梅雨だより*雨粒とブルーベリー
梅雨入りしたばかりの雨の日、
商業ビルの屋上庭園で、はじめてブルーベリーを摘んだ。
傘に雨粒がぽつぽつ当たる音を聞きながら、
熟した青い実を探していく。
毎年いいなあと思っていた摘取り体験。
ようやく参加できたのに、この日はあいにくの雨模様。
それでも気づけば、夢中で青い実を探していた。
この子はどうかな。
あの子は、もうちょっとかな……。
ひとつひとつ実を見ながら、そっと指で摘み取っていく。
ふと見回すと、鉢に品種の名前が書かれていた。
ユーリカ。
ブルーレカ。
ジュリエッタ。
サウザンスプレンダー。
オーシャンリベール。
ユーリカは「見つけた!」。
サウザンスプレンダーは「南の輝き」。
名前まで、なんだか物語みたいだった。
そう思うと、途端にブルーベリーの木々が、少し特別なものに見えてくる。
実の大きさも、色の濃淡もさまざま。
園内をうろうろしながら、気になる実をどんどんカップに入れていった。
摘取りカップの中では、雨粒をつけた青い実たちが、わいわいしている。
どれがなんという名前だったかは、
もうわからない。
それでも、家に帰ってから改めて手に乗せてみると、一粒一粒、ちゃんと選んできたんだなと思えて、なんだか愛おしい。
小さくて、丸くて、
やさしく扱わないと、すぐに傷つけてしまいそうで。
摘んできたばかりの実は、
口に含むと、小さな果汁がやさしくほどけた。
すごく甘いものもあれば、ちょっと酸っぱいものもある。
それも、自分で摘んだからこその味わい。
雨の日に出かけるのは少し億劫だけれど、
その日は、カップの中に小さな青いよろこびがいた。
街の中心で、こんなに気軽に摘取りできるなんて。
梅雨の楽しみが、ひとつ増えた気がする。
