【切り抜き月収80万の闇】兵庫県知事選動画で月80万円超――YouTuberが語った「お金にとりつかれたような感覚」とネットの罠
2025-11-15
本稿は、TBSテレビ「報道特集」が2025年11月15日に報じた内容と、同日公開の政経プラス動画をもとにした当時の論評です。本文の人物・肩書・「容疑者」等の表記は当時のものです。番組で別々に紹介された匿名の人物を同一人物として扱わないよう、表現を訂正しました。
こんにちは、カネさんです。
SNSやYouTubeを見ていると、「何が本当のファクトなのか」が分からなくなる瞬間ってありませんか?特に、世間を大きく揺るがした兵庫県知事選挙にまつわる情報流通は、まさにその象徴と言える出来事でした。
今回、TBSの『報道特集』が「ネット拡散の構造」をテーマに、この問題の本質へ深く切り込む見事な検証番組を放送してくれました。様々な妨害や反発が予想される中、客観的な事実に基づいて「おかしいことはおかしい」と正面から伝えたその姿勢には、本当に頭が下がる思いです。
この記事では、番組が紹介した調査データ、兵庫県知事選関連の切り抜き動画で月80万円超の広告収入を得たと語ったYouTuber、誹謗中傷をめぐる謝罪と二次加害の事例を分けて取り上げ、アテンション・エコノミーの問題を批判的に考えます。
ネットの嘘はなぜ浸透したのか?データが示す驚きの事実
『報道特集』では、兵庫県知事選挙において情報がどのように流通し、人々の認識にどれほどのギャップが生まれていたのかを具体的な数値で示していました。これが本当に興味深いというか、ある種の恐怖すら覚える結果になっているんですね。
斎藤氏支持層が主要な情報源として挙げた割合
TBSは、田中辰雄・横浜商科大学教授が2024年11月16日から17日に、兵庫県在住の18歳から79歳までの2347人を対象として行ったインターネット調査を紹介しました。主要3候補のうち斎藤元彦氏を知事にふさわしいと答えた層(690人)に、12の情報源から最も重視・利用したものを一つ選んでもらった結果、YouTubeは25.5%、Xは13.3%でした。
YouTube:25.5%
X(旧Twitter):13.3%
これは、支持層ごとの主要情報源の違いを示す数字です。この割合だけで、YouTubeやXが個人の事実認識を歪めたという因果まで確定するものではありません。一方、推薦表示によって似た情報に接し続け、異なる見方に触れにくくなる危険はあります。私は、政治情報が収益と結び付く場面ほど、発信者・媒体を問わず出典確認が必要だと考えます。
オールドメディアへの根深い不信感
同じ調査では、斎藤氏支持層に「今回の件についてマスコミの情報を信用できると思うか」と尋ねています。
「思わない」「どちらかといえば思わない」の合計:86.4%
「思わない」:63.2%
この結果は強い不信の存在を示しますが、特定の動画視聴が不信を生んだと調査だけで断定はできません。TBSは田中教授の見解として、YouTube利用と認識のずれを関連づけて紹介しました。私は、ネット対既存メディアという二択に閉じず、個別情報の根拠を確かめる必要があると考えます。
1500万再生の裏側:デマで稼ぐ「アテンション・エコノミー」のリアル
では、なぜネット上にはこれほどまでに過激で、根拠のない情報が溢れかえってしまったのでしょうか。その答えは、現代のネット社会の構造的な問題である「アテンション・エコノミー(関心経済)」にあります。
月80万円を手にした切り抜きYouTuberの告白
番組は、関東地方に住む匿名の政治系YouTuberを紹介しました。男性は、兵庫県知事選の演説動画の1本が39万回再生され、再生数などに応じてYouTubeから月80万円を超える広告収入を得たと説明しました。通常1日1万円ほどだった収入が4万円から5万円になることもあり、「お金にとりつかれたような感覚」と振り返っています。
男性は、YouTuber同士の競争でサムネイルやキーワードが過激になり、本人が「嘘じゃね」と感じる水準で一歩引こうとした趣旨も語っています。さらに、立花氏の主張が兵庫県警本部長に否定された際には、自分が立花氏の動画を出した以上、訂正・謝罪動画を出すべきだと述べたとTBSは伝えています。
この取材は、再生数と収益が過激化の誘因になり得ることを具体的に示します。ただし、TBSの公開記事だけから、男性の全投稿を「デマ動画」と一括認定することはできません。批判すべきなのは、検証を欠いた情報や誇張を収益のために拡散する行為と、その誘惑を強める構造です。
限界地方政治 選挙ウォッチャーちだい (著), 菅野完 (著), 清義明 (著), 畠山理仁 (著), 松本創 (著)
標的となった議員たちと、プラットフォームの不都合な現実
嘘の情報によって事実を捻じ曲げられ、徹底的なバッシングの標的にされた人たちの精神的苦痛は、想像を絶するものがあります。
100件以上の開示請求と戦う現場
百条委員会のメンバーだった丸尾牧県議は、「人生の中で一番しんどい1年だった。本当に厳しい局面に立たされた」と語っていました。当時は特定のインフルエンサーが事務所に押しかけたり、「見つけたら教えてください、すぐ行きますから」とネットで煽ったりと、恐怖に怯える日々が続いていたそうです。
丸尾県議は、悪質な誹謗中傷に対して法的な手続きを進めてきました。
XやGoogle(YouTube運営)などのプラットフォームに対し、発信者情報の開示請求を行った。
その対象となった投稿数は、延べ100件以上。
TBSによれば、丸尾牧・兵庫県議が最初に申し立てた発信者情報開示では、裁判所の決定まで7か月を要し、決定から4か月後も電話番号やメールアドレス等が開示されていないと、本人と代理人が説明していました。丸尾県議は間接強制を申し立てたと報じられています。被害申告後も手続が進まない負担は重く、迅速な対応を求める批判には理由があります。ただし、個別の決定全文、プラットフォームの応答記録、遅延理由は今回確認しておらず、全ての事業者・事件へ一般化しません。
デマを流した側の「身勝手な言い分」
番組は、丸尾県議から開示請求を受けたと知り、謝罪の手紙を送った発信者を別に紹介しています。手紙には、YouTube収入で家族を支えてきたこと、生活が困難で別の収入手段を探していること、誤った情報・表現への反省と穏便な対応の求めが記されていたと報じられました。
私は、被害を受けた側の負担が消えない以上、生活事情を述べるだけで責任が解消されるわけではないと考えます。ただし、この手紙の人物が、前節の月80万円超のYouTuberと同一人物であることは、TBSの公開記事から確認できません。
兵庫県知事問題 失敗の本質 ――情報不信はなぜ生まれたか (ちくま新書 1920) 小林 和樹
「加害者」が「被害者」に反転する、ネット私刑の恐ろしいブーメラン
番組はさらに、斎藤知事を支持する立場から丸尾県議への攻撃を繰り返した別の男性を紹介しました。男性は開示請求をきっかけに2025年3月に謝罪し、その後、斎藤氏の支持者とされる人々から住所・勤務先などの個人情報をさらされ、X上で殺害予告も受けたと証言しています。
TBSによれば、男性は職を失い、引っ越し、Xアカウントを削除しました。男性自身の「事実に基づかない批判」への責任と、その後に受けた個人情報晒し・殺害予告は別問題です。誹謗中傷をした人であっても、私刑や脅迫の対象にしてよい理由にはなりません。
まとめ:私たちがアテンション・エコノミーに呑まれないために
今回の『報道特集』の検証は、ネットの闇、そして情報を発信する側・受け取る側双方が直面している構造的な欠陥を浮き彫りにしました。
この記事のポイントを振り返ると、以下の3点に集約されます。
調査では、斎藤氏支持層と稲村氏支持層で、主要情報源と事実認識に大きな差が観察されたこと。
再生数に応じた収益が、過激なサムネイルやキーワードを促す誘因になり得ること。
一度火がついたネットの攻撃性は、当初の発信者にも向かい得ること。
「注目を集めれば収益になる」という仕組みが、検証より刺激を優先させる誘因になっているなら、現行制度だけで十分かを検討する必要があります。表現の自由への影響と、収益化抑制の効果・実行可能性を分けて議論すべきです。私は、悪質な収益化への対応を早急に検討する必要があると考えます。
私たちにできることは、流れてくる刺激的な情報に対して一歩立ち止まり、「これは誰の、何のための情報なのか」「ファクト(事実)はどこにあるのか」を冷静に見極める賢さを持つことです。ネットの濁流に呑まれないよう、お互いにリテラシーを高めていきたいですね。
訂正・追記(2026年9月5日):TBSの公開記事で別々に紹介された匿名の人物を同一人物と読める書き方、調査結果を因果関係として断定した見出し・説明、元発言の逐語引用ではないかぎ括弧文、「温便」の誤記を訂正しました。タイトルを確認できた取材内容と発言に合わせて改め、旧表現を含む見出し画像は外しました。検証を欠いた政治情報や誹謗中傷を収益化する行為を批判する本稿の立場は変更しません。
確認資料:TBS NEWS DIG「拡散を繰り返した男性が今度は標的に… 匿名のデマ・誹謗中傷との長い闘い 加害と被害の連鎖を止めるには」(2025年11月15日)
https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/2291432?display=1
調査資料:田中辰雄「兵庫県知事選調査――なぜ斎藤氏は勝利したのか」(2024年11月21日)
https://synodos.jp/opinion/politics/29343/
制度の参考:東京地方裁判所「発信者情報開示命令申立て」
https://www.courts.go.jp/tokyo/saiban/minzi_section09/hassinnsya_kaiji/index.html
今回の訂正作業では、カネさんとChatGPTが、公開資料の整理、論点分解、文章の推敲を共同で行いました。出典確認、評価、公開判断、内容への最終責任は運営者が負います。
最後までお読みいただきありがとうございます!もしよろしければ、ぜひスキボタンを押してください!
初出動画:https://youtu.be/anwjOiYf41c
▼あわせて読む
・【兵庫県政激震】立花容疑者逮捕にノーコメントを貫く斎藤知事、その「一般論」に覚える強烈な違和感
https://note.com/poliplus/n/n3ccddb3bc72e
・神戸の夜景(かまやみひ)アカウント調査
https://note.com/poliplus/n/n8e6beb33b6ba
・わずか13アカウントが世論を歪めた?データで暴かれた「ネット私刑」の恐るべきカラクリ
https://note.com/poliplus/n/nf1e77f430930
・発信者情報開示と間接強制をめぐる旧稿を訂正・撤回します
https://note.com/poliplus/n/n8ff896eca67f
・【遺族の告白】あれから1年。百条委員会・竹内元県議を自死に追い詰めた「ネットゴキブリ」とデマの恐るべき狂気
https://note.com/poliplus/n/n1eb2cc9f777e
▼このテーマのまとめ
・兵庫県問題まとめ
https://note.com/poliplus/n/ndae47bad720e
▼有料マガジン
・兵庫県問題マガジン(買い切り)
いいなと思ったら応援しよう!
資料を確かめ、事実と見解を分けて伝える活動を続けています。チップは、資料の確認、図解・字幕の制作、記事の更新などに活用します。役立ったと感じていただけたら、無理のない範囲で応援していただけるとうれしいです。