井ノ本知明・元総務部長の情報漏えい――第三者委報告と3人の不起訴処分
2026年9月3日更新
元西播磨県民局長の私的情報が県議へ漏えいした問題で、兵庫県警は2026年2月、井ノ本知明・元総務部長を地方公務員法の守秘義務違反容疑で書類送検しました。
初出時の記事は井ノ本氏の氏名を誤記し、知事の説明、井ノ本氏の異動、同日の別事件報道について、裏付けのない動機や意図を断定しました。その後、神戸地検は3人を不起訴としています。
ここでは、県の第三者調査委員会が行った行政上の事実認定と、検察が行った刑事処分を分けて整理します。
第三者調査委員会が認定したこと
兵庫県が設けた第三者調査委員会は2025年5月27日、秘密漏えい疑いに関する報告書を公表しました。
報告書は、井ノ本氏が元県民局長の私的情報を県議へ開示したと認定しました。知事の指示については、関係者の供述を比較したうえで、井ノ本氏が知事の指示と、それに同調した元副知事の指示により、「根回し」の趣旨で情報を漏えいした可能性が高いと判断しています。
一方、知事と元副知事が、口頭で伝えるか資料を示すか、どの程度の情報を開示するかまで具体的に指示したとは認定していません。斎藤知事は、漏えいを指示していないとの説明を続けています。
第三者委員会の判断は、県が依頼した独立調査の結論として重いものです。ただし、刑事裁判の有罪判決と同じものではありません。
神戸地検は3人を不起訴とした
神戸地検は2026年3月27日、斎藤知事と片山安孝・元副知事を嫌疑不十分で不起訴としました。共同通信の報道によると、漏えいを命じたり、そそのかしたりしたと認定するに足りる証拠が得られなかったと説明しています。
井ノ本氏については、漏えい行為を認定したうえで起訴猶予としました。起訴猶予は不起訴処分の一類型です。有罪判決ではありませんが、嫌疑不十分とも異なります。
告発者の上脇博之・神戸学院大学教授は、この不起訴処分を不服として検察審査会への申立て手続きを進めました。兵庫県の2026年5月13日知事記者会見では、質問者が申立ては受理されていると説明しています。2026年9月3日時点で、この申立てに関する検察審査会の議決は確認できません。
行政調査と刑事処分の結論が違って見えるのは、調査目的と判断基準が同一ではないためです。第三者委員会は県政上の事実関係と責任を調べ、検察は刑事裁判で犯罪を立証できるかを検討します。
人事の目的を断定できるか
井ノ本氏は県の懲戒処分を受けた後、2025年9月に兵庫県競馬組合の副管理者へ異動しました。この人事を批判的に検証することは可能です。
しかし、異動の目的が沈黙を促すものだった、知事側がその見返りとして優遇した、という裏付けは確認できません。職名や処分歴を示すことと、当事者の動機を推測することは分ける必要があります。
また、初出時の記事が取り上げた参政党イベント付近の暴行事件は、本件の漏えいと直接の関係がありません。報道時刻が近いというだけで、意図的な話題そらしと認定することはできないため、全文を削除します。
残る説明責任
刑事事件で不起訴になったことは、第三者委員会の報告書が存在しなくなることを意味しません。一方、第三者委員会が「指示の可能性が高い」と判断したことを、刑事上の共犯成立や有罪確定と言い換えることもできません。
確認できるのは、井ノ本氏による漏えいについて行政調査と検察の双方が一定の事実を認めたこと、知事・元副知事の指示について両者の評価が分かれたことです。この差を曖昧にせず説明することが、県と報道側の双方に求められます。
初出動画
いいなと思ったら応援しよう!
資料を確かめ、事実と見解を分けて伝える活動を続けています。チップは、資料の確認、図解・字幕の制作、記事の更新などに活用します。役立ったと感じていただけたら、無理のない範囲で応援していただけるとうれしいです。