検察審査会とは|不起訴相当・不起訴不当・起訴相当の違い
こんにちは、カネさんです。
事件の報道で、「不起訴になった」「検察審査会へ申し立てた」「不起訴不当と議決された」という言葉を目にすることがあります。
ここで混同されやすいのが、不起訴不当と起訴相当の違いです。どちらも検察官の不起訴判断を見直す議決ですが、その後の手続は同じではありません。
また、検察審査会が不起訴不当や起訴相当と判断しても、それだけで被疑者が有罪になるわけではありません。有罪・無罪を決めるのは、起訴された後の刑事裁判です。
この記事では、検察審査会の仕組み、三つの議決、再捜査と強制起訴の違いを整理します。

本稿の初稿は2026年7月17日時点の裁判所の案内と検察審査会法を基にしています。個別事件の結論は、検察庁・裁判所などの公式発表を確認してください。
検察審査会とは|市民が検察官の不起訴処分を審査する制度
検察審査会は、検察官が事件を裁判にかけなかった不起訴処分について、その判断が妥当だったかを市民の視点から審査する制度です。
裁判所の案内によると、選挙権を持つ国民の中から、くじで選ばれた11人の検察審査員が審査します。検察審査員は裁判官や検察官ではありません。
検察官は、捜査した事件について、証拠や法律上の要件を検討し、起訴するか不起訴にするかを決めます。しかし不起訴になれば、通常は刑事裁判が始まらず、裁判所が公開の法廷で証拠を判断する機会もありません。
そこで、被害者や告訴・告発をした人などの申し立てを受け、市民が不起訴判断を点検できるようにしたのが検察審査会です。
審査はどうやって始まるのか
検察審査会が審査を始める方法は、主に二つあります。
審査申立て
犯罪の被害者や、犯罪を告訴・告発した人などが、管轄の検察審査会へ申立書を提出します。誰でも自由に申し立てられるわけではなく、法律で定められた立場の人が対象です。手続案内や申立てに費用はかかりません。
職権審査
申立てがなくても、新聞報道などをきっかけに、検察審査会が自ら審査を始める場合があります。
審査会議は非公開で行われます。検察庁から取り寄せた捜査記録、申立人が提出した資料などを確認し、必要に応じて検察官から意見を聴きます。法律や証拠関係が複雑な事件では、弁護士である審査補助員から助言を受けることもできます。
三つの議決|意味と次の手続が違う
検察審査会の最初の審査における主な結論は、次の三つです。
1. 不起訴相当
検察官の不起訴処分は相当だと判断した場合です。
この議決は、「事件が絶対になかった」「被疑者の行為に問題がなかった」と宣言するものではありません。検察官が裁判にかけなかった判断について、検察審査会として見直しを求めないという結論です。
2. 不起訴不当
不起訴のまま終えるのは妥当ではなく、さらに詳しく捜査したうえで、起訴・不起訴を改めて判断すべきだとする議決です。
不起訴不当になると、検察官は再捜査を行い、もう一度処分を決めます。再捜査の結果、起訴することも、再び不起訴にすることもあります。
大切なのは、不起訴不当だけでは強制起訴に進まないことです。検察官が再び不起訴にした場合でも、不起訴不当の議決だけを理由に自動的な第二段階の審査が始まる仕組みではありません。
3. 起訴相当
検察官の不起訴処分は誤っており、起訴すべきだと判断した場合です。起訴相当には、11人中8人以上の賛成が必要です。
起訴相当の議決を受けると、検察官は再捜査し、起訴・不起訴を改めて判断します。検察官が再び不起訴にした場合や、法定の期間内に処分しなかった場合には、検察審査会が第二段階の審査を行います。
第二段階で、再び11人中8人以上が起訴すべきだと議決すると、裁判所が指定した弁護士が検察官に代わって起訴します。これが一般に「強制起訴」と呼ばれる手続です。
不起訴不当と起訴相当の最大の違い
二つの議決は、どちらも検察官へ再捜査を求めます。しかし、その後の道筋が異なります。
不起訴不当:再捜査と再処分を求める
起訴相当:再捜査を求め、再び不起訴なら第二段階の審査へ進む
起訴議決:第二段階で8人以上が賛成すると、指定弁護士が起訴する
「不起訴不当になったから、次は必ず裁判になる」という説明は正確ではありません。強制起訴の可能性につながるのは、最初の起訴相当議決と、その後の第二段階での起訴議決です。
議決は有罪判決ではない
検察審査会が見直すのは、検察官が不起訴にした判断です。刑事裁判のように、有罪・無罪や刑罰を決める制度ではありません。
起訴相当や起訴議決が出ても、起訴された後の裁判で無罪になる場合があります。逆に、不起訴相当は、民事上・政治上・道義上の責任まで否定するものではありません。
報道を見るときは、次の段階を分ける必要があります。
1. 捜査
2. 検察官による起訴・不起訴
3. 検察審査会による不起訴判断の審査
4. 再捜査・再処分
5. 起訴された場合の刑事裁判
今どの段階なのかを確認すれば、「不起訴だから無実」「不起訴不当だから有罪」といった早すぎる結論を避けられます。
奥谷県議をめぐる議決で見る三つの違い
立花孝志氏による奥谷謙一・兵庫県議の自宅兼事務所前での演説などをめぐる事件について、関西テレビなどの報道では、検察審査会の結論は三つの容疑で分かれています。出典と本人側の説明は、後掲の無料補足に記載します。
名誉毀損と威力業務妨害は不起訴相当、脅迫は不起訴不当とされました。つまり、すべての不起訴処分が否定されたわけではなく、脅迫容疑について、さらに詳しい捜査と再判断が必要だとされたということです。
この事例からも、議決の名称だけでなく、どの容疑に、どの結論が出たのかを分けて読む必要があります。
よくある質問
検察審査員は誰が選ぶのですか?
選挙権を持つ国民の中から、くじで選ばれます。1つの検察審査会は11人の検察審査員で構成されます。
不起訴不当になれば、必ず起訴されますか?
いいえ。検察官が再捜査し、改めて起訴・不起訴を判断します。再び不起訴となる可能性もあります。
起訴相当なら、すぐ強制起訴ですか?
いいえ。まず検察官が再捜査します。再び不起訴などとなった場合に第二段階の審査へ進み、そこで起訴議決が出ると、指定弁護士が起訴します。
審査会議を傍聴できますか?
できません。検察審査会議は非公開です。議決要旨は法40条により議決後7日間、事務局の掲示場で掲示されますが、審査員の自由な議論を守るため、会議そのものは公開されません。
まとめ
検察審査会は、市民11人が検察官の不起訴処分を審査する制度です
不起訴相当は、不起訴処分の見直しを求めない議決です
不起訴不当は、さらに捜査して起訴・不起訴を判断し直すよう求める議決です
起訴相当は、再不起訴の場合に第二段階の審査へ進む可能性があります
強制起訴には、第二段階での起訴議決が必要です
いずれの議決も、それだけで有罪を意味するものではありません
検察審査会は、検察官だけで刑事手続が終わることを防ぎ、市民の視点から不起訴判断を点検する制度です。
ニュースでは、議決名だけでなく、どの容疑についての判断なのか、再捜査・再処分・裁判のどの段階なのかを確認しましょう。
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あわせて読みたい
参考資料
▼あわせて読む
・立花孝志氏と奥谷謙一県議 自宅前演説をめぐる検察審査会の判断
https://note.com/poliplus/n/n816c58348cfa
・政治活動の皮を被った暴挙にお咎めなし?奥谷県議宅前での威力業務妨害が不起訴になった構造的問題
https://note.com/poliplus/n/nd6c94d68b4bb
・フォロワーは、自分の資産ではない――SNSの外に「直接つながれる読者」を持つ5つの方法
https://note.com/poliplus/n/n173c44a08d04
・【20260622】「寝てないアピール」で質問逃れ?高市総理、前代未聞の国会答弁と激震の刑事告発を徹底解説!
https://note.com/poliplus/n/n9fb368e6c6fc
・「告訴を受理された」は、何が決まったのか――被害届・告訴・送致・起訴を5段階で読む
https://note.com/poliplus/n/nb3a9d2f501ea
▼このテーマのまとめ
・公益通報・法制度まとめ
https://note.com/poliplus/n/need62d9521af
補足|図と資料で、読み違いを防ぐ
2026年9月4日追記。制度の基本、本人側の説明、有利な結果、確認できていない点は、ここまでの無料部分で読めるようにしています。図は制度の比較用であり、個別事件の有罪・無罪を示すものではありません。
個別事件について、今回確認できた範囲
関西テレビの2026年7月14日付報道では、奥谷県議に関する事件の当初の処分は、2025年12月の嫌疑不十分による不起訴とされています。同報道によると、神戸第二検察審査会の議決は2026年6月24日付。名誉毀損・威力業務妨害の疑いは不起訴相当、脅迫の疑いは不起訴不当です。三つをまとめて「不起訴が覆った」と書くと、前二者の結果が消えてしまいます。
出典:関西テレビ/FNN(2026年7月14日)。サンテレビの同日報道でも、脅迫の疑いについて不起訴不当、それ以外について不起訴相当と報じています。
一方、立花氏自身のYouTube(2025年6月4日公開)の説明欄には、2025年1月10日付の陳述書として、具体的な害悪の告知や客観的な実行行為がなく、脅迫罪の要件を満たさないとの主張が掲載されています。選挙演説として正当な業務に当たるとの主張もあります。これは本人側の法的見解であって、本稿がその当否を認定するものではありません。また、2026年の議決に対する新たな反論ではなく、議決前の説明です。
出典:立花孝志氏の投稿・説明欄「関西テレビの取材をノーカットでお伝えします。立花孝志の書類送検について」。
本稿は当該議決書の原本や捜査記録を入手していません。報道された結果と、当事者が公表した主張を区別しています。2026年9月4日の確認では、再捜査後の処分を示す公式資料も確認できていません。これは「まだ処分されていない」と確認できたという意味ではありません。犯罪成立や有罪を断定せず、追加の資料が確認できれば更新します。
「三つの議決」と「公表」の補足
前半で説明した三つは、最初の審査における主要な結論です。第二段階には「起訴議決」と「起訴議決に至らなかった旨の議決」があり、最初の「起訴相当」とは区別します。第二段階では審査補助員の委嘱が必須で、起訴議決の前には検察官が意見を述べる機会も必要です。出典:裁判所「審査の流れ」。
期間の条件も、報道日から数えるものではありません。起訴相当後、議決書謄本の送付日から原則3か月以内に所定の処分通知がない場合の扱いが定められ、通知による延長はさらに3か月まで可能です。出典:検察審査会法41条の2第2項。個別の期限は送付・通知の事実を確認して判断する必要があります。
また、議決要旨の掲示と、会議・捜査記録の公開は別です。法40条は、議決後7日間、事務局の掲示場で要旨を掲示する仕組みを定めています。ネット上で全文が常時読めるという意味ではありません。出典:検察審査会情報公開・個人情報保護審査委員会の2026年2月9日付答申(4頁)。
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