弁護士への懲戒請求書をどう読むか――請求者の主張と弁護士会の判断を分ける
2026年9月3日更新
初出時の記事は、西脇亨輔弁護士に対する懲戒請求について、SNS上に投稿された請求書や弁護士会の通知とされる画像を取り上げました。
初出時の記事は、請求者を支持政党で一括りにし、請求書を侮辱的に評価しました。さらに、損害賠償、刑事告訴、法廷での反撃が起きると予告しました。
しかし、懲戒請求が受理されたことは請求理由が認められたことを意味しません。同時に、請求が退けられたことだけで請求者の行為が違法になるわけでもありません。手続と評価を分けます。
誰でも懲戒請求はできる
弁護士法58条1項は、弁護士に懲戒事由があると思料する人が、その事由の説明を添えて所属弁護士会に懲戒を求めることを認めています。
請求を受けた弁護士会では、綱紀委員会が調査し、懲戒委員会の審査に付すことが相当かを判断します。受理、綱紀委員会の調査、懲戒委員会への付議、懲戒処分は別の段階です。
請求書は「請求者の主張」である
SNS上の請求書画像に、動画配信、発言、弁護士の品位などへの批判が書かれていたとしても、それは請求者が懲戒事由だと考えた理由です。弁護士会が事実を認定した文書ではありません。
請求内容を検証するには、対象となった動画や投稿の原URL、公開日時、発言の前後、請求書全文、対象弁護士の回答、弁護士会の決定書が必要です。今回、これらすべては公開資料としてそろっていません。
そのため、請求理由が正しいとも、単なる嫌がらせだとも断定しません。請求者のアカウント名や支持政党を理由に、法的評価を決めることもしません。
懲戒請求が不法行為になる場合
最高裁第三小法廷は2007年4月24日、懲戒請求者には、懲戒事由を事実上・法律上裏付ける相当な根拠を調査、検討する義務があると示しました。
請求が事実上または法律上の根拠を欠き、請求者がそのことを知っていたか、通常人として普通の注意を払えば知り得たのに請求し、制度の趣旨に照らして相当性を欠く場合には、不法行為になり得ると判断しています。
この判決は、「懲戒されなかった請求はすべて違法」という基準ではありません。個別請求について、根拠、調査状況、請求者の認識、態様を確認する必要があります。また、初出時の記事が述べた「名誉毀損による刑事告訴」「多額の賠償が確実」という結論も、この判決から自動的には導けません。
結論
弁護士の発信を批判する自由と、懲戒制度を利用する権利はあります。請求者には、重大な手続を使う以上、根拠を調査し、事実と評価を分ける責任があります。
メディア側にも同じ責任があります。請求者への侮辱や報復を期待する表現は、手続の説明になりません。今後は、請求書、対象発信、対象弁護士の回答、弁護士会の判断を資料ごとに示します。
懲戒請求、発信者情報開示、SNS上の法的措置を含む検証記事は、政治とお金・SNS検証まとめから確認できます。
公金・選挙・SNS世論の検証記事まとめ
関連解説:懲戒請求の「受理」と「懲戒相当」は別である。受理通知の扱いと、個別請求の結論を区別しています。
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