兵庫県立大学の授業料等無償化、誰でも無料ではない――令和8年度から全学年対象になる制度の条件
兵庫県立大学では、要件を満たす県内在住者について、入学料28万2,000円と授業料年53万5,800円が全額免除されます。令和8年度(2026年度)からは、段階的に広がってきた支援が全学年対象になりました。
ただし、「兵庫県に住んでいれば誰でも無料」という制度ではありません。学生本人と生計維持者の住所、入学までの期間、学業成績、申請手続きなど、確認すべき条件があります。

対象条件を満たすか、何の費用が対象か、どの申請が必要かを分けて確認します。図は確認項目の案内であり、個別の支援認定を保証するものではありません。
出典:兵庫県の制度案内、兵庫県立大学の申請案内。確認日:2026年9月4日。
何が無償になるのか
県の制度で免除されるのは、次の費用です。
入学料:28万2,000円
授業料:年53万5,800円
入学料は、申請年度に入学した新入生が対象です。入学後に申請し、対象者として認定されると、入学時に納めた入学料が還付されます。
一方、入学時の諸費用、教科書代、実習費、住居費、通学費、生活費まで免除されるわけではありません。学費の大きな部分は軽くなっても、大学生活に必要な支出がゼロになる制度ではありません。
令和8年度から全学年が対象になった
この制度は、最初から全学年を対象にしていたわけではありません。兵庫県の資料では、学部は令和6年度に4年生、令和7年度に2~4年生、令和8年度から全学年へと段階的に対象を広げています。大学院も、博士前期・博士後期の学年を順に広げ、令和8年度には全学年が対象になりました。
県は、兵庫県立大学と芸術文化観光専門職大学について、県内在住者の入学料と授業料を、学部・大学院とも所得にかかわらず無償化する方針を示しています。
ここで大切なのは、「所得にかかわらず」という言葉だけを切り出さないことです。所得以外の要件は残っています。
最大の条件は、本人と生計維持者の住所
学生本人と生計維持者(原則として父母)の両方が、申請年度の4月1日を基準に、3年以上前から引き続き兵庫県内に住所を置いていることが必要です。秋入学の場合は、入学年度の基準日が10月1日になります。
住民票だけでなく、実際に住んでいるかどうかも確認されます。父母の一方が単身赴任などで県外に住んでいる場合には、一定の条件を満たし、勤務先の証明書などを提出できれば対象となる場合があります。
つまり、県内の大学へ進学する人であっても、本人と生計維持者の居住歴を別々に確認しなければなりません。
入学時期や学業にも条件がある
対象となるのは、兵庫県立大学の学部・大学院の正規生です。外国人留学生を対象とした入学者選抜で入学した人は、県の制度では対象外とされています。また、標準修業年限を超えて在学している場合や、標準修業年限で卒業・修了できないことが確定している場合も対象外です。
学部生は、高校等を初めて卒業した年度の翌年度末から、大学へ入学した日までが2年を超えていないことが基本条件です。博士前期課程・博士後期課程にも、進学時の年齢や、前の課程から引き続いて進学しているかという条件があります。
さらに、令和8年度の申請からは学業要件が審査されます。学部生は、卒業できないことが確定している場合、標準単位数の6割以下しか修得していない場合、学修意欲が著しく低いと判断された場合などが対象外になります。警告に2年連続で該当した場合も、支援の廃止につながります。新入生は前年度の成績がないため、学業要件の判定対象外です。ただし、居住要件や入学までの期間など、ほかの条件までなくなるわけではありません。
学業要件には留保があります。県の案内は、災害・傷病など、やむを得ない事情がある場合を例外として挙げています。成績や単位数だけを見て自己判断で諦めず、事情を所属キャンパスに相談してください。また、外国籍であることだけで一律に対象外になるわけではなく、永住者など一定の在留資格を持つ人も要件に含まれます。在留資格ごとの追加条件は、県・大学の案内で確認が必要です。県の対象要件
入学料は、入学手続きの際にいったん納め、入学後の申請・認定を経て還付される仕組みです。大学は、入学を辞退する場合には還付されないと説明しています。「後で免除される費用」と「手続き時点で用意するお金」を分けて準備してください。大学の受験生向け案内
また、令和8年度申請要領4~5ページは、警告が2回続いた場合でも、2回目がGPAの下位4分の1という要件だけに該当するときは「廃止」ではなく「停止」とする扱いを示しています。翌年の判定が「継続」となり、ほかの事由に該当しなければ再開できます。社会的養護を必要とする学生にも、書面で学修意欲を確認できる場合の特例があります。病気や家族の療養・介護などで学修に支障がある場合は、早めに窓口へ相談するよう案内されています。申出だけで必ず認められるものではありません。令和8年度申請要領4~5ページ
同じ申請要領には、国制度を利用しておらず、県無償化制度の対象外だった年度の成績は、原則として学業要件の判定に使わないという扱いもあります。ただし、修業年限内の卒業等ができないと確定している場合は除かれます。過去の成績だけで適用を決めつけず、どの年度の判定が使われるのかを確認してください。令和8年度申請要領5ページ
申請しないと、無償化は始まらない
県無償化制度は、条件を満たしていても自動的に適用されません。各キャンパスが定める期間内に申請し、大学の審査を受ける必要があります。期限を過ぎた申請は受け付けられないと、大学は案内しています。
主な提出書類は、次のとおりです。
県立大学授業料等無償化制度の申請書
申請チェックリストと、該当者の追加書類
学生本人・生計維持者・扶養親族等が記載された住民票の写し
住所の異動がある場合は、前住所地の住民票の除票
国制度の対象外となる学部生は、JASSOの進学資金シミュレーターの結果
住民票は、発行から3か月以内で、マイナンバーの記載がないものが必要です。必要書類は個別の事情で変わるため、申請要領とQ&Aを確認し、分からない場合は所属キャンパスの窓口へ相談します。
国の制度や大学独自制度との関係
県の無償化制度は、国の「高等教育の修学支援新制度」と別の制度です。国制度の対象になる場合は、国制度にも申し込む必要があります。国制度では、授業料・入学料の減免に加えて、給付型奨学金が支給される場合があります。一方、国制度の区分Ⅰ、または多子世帯の全額免除区分で支援を受けている人は、県無償化制度の申請が不要と大学は案内しています。制度の組み合わせは世帯状況によって異なるため、「県の制度だけを見ればよい」とは限りません。
県内居住の要件を満たさない場合にも、別の支援が残ることがあります。県外生の入学金は、大学院では令和7年度、学部では令和8年度の入学生から42万3,000円から28万2,000円へ引き下げられています。県の案内
兵庫県立大学の独自減免制度も、県外在住の学生が利用できます。所得等の要件に応じた授業料の全額・半額免除や、分納・延納の仕組みです。2026年9月4日に確認した大学の案内では、後期の大学独自制度は9月16日から10月8日までの受付が示されています。国制度の二次募集はキャンパスごとに日程が異なります。これは県無償化制度の募集期間とは別です。自分が利用する制度名を確認し、最新の受付日時を所属キャンパスに確かめてください。3制度の説明と申請期間
予算額だけでは、制度の届き方は分からない
19.57億円と20.65億円は、何が違うのか
初稿で参照した2026年1月16日の文教常任委員会資料は「当初予算要求概要」でした。そこに記載された19億5,739万4,000円を、制度全体の支出実績と読まないよう注意が必要です。当初予算要求概要・冊子5ページ
その後の県の当初予算案・主要施策資料17ページでは、県立2大学への支援を次のように分けています。

県内生への支援は19億5,739万4,000円、県外生への支援は1億782万1,000円、合計は20億6,521万5,000円です。対象は兵庫県立大学だけでなく、芸術文化観光専門職大学も含みます。財源欄では、県内生分に対応する特定財源として県立大学授業料等無償化基金が示され、県外生分に対応する額は一般財源となっています。数字の違いは、まず対象範囲をそろえて読む必要があります。当初予算案・主要施策17ページ(2月27日掲載版)
県は3月23日の知事提案説明で当初予算が議決されたと述べています。ただし、ここで比較している金額の出典は予算案の説明資料であり、補正後の現計予算や執行額、決算額を示すものではありません。3月23日の説明
予算書の金額を授業料で割っても、実際に支援を受けた人数にはなりません。入学金と授業料、県内生と県外生、国制度と県制度の範囲を分けたうえで、認定人数と実際の減免額を照合する必要があります。
兵庫県立大学の授業料等無償化は、所得を理由に対象外としない点で大きな制度です。ただし、対象者は要件を満たし、申請して認定された正規生です。進学を考える人は、「無料」という言葉だけで判断せず、本人と生計維持者の住所、入学時期、学業要件、申請期間、残る費用を順番に確認してください。
出典
兵庫県/県立大学の無償化(2026年7月2日更新)
※本稿は、2026年8月10日に確認した公式資料をもとにしています。申請期間や個別の適用は、年度・所属キャンパスの最新案内で再確認します。
▼あわせて読みたい
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▼あわせて読む
・斎藤知事の再選後、説明責任はどこへ消えた――兵庫県の財政見通しを「過去のせい」で終わらせない
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・神戸の夜景(かまやみひ)アカウント調査
https://note.com/poliplus/n/n8e6beb33b6ba
・政治ニュースを見たとき、何を一次資料で確かめればいいのか――会見・議事録・予算書を5段階で読む
https://note.com/poliplus/n/ncac42b79bf25
・はばタンPay+に関する過去記事(後日の検証案内あり)
https://note.com/poliplus/n/n0a7303861bdb
※上記の旧稿には、後日の検証記事への案内があります。予算や本人確認について現在の確認状況を読む際は、はばタンPay+第5弾を検証|129億円・本人確認・誤配信も併せて参照してください。
・相談119万件超でも、なぜ職場の問題は解決しにくいのか
https://note.com/poliplus/n/n60603cd31e69
▼このテーマのまとめ
・兵庫県問題まとめ
https://note.com/poliplus/n/ndae47bad720e
▼有料マガジン
・兵庫県問題マガジン(買い切り)
https://note.com/poliplus/m/me45ecf9db449
家計の負担軽減と、政策の効果は分けて考える
本稿では、申請に必要な情報や、支援を受けられる可能性がある例外・別制度は無料で読めるようにしています。県が掲げる目的は、若者が学費を不安にせず教育を受けられるようにすることです。要件を満たす学生の入学料・授業料を軽くする制度があることと、進学・修学継続・県内定着への効果がどれだけ生じたかは、別に検証する必要があります。県が示す制度目的
所得制限を設けず負担を軽くすることを評価する見方がある一方で、県立2大学以外に進む学生や、居住・進学時期の要件から外れる人との公平性を問う見方も成り立ちます。後者を検討する際にも、県外生向けの支援があることは省けません。これは記事側が整理した政策上の論点であり、特定の個人の動機を推測するものではありません。
なお、大学の申請要領7ページには、毎年度の県議会の議決と効果検証の必要性、卒業後のフォローアップを含むアンケート調査への協力が記されています。「検証の仕組みがない」とは言えません。令和8年度申請要領7ページ
今回参照した資料だけでは、令和8年度の最終的な認定人数・支出実績や、進学・県内定着に対する因果的な効果までは確認していません。効果がないと断定することも、政策の目的を実績として書くこともしません。
ここから先では、予算と基金の二重計上を避ける読み方、条件をそろえた費用計算、制度が届いたかを確認するための検証項目を扱います。申請のために有料部分を購入する必要はありません。
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