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消費税減税派と反対派の主張をまとめてみた

【8月13日追記:後編を公開しました】



導入

・消費税軽減のニュース

消費税が減る、と話題となっている。
キッカケは7月30日の高市総理の会見だ。

高市早苗首相は30日夜、官邸で記者団に、飲食料品の消費税率を令和9年4月から2年間限定で8%から1%に引き下げると表明した。
2年後の11年4月に所得連動の新たな給付制度を本格導入するのに合わせ
「消費税率は元の8%に戻していく」と明言した。

産経新聞:7/30記事より
首相、食料品消費税1%表明「国民の負担軽減、最善の策を選択」 2年後「8%に戻す」

飲食料品に課されていた消費税が8%から1%になる。今まで税率が上がることはあっても下がることはなかっただけに、なんだか新鮮な気持ちになる。

そして高市総理の会見から4日後の、8月3日。
自民党は来年4月から飲食料品の消費税を1%に引き下げることを決めた

自民党は3日、税制・社会保障制度両調査会の合同会議を開き、高市早苗首相が示した来年4月から2年間限定で飲食料品消費税を1%に引き下げる方針を了承する方向で、小野寺五典税調会長に対応を一任した。
基本方針案では、令和11年度に所得連動の新たな給付制度を本格導入するまでの「つなぎ」として、1%への減税と中低所得者向けの現金給付を併せて実施し、飲食料品消費税の「実質ゼロ化を実現する」としている。

産経新聞:8/3記事より
自民、食料品消費税1%了承へ 賛成圧倒、税調会長に一任 政府、5日にも閣議決定

・納税と支出の違い

いち国民(納税者)として、税金が減るのは率直にうれしい。納税は、買い物と全く違うし、電気代とも違う。

買い物に行けば沢山の品物が売っている。それぞれ値段がついており、欲しいと思えば買うし、割に合わないと思えば買わない選択ができる。

電気代も同じだ。使った分だけお金がかかるから、安く済ませたいなら使う量を減らせばいい。

ところが税金の場合は違う。
割に合わない・高いと思っても、払わなければならない。

納税は国民の三大義務と日本国憲法第三十条で規定されているように、
国民は税金を払わなければならない。
自分には関係ないから払わない、はできない

税金は避けられない必要経費とも言える。

・減税はみんなにとって嬉しいのでは?

そんな中で、税金が安くなったらどうなるだろう?
納める税金が減り、浮いたお金をほかのことに使える。

つまり満足度は上がるはず。

払う税金が減るのは、一見嬉しいことに思える。
なのに、減税に反対する人がいるのはどうしてだろうか??

・今回の内容

そこで今回は、減税賛成派と減税反対派の主張を見ていく

そして次回【後半】ではなぜ今、消費税を減らすのか。
消費税を減らすとどんなメリットとデメリットがあるかを見ていく。

注記

本稿では形式上、減税賛成派の主張を反対派が反論する形式で書いているが
分断を狙う意図はないことを強調したい。

このように記述した理由は2点ある。
互いの主張の論点を揃えることで議論を分かりやすくした。
何かに反論するためには、まず何かが存在しないと成立しない
 したがって、賛成→反対(反論)の順で書くのは自然である。
 増税賛成派と反対派であっても賛成→反対(反論)の順で書いただろう。

(減税)賛成派の主張

減税賛成派の主張は以下の3つに集約される。
(ここで言う賛成派とは、高市総理や自民党が提唱している、飲食料品に限った2年間の時限的減税措置を指す)


1.物価高騰の対策

1つ目は何と言っても物価高騰の対策である。
2020年の新型コロナウイルス感染症の蔓延以降、
物価の高騰が続いている

代表的な物価指数である消費者物価指数によれば
2020年と比較して+13%ほど高騰しているが、
ガソリン+30%ほど)や食品+28.6%)など、
私たちが日常的に買うものが、際立って高騰している。

消費者物価指数:
国の世帯が購入する家計に係る財及びサービスの価格等を総合した物価の変動を時系列的に測定したもの

総務省統計局より

これほどまで物価が高騰しているのは、
国際情勢の不安定(ウクライナ・中東情勢)や天候不順で農作物や原油自体が高騰しているのもあるが、一番大きな要因は円安である。

画像は過去10年間のドル円相場を示したグラフである。
2020年までは$1=110円付近だったのが、
2021年から急激に円安に(数字が大きく)なっていることが分かる。

2026年8月現在は、為替介入が行われたものの、
$1=160円付近を推移している。

直近10年間のドル円相場:SBI証券より

つまり輸入する原材料の価格が1.5倍~2倍にまで高騰するのだ。※1

※1:円安で価格高騰する理由を手短に説明する。

海外とのやり取りはドルで行うので、$10,000の商品を輸入する際に2019年で$1=110円だったのが、2026年には$1=160になれば、かつては110万円で良かったのが、今では160万円必要になる。

さらに農作物や原油の価格高騰は、相手国も同じく影響を受けているので、
$10,000から$12,000に値上がりしている可能性は充分ある。

つまり、2019年には110×10,000=110万円で購入できたのが、2026年(現在)では160×12,000 = 192万円と、2倍近くに高騰している。

注意したいのは、あくまでも海外の原材料が主に高騰しているのであって、政府による電気代やガソリン代の補助・高校無償化のおかげで、家計の負担(物価)はまだマシになっているという事実だ。

ただ、いずれにせよ価格高騰は、消費者である私たちが最終的に負担していることには変わらない。

そのような状況で、消費税の軽減を訴えるのは納得感がある。

今回の減税では、飲食料品:8%から1%に軽減される。
例えば本体価格100円の商品だと、108円だったのが101円になる。

100円だと7円の差だが、
1ヶ月の食費が税込み3万円であれば、
その差は2,000円弱※2にも上る。

2年間の時限措置とのことだったので、
×24ヶ月で46,680円。1ヶ月の食費代を超える。

※2 本体27,777円+税8%:2,223円=30,000円だったのが
    本体27,777円+税1%:278円 =28,055円となるため
         30,000-28,055=1,945円。2000円弱の負担減となる。

計算式


2.逆進性ぎゃくしんせいを緩和できる

よく知られていることとして、消費税には逆進性を伴う。
所得が低いほど、負担が大きくなると言うのだ

理屈は以下のとおり。
前提として、納める税金の額は、このように分解できる。
[①食べる量(消費量)]×[②食品の単価]×[③税率]


2-①食べる量について

 貧しい人も豊かな人も、最低限食べる量は決まっており
 人間が食べられる上限もだいたい決まっている。
 例えば所得が10倍高いからと言って、10倍食べることはない。


2-②食べ物の単価について (文章やや長め)
所得が増えても、食べ物の単価がそれほど上がらないとされる。
理由は以下の3つの要因に分けられる。

・栄養や味が満たされればよい→付加価値を加えづらい
 服や家電であれば素材や機能を向上させて価格を5倍、10倍にできるが、
 食料品は最低限の栄養や味が満たされればよいと考える人が多いので、
 価格高騰の余地に乏しい(限界効用が急激に下がるともいう)
例:148円の普通の食パンはよく売れるが、
  めちゃくちゃ美味しいからと言って1480円の食パンはめったに売れない

・買う頻度が高い→消費者が値段を覚える→値上げに敏感になる
 スーパーなどで日頃から飲食料品を頻繁に購入しているため、相場感覚が
 身についている。結果、数十円の差に敏感になってしまう。
例:200円の牛乳は安いが、300円の牛乳は高いと思ってしまう

・他人に見せない→自己顕示目的で消費しづらい→高いものを選ばない
 飲食料品は他人に見せびらかす機会が少ない(食べたら消える)ので、
 服や時計のように自己顕示(見栄え)目的で消費することが少ない。
 結果、高級品ばかり買っても仕方ないと考えて高所得者であっても日常的
 に高級品だけを買うことはほとんどしない。
例:高所得者であっても肉=黒毛和牛だけを買う家は少ない※3

※3:自己顕示目的で消費しづらいから高いものを買わない、の補足
高級寿司屋や高級フレンチでの飲食はSNS等にアップできるため
自己顕示目的だという反論がありそうだが、
それらは外食であるので今回の消費税減税(飲食料品)の対象外である。


2-③消費税率について

消費税は、同じ商品であれば誰でも同じ税率である。
全ての人に一律にかかるため、所得税のように累進的ではない。
外食なら誰でも10%だし、野菜なら8%である。


先述したように、納める税金の額は、このように分解できる。
[①たべる量(消費量)]×[②食品の単価]×[③税率]

このうち、③税率 は一定。①たべる量 も大して変わらない。
つまり②単価 でしか差がつかないのである。

所得が10倍高いからといって
10倍の値段のパンを買うわけではない。
せいぜい2~3倍くらいであろう。

これらの話は、エンゲル係数という言葉で片付けられる。
エンゲル係数とは、食費÷支出額全体 を示した指標だ。 

つまり、全体の出費のうち食費が占める割合のことだが、前述のように
可処分所得が10倍になっても、食費が10倍になるわけではないので
このエンゲル係数は低所得ほど高い割合を示すことが分かっている。

以下は日本生命が2025年に示した、収入階層別のエンゲル係数である。
(収入を10グループに分け、Ⅰが最も低所得でⅩが最も高所得)※4

年収階級別のエンゲル係数
(総務省「家計調査」2024を元に、ニッセイ基礎研究所 佐藤雅之氏作成)

このグラフからも分かるように、
低所得者層ほどエンゲル係数(食費の割合)が高いことが伺える。
つまり、飲食料品に掛かっている消費税の軽減は、
低所得者層への恩恵が大きそうであることは確かである。

※4:日本生命が示した2024年のエンゲル係数について
詳しく知りたい方は、以下の記事を参照ください。
https://www.nissay.co.jp/enjoy/keizai/183.html


3.税収を還元するべき

3つ目(最後)に、税収が伸びているから還元するべきだという理由だ。

下グラフからも分かるように、
実際、ここ10年で税収は、58.8兆円→83.7兆円と約1.4倍に増加している。

財務省統計より作成

消費税が8→10%に引き上げられたほか、
円安で輸出企業の業績が伸びていることが主な要因だ。

生活に困っているのに税収が伸びているのであれば、
負担を軽くしてほしいと思うのはごく当たり前にも思える。


(減税)反対派の主張

ここまでは減税賛成派の主張をまとめた。

一方で、減税反対派の意見は以下の3点である。

1.飲食料品、そんなに安くならない問題

これはリフレ派(減税支持)の経済学者も認めている。
消費税を8%→1%に減税しても、本体価格も上がって、
実際はそれほど安くならないと言うのだ。

これには以下の理由が挙げられる。
(1)小売業が値段を上げる
(2)生産者や食品会社
がコスト負担を求める

(1)小売業が値段を上げる
 飲食料品に対して、価格をシビアに判断する人が多い分、
 少し安くなると、買う人がどっと増える。
 しかし小売店側からすれば、
 そのまま減税後の価格で売ったら、以前と利益が変わらない

 そこで、本体価格を少しだけ引き上げる
(例えば108円→101円ではなく104円程度にする)ことで、
 以前の価格より安くしながら、
 小売店はそのまま利益率を上げられる
のだ。※5

※5:安く売ったら客が増えるのだから、利益を増やせるのではという指摘が想定できる。

しかし、小売店側にとっては、
正確に予測できない客数(売上個数)よりも、
前もって把握できる利益率(1つ売ったときの粗利益)
を優先する傾向になるのは、なんら不思議ではない。

 つまり(108円→104円のように)以前より安くなるかもしれないが、(108円→101円ほど)期待していたほど値段が安くならない可能性は充分にある。

(2)生産者や食品会社がコスト負担を求める
現在、輸出企業(自動車・半導体)は円安で利益が増加している。
食料品などの輸入企業は原材料が値上がりし業績が悪化している
またそれらの企業は、顧客離れなどを恐れて、取引先に対して
値上げ分をそのまま転嫁できない状況が散見されていた。

これまで値上げを(多少)踏みとどまっていた状態だった訳だが、
消費税減税が実施されれば、それを1つのキッカケに本体価格を引き上げて、これまで吸収できなかった赤字分を回収しようとするのは自然である。

これも企業支援であると言えば、それは効果があるかもしれないが
消費者負担の軽減という、当初の目的とはズレてしまうだろう。


2.他の税と合わせると逆進的ではない

賛成派の主張2で記したように、
消費税は、低所得者層であるほど負担が大きいことが分かった。

しかし、同じように他の税や社会保険料も負担に感じているはずである。
消費税だけ負担に感じて、所得税は負担に感じないということはない。
それらも考慮すると所得区分別の負担率(負担額も)は、そこまで変わらないのではないか。

下グラフは、
消費税(8%)負担率(飲食料品の消費税額÷実収入)と、
合計負担率(8%・10%消費税+所得税・住民税+社会保険料)を
所得区分を10に分けて示したものである。

総務省:令和6年全国家計構造調査より作成

これを見ると、
確かに①消費税額負担率は低所得ほど大きい
一方で②直接税や社会保険料の負担の方がはるかに重たい ことが分かる。

国民の負担感に着目するなら、消費税減税(それも飲食料品に限ったもの)よりも、例えば、社会保険料の軽減のほうが効果が高いように思える

3.税収は余っていない

賛成派の主張3で記したように、
ここ数年、たしかに税収の増加が続いている。(再掲)

税収の推移(再掲)

しかし、一般会計歳出(支出)と比べるとどうだろうか。※6
下グラフは税収と支出を比較したものであるが、
一貫して、税収<支出であることが分かる。

税収と一般会計歳出の比較
財務省統計より作成

税収の方が多ければ、「政府が溜め込んだ税を還元してほしい」
という主張も理解できる。

しかし、支出が一貫して上回っており、
すでに大盤振る舞いな財政政策を行っている以上、
増えた税収分を還元するのは無理筋
だという反論だ。

※6:歳出を、債務償還費と、それ以外に分けている理由

債務償還費とは国債費の一部である。(国債費=債務償還費+利払費)
このうち、債務償還費を一般会計歳出にカウントしている国は少ない。
なぜなら債務(国債)を償還してもすぐに借り換えるからである。

そのため債務償還費を省いて財政を考えるべきとの意見もあり、本稿でも、一般会計歳出のうち債務償還費を除いたものをオレンジ色で示している。

しかし、利払費(利息)は他の国でも一般会計歳出に組み入れている。
そのため、本稿でも利払費は控除していない。

前半:まとめ


これまでの意見をまとめると、このようになる。

論点が3つあった。
①消費税を軽減させたときに、安くなるかどうか
 減税派によると、消費税率が8%→1%に軽減されるため、
約7%分、安くなるのではないかということ。
 反対派は、消費税が下がっても本体価格が上がるから、
それほど安くならないとしている。
(増税後に本体価格を上げる方法もあれば、
 増税前に値上げして、そのまま8%→1%にする方法もある)

②消費税は低所得者に厳しいかどうか
 減税派の主張は、消費は所得と同じように比例しないので、
消費税は逆進的(低所得ほど負担が大きい)という内容だった。
 反対派は、消費税の負担は、所得税や社会保険料なども比べて少ない。
トータルでは高所得ほど負担が大きくなっているとしている。

③税収が余っているかどうか
 減税派の主張として、ここ数年税収が増加しているから還元するべき、という内容がなされていた。
 反対派の主張では、税収が伸びていても、歳出(支出)が伸びているから
還元する余裕はないとしている。

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以上が前半(減税賛成派と反対派の主張)の内容である。

後半では、なぜ消費税軽減が話題となっているか、
財源などについて深掘りしていきたい。

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追記、タイトル変更しました。
Before:消費税減税という「悲願」【前編】
After:消費税減税派と反対派の主張をまとめてみた

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