナとアロマの香りが漂うサブサウナ、霧シャワーのようなものが流れている水風呂、あとジェットバスと泡風呂。
サウナが4つも5つもある梅田の大東洋やニュージャパンと比べると小ぢんまりとしていますが、このミニマムな雰囲気が妙に落ち着く。
そして、設備こそシンプルでミニマムではあるものの、サービスの良さは一級品。
タオルとサウナパンツに加えて、使い捨てのカミソリと歯ブラシが使えるのですが、どこのサウナ施設にも置いてある歯ブラシはともかくとして、歯磨き粉も使わせてくれるのが何気に私の中で高ポイントだったりする。しかも何種類かあって選べる。
それらのアメニティが置かれているゾーンの下にはバケツが用意されており、酢や柚子などが入ったボトルが並べられている。バケツに入れたお湯に浸して、酢や柚子などの足湯を作れるようにしてあるそうな。
このサービスをやっているところは他に知らない。いくらサウナで汗を絞って風呂で身体を綺麗にしても、足が臭くてはシャンな男にはなれないということか。
MOKUタオル(冷えたタオル)やサウナハットも追加料金なしで借りることができます。ただ、どちらも試してみたけど、未だにちゃんとした使い方がよくわかっていません。シャンな男への道程はまだ長い。
本当は向かいのキャバレーにも一度は入ってみたいのだけど、あそこに入るにはまだ自分にシャンさが足りないような気がする。かといって、もうノリで大人の風呂屋に行くほど若くもない。
どのようなミドルライフを送るべきなのか、とりあえず3階の休憩室で考えることにします。
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サウナはたのしい。
