偏愛おやつ。シナモンロール
シナモンロールが好きだ。
子どもの頃、
こんなにおしゃれなパンとは無縁だった。
パンといえば、
食パンか、あんぱんか、クリームパン。
くるくると巻かれたパンなんて、
わたしの世界にはまだ登場していなかった。
そんなわたしがシナモンロールに惹かれるようになったきっかけは、とてもわかりやすい。
映画『かもめ食堂』を観てからだ。
この映画を入り口に、
北欧の暮らしに憧れた人は、きっと多いと思う。
そして、食いしん坊のわたしが真っ先に気になったのが、シナモンロールだった。
北欧の家具よりも、雑貨よりも、
あのくるくるしたパン。
どんな味なのだろう。
甘いのか。ほろ苦いのか。
そもそもシナモンが、
なにものなのかも知らなかった。
それでも、映画の中では、
とても幸せそうなパンに見えた。
北欧デザインのお皿に、シナモンロールをそっと乗せて、マグカップにあたたかい飲み物を注ぐ。
そこに漂う香りが、ほんの少し、
やさしく自分を背伸びさせてくれる。
……と、語ってみたけれど、
結局のところ、ただ心ゆくままに食べたいだけの前置きである。
┈┈┈┈┈┈┈ ❁ ❁ ❁ ┈┈┈┈┈┈┈┈
シナモンロール偏愛計画
この計画は、ずいぶん前からこっそりと考えていて、はじめは、10個ぐらい買っちゃおうと思っていた。
けれど、わたしにはお財布があり、お腹があり、そして真夏の気温という現実がある。
しばらく悩んで、
今回は4つのお店に絞ることにした。
気温は30度を超えるらしい。
保冷剤を入れたお弁当バッグまで準備して、
いざ、シナモンロール巡りを開始した。
┈┈┈┈┈┈┈ ❁ ❁ ❁ ┈┈┈┈┈┈┈┈
01.アンデルセン|
特別すぎない、でもちゃんとうれしい

まず向かったのは、
広島生まれとして外せないアンデルセン。
子どもの頃のわたしにとって、
アンデルセンは憧れのパン屋さんだった。
ただパンを買う場所というより、店内に入るだけで、なんだかきちんとした人になれるような場所。
シナモンロールが売られていることは、
ずっと知っていた。
でも、あえてこの日のために買わずにいた。
そっと齧ってみると、生地がしっかり甘い。
「コーヒーと一緒にお楽しみください」と書いてあったけれど、なるほど、これは苦めのコーヒーにぴったりだろう。
他と比べると、シナモン感は控えめ。
そのぶん、ふわっとやさしい味わいで、日常の中にすっと馴染む。
特別すぎない。
でも、ちゃんとうれしい。
そんなシナモンロールだった。
02.ジョアン|
儚い顔をして、なかなか罪深い

続いて、百貨店の中で見つけた
ジョアンのシナモンデニッシュ。
今回購入した他の3つと比べると、少し小さめ。
そっと持ち上げて、ひとくち。
さくっ。
デニッシュ生地がおいしい〜〜!
軽やかな食感の中に、
シナモンの香りもしっかりある。
小ぶりで、上品で、どこか儚い。
油断していたら、食べ終わった瞬間、
もう一個ほしくなってしまった。
儚い顔をして、なかなか罪深い。
03.スターバックス|
コーヒーを待っている味

3つ目は、お馴染みスターバックスで見つけた。
スタバで飲み物を頼まず、
パンだけをテイクアウトする。
それって許されるのだろうか。
いや、許されるに決まっている。
でも、なぜか少しだけ緊張する。
そんな心配をよそに、
スタッフさんは素敵な笑顔で対応してくれた。
ありがとうございます。
わたしはこの日、無事に
「シナモンロールだけ買う人」になれました。
ふんわりとした生地に、
たっぷりのクリームチーズフォンダン。
このクリームが、ぽってりとしていておいしい。
甘いのに、どこか落ち着く。
コーヒーと一緒に味わうことを、
ちゃんと想像して作られている感じがする。
ほんのりコーヒーの香りがしたのは、気のせいかな。
最後のひとくちまで、
コーヒーを待っている味だった。
04.CINNABON|
BIG LOVEな甘い祝祭

最後に向かったのは、
シナモンロール専門店のCINNABON。
専門店は外せない。
そして、巡りの締めくくりにふさわしい気がした。
ミニサイズもあったけれど、
ここは迷わず「ふつうサイズ」を注文した。
こういうときの「ふつう」は、
だいたい想像を超えてくる。
かわいらしい水色のケースから現れたのは、
ずっしり甘い存在感。
大きい。
「BIG LOVE!」と言いながら、
こちらの遠慮ごと抱きしめてくる。
フォークやナイフを使わずに、口を大きく開けて、まるでハンバーガーを食べるかのようにかぶりつく。
顔中がシナモンに包まれる。
食べ応えは十分すぎるほど。
表面をどっぷりと覆うクリームチーズクリームとのバランスもよくて、恐ろしいことに、半分だけにする予定が、いつの間にか姿を消していた。
シナモンロールというより、
もはや甘い祝祭である。
┈┈┈┈┈┈┈ ❁ ❁ ❁ ┈┈┈┈┈┈┈┈
憧れは、街のパン屋にも転がっていた
今回は、4つのシナモンロールを堪能した。
机に並べてみると、
どれも似ているようで、ちょっと違う。
丸い形、四角い形。
ふわふわな生地、サクサクな食感。
白いクリーム、茶色いクリーム。
同じシナモンロールなのに、
それぞれのお店の個性がちゃんとある。
やさしく日常に寄り添うアンデルセン。
軽やかで上品なジョアン。
コーヒーが恋しくなるスターバックス。
圧倒的な存在感のCINNABON。
映画の中にあった憧れは、遠い北欧だけじゃなくて、街にも、百貨店にも、いつものカフェにも、ちゃんと転がっていた。
身体中がシナモンの香りに包まれて、大満足。
こんなにお腹がいっぱいになったのに、今度はあのお店のも食べてみたい、と次々浮かんでくる。
……きっと胃袋は呆れている。
でも、偏愛とはたぶん、
胃袋に少し呆れられながら、
また次のひとくちを夢見ることなのだ。
