芋出し画像

圱の垰還「殿・しんがり」

東京・䞞の内。

高局ビル矀のガラスは、街の光を映しながらも、どこか無機質だった。

雚は降っおいなかった。
だが、倜の空気は、そのたた湿っおいた。

静たりかえった街は、次の新たな賑わいずいうよりも戊いを探しおいるようだ。

前日にできた傷口が癒やしきる前に、昚日からの重たい雰囲気がその街に襲いかかる。

それは、「HORIZON GATE」の最䞊階にも容赊が無い。

䌚議宀の空調は効きすぎおいるのに、それにしおも空気は劙に重い。

盞銬恒䞀は、ホワむトボヌドの前にしばらく立っおいた。

そこは、ずらずらず数字の走りがきが䞊ぶ。
赀いむンクずギリギリの熱意で囲たれたスケゞュヌル。
矢印。修正。再修正。ずきりがない。

もう既に先ほど䞋ろしたおのペンのむンクがかすれ始めおいる。

「ここを再圧瞮すれば、二日短瞮できたす」

誰に向かっお蚀うでもなく、蚀葉を萜ずす。

ほずんどの若手の゚ンゞニアが銖を振る。
「無理です。根本蚭蚈を倉えないず」

「それじゃ、今すぐ倉えろ」
返事は即答だった。

確かに声は匷いが、喉は枯れおいる。

デスクの䞊には、冷めきったブラックコヌヒヌが䞉぀䞊んでいた。

誰かが手に取った気配も蚘憶もない。

今回のプロゞェクトは、日本の地方産業デヌタを統合し、AI解析で䞖界垂堎ぞ接続する構想だった。

その䞊、アメリカ偎ずの共同開発。

最終契玄のため、代衚の鷹宮蓮は、日前からニュヌペヌクに入っおいお、その為の準備に時間に远われおいた。

あたかも日本の未来を党郚背負っおいるような気持ちでいるのか
それずも、い぀ものように無機質な空間の䞭を、タバコの煙ず䞀緒に、時間が過ぎるのをただただ埅っおいるのか

鷹宮蓮の右腕である盞銬は、日本でも同じように、その䞍圚を圌なりに背負っおいた。

瀟内の誰もが、圌を芋おいる様に感じる。

もうこの時点では、瀟内から生たれた粟も根も尜きた魂の悲鳎が倧きな化け物の圱のようにさえ感じおしたう。

抌し぀ぶされそうな期埅が・・・・

ぎり぀いた心があらわになっおいないか䞍安の䞭、プロゞェクトのマネヌゞャヌの犬飌健が、少々心配そうな衚情を浮かべながら盞銬の方に歩み寄っおきた。

そしお、「倧䞈倫なのか」ず蚀わんばかりに埮かに震える呌吞ぞの疑念を衚した。

それでも、できるのか。間に合うのか
その芖線が、盞銬の肌に刺さる。

突然、電話が鳎る。
どうやら地方自治䜓の担圓者の黒岩だ。
「䜏民説明䌚で反察意芋が出おいたす。デヌタの扱いに぀いお・・・」

盞銬は目を閉じお、䜕事もないように自然な口調で話す。

「黒岩さん、盞銬です」
「再床説明したす。盎接䌺いたす」

「今週䞭に・・・」
「分かりたした」

半ば、䞀方的に受話噚を眮く。

今週䞭。
明日が朚曜だ。

移動時間を蚈算するず、倜行䟿で戻るしかない。

だが、その前に銀行ずの再亀枉がある。

資金の䞀郚が、想定より遅れおいるずいうこずだ。
理由は単玔だ。

最初から懞念されおいたが、システム統合の遅延が原因ずみられる。



やはり、遅延は信甚を削る。
そうするず、信甚は金を削る。
金が削れれば、党おが止たる。ずいうこずだ。



倜十時。

開発ルヌムの蛍光灯はただ癜い。

キヌボヌドを叩く音だけが響く。

「盞銬さん」

振り向く。


若手瀟員の目が赀い。

「本圓に、間に合いたすか」

䞀瞬、蚀葉が詰たる。

間に合わないかもしれない。
だが、そんな蚀葉は口にできない。

「間に合わせる」
それだけ蚀った。

自分に蚀い聞かせるように。

午前䞉時。

サヌバヌテストが停止した。

画面に䞊ぶ゚ラヌコヌド。

誰も声を出さない。

盞銬はモニタヌに近づく。

「原因は」
「デヌタ敎合性の厩れです。地方偎のフォヌマットがどうも・・・」

「埩旧時間はどうなる」

「四十八時間は必芁かず」

四十八時間。
銀行の最終審査は四十八時間埌。
盞銬の喉がい぀も以䞊に也く。

「やろう」

短く呜じる。

誰も動かないわけにはいかない。



盞銬は、ゆっくりずした足取りで廊䞋に出お、自販機の前で立ち止たる。

小銭を入れ、猶を取る。
その時、手が震えお、萜ずしそうになる。

そしお、小銭を拟い䞊げた瞬間、圌の芖界が歪んだ。

倩井がスロヌモヌションで、グニャグニャに曲がりながら遠ざかる。

冷たく冷え切った床が近づく。

かすかに聞こえるような誰かの声。

「救急車を」「早く」「誰か」
「倧䞈倫ですか」

遠くでサむレンがなる。
そしお、盞銬の意識がここで途切れる。
 
 



 
目を開けるず、たぶしい癜い倩井だった。

病院独特の消毒液の匂いも䞀緒にあたり気持ちのいい物ではない。

その䞊、盞銬の脳裏にべったりずひっ぀いたたたの意識は、圌にし぀こくたずわり぀いおいる。

あの埌の結末に、ずどめを刺される事が予想される。

腕には点滎。

医垫の声が淡々ず告げる。

「過劎ず急性ストレスです。あのたたでは危険でした。」

「危険でした 䜕が」「契玄か」

その単語が、珟実味を持たない。

「䌚瀟は」

「いえ倧倉だったんですから。それどころでなかったんですよ」

「しばらくは䌑んでください」

すかさず、盞銬は自分のスマヌトフォンを探す。

スマホが右手に觊れたので、思わず、充電が切れおいる画面をのぞき蟌む。

䜕かに祈るのでもなく、䜕かに絶望するでもなく。

ただ、ただ、・・・・・・。

電源を入れおみるず案の定バッテリヌが残っおいなかった。

「じゅうでんき・・・・・・」

音にすらならない声で。

今にも泣きそうな、クシャクシャな衚情をしながら、入瀟3幎目の葉山結月は、充電噚をそっず病院のベッドの䞊においおいた。

盎ぐに、手持ちのバッテリヌを䜿っお充電するず、䞍圚着信が䞊ぶ。


䞀番最初がニュヌペヌクからだずいう事を確認するず、すぐにコヌルで画面が震えた。

「ブルブル・・・・・・」

「今、空枯だ」

鷹宮蓮の声だ。

い぀もず倉わりなく䜎く、短い。

「すいたせんでした。 そちらの状態は」


「䜕ずかタバコの本数は少なくお枈みそうだ」

「明日にも合流する」

ず、い぀もの静かな声。
どこにも迷いはない。

「すみたせん」
盞銬の声はかすれおいた。

沈黙が流れる。

「・・・・・・」

「生きおるな」

「はい」

「ならいい」

通話は終わる。

い぀も通りに䜙蚈な蚀葉はない。
だが、それで十分だった。
 
 
翌日深倜。

オフィスの灯りは消えおいない。

だが、若干光は匱い。

机に突っ䌏す者。
モニタヌを芋぀めたたた動かない者。

芋えないずころからでも盞銬に寄り添う䞍安な衚情

疲劎が郚屋に充満しおいる。
゚レベヌタヌの音。
扉が開く。

トランクのキャスタヌの床を滑る音が、劙に倧きく響いた。

向こうから鷹宮蓮が歩いおくる。

さすがに長距離移動の疲劎は隠しおいない。

スヌツは皺だらけ。
珍しく顎には無粟髭。

だが、歩幅ずその勢いは党く倉わらない。

もちろん、県光は、い぀もにも増しお非垞に鋭い。

䌚議宀に入り、立ったたた始める。
「状況を」


説明が続く。
倱敗。
遅延。
資金凍結の可胜性。

誰も蚀い蚳をしない。

蓮は黙っお聞いおいる。
指で机を軜く叩きながら。

質問は䞉぀だけ。

「資金はあず䜕日持぀」

「十日です」

「再蚭蚈に䜕日かかる」
「二週間」

「自治䜓の枩床は」
「かなり冷えおいたす」
頷く。

それだけ。
沈黙。

「・・・・・・」

絡たった時間がゆっくりずほどけるように、溶けるように、流れだす。

「あっ、ふう」

するず、䜕か芚悟にも近い蓮の匷い呌吞がきこえる。

するず、緩み始めおいた郚屋の空気が、少し匵り詰める。

そんな䞭、蓮は、今床はゆっくり息をはいた。

玄秒間ずいう、い぀もよりやや長めの間のあずで、


「・・・・・・」

「埌の事は、俺に任せろ」

い぀もず同じ調子で声は䜎い。

その䞊、静かだが、やはり決しお揺れない。

「絶察に䜕ずかするので、心配しないように、お前達はゆっくり䌑め」

「盞銬にもそう䌝えおくれ」

 
誰かの肩が萜ちる。

誰かが目を閉じる。

匵り詰めおいた糞が、完党に切れたわけではない。

ただ緩んだ。少々新しい空気が党員の䜓に入っおきたように堎の緊匵が少しだけ緩んだ。

この時点では党おが䞊手くいったず蚀えるようなシロモノではなかった。

ただ、ただ、ここには、目の前には、「鷹宮蓮」がいた。

それだけで、空気は倉わる。

「疲れたろう。今倜は垰れ」

呜什ではない。

事実の宣告。

翌朝。

「蓮」は䞀人で銀行を回った。

応接宀で、淡々ず数字を䞊べる。

「リスクは承知しおいる。だが、この構造なら回収できる」

い぀も以䞊に、鷹のような鋭い芖線を倖さない。

自治䜓では、資料を閉じた瞬間にこう蚀ったそうだ。

「これはこの地域の未来の話だけではない。日本の垌望の話だ。もちろん、倱敗すれば党お私の責任だ」

その䞀蚀で、空気が倉わる。

䞉週間。

圌はほずんど寝なかったようである。

だが、誰にもそれを蚀わない。

結果、プロゞェクトは奇跡を起こしお再起動したようだ。

盞銬が完党埩垰した日は、屋䞊で颚が匷かった。

蓮はい぀ものようにくわえ煙草で吞っおいる。

「すみたせんでした」
盞銬は頭を䞋げる。

「無理をするな」
「蓮」の短い指摘。

「はい」

「前に出るな、ずは蚀わん」

タバコの煙が倜に溶け、倜の街のネオンず絡み぀く。

「最埌に立぀奎がいるこずを、忘れるな」

その蚀葉の意味を、「盞銬」は初めお理解する。

この人は、い぀も最埌に残っおいた。

きっず党員が倒れた埌も、立っおいる。

責任を背負い、
矢を受ける堎所に立぀。

戊堎で蚀うなら、殿しんがり。

最埌尟を守る者。

そんな「蓮」は煙草を螏み消す。

そしお、振り返らずに蚀う。

「埌の事は、俺に任せろ。それが俺の仕事だ」

「気にするな」

そしお、それが、最埌に立぀者の蚀葉だ。

颚が吹き抜ける。
盞銬は、静かに頷いた。

空は高い。

戊いは続く。

だが、最埌に立぀者がいる限り、
その前では、人々は信じお倢䞭になれる。




ちなみに、真田幞村に槍の持ち方教えたん誰や
やり投げの持ち方ずちゃうか
実は、甲冑もちょっず違うけど、たヌええわ。

お付き合いありがずうございたした。

終了

東野

いいなず思ったら応揎しよう

pene 今、日本の瀟䌚にある様々な歪を改善するための事業や掻動をしおいたす。具䜓的には、あらゆるクリ゚むタヌや基瀎研究者の支揎や起業家が生たれやすくなる瀟䌚システムの準備をしおいたす。どうか埡支揎よろしくお願いいたしたす。