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日記+ | 大丈夫です、女性ですから安心してください

恥ずかしいので、誰にも言わずに封印しようと思っていた先日の祝日の出来事を、今明かす。

その日は夫と次女が出かけていて、あとは長女を塾に送り届けさえすれば、約4時間の「ひとり時間」が確約されていた。長女の部活の大会も無事に終わって、ようやく一段落ついた休日。私はこの貴重な時間を存分にのんびり過ごそうと決めていた。

少しでも長くひとり時間を満喫したかった私は、さっさと自分の支度を済ませて車で待機。しかし、中学3年の長女は「ちょっと出かける」だけでもとにかく時間がかかる。丁寧にヘアアイロンをかけ、リップを塗り⋯⋯思春期なので理解はできるものの、この日もやはり出発時間はギリギリになってしまった。

​「もっと余裕を持って支度をしなさいよ」
何百回言ったか分からない言葉を長女にかけるも、「気をつけまーす」とスマホを見ながら生返事。
(まったく⋯⋯)と呆れたが、まあ今日は許そう。なぜなら冷蔵庫には、前日にスーパーで買っておいた1つ300円もするプリンを忍ばせてあるのだから。

たまっている積読を集中して読むのもいいし、せっかくテレビを独占できるのだからスプラトゥーンに勤しむのもいい⋯⋯。脳内で最高の休日プランを練りながら長女を塾に降ろすと、そういえば次女の下着が古くなっていたということを思い出した。
それだけ買ってから帰ろうと、少し回り道をして、「しまむら」に寄ることにした。

​祝日だというのに、店内に客の姿はまばらだった。
ついでに長女の分も良いのがあればと女性用下着を覗いてから、目的の女児用下着コーナーへと向かう。その時、ふと人の視線を感じた。
(ん? いや、気のせいか⋯⋯?)

​小学4年ともなると、下着の好みもうるさくなる。それまでは「すみっコぐらし」や「ポムポムプリン」など、有名なキャラクターが付いていれば何でもよかったのに、今は「えぇ〜? これぇ〜?」などと文句を言う次女。
​あの時は「キャラクターがついているだけで100円高いんだぞ!」と思っていたが、今なら「100円払うからキャラクターものを買わせてください」と切に願う。
​私がこうして一人で買いに来た場合、サイズや素材、丈夫さをクリアした上で、「じゃあこのパンダ? いや、こっちの鳥みたいな柄がいいのか⋯⋯?」と永遠に悩まなければならないからだ。

パンツをあれこれ吟味していると、やはりまた視線を感じた。
さりげなく視線をそちらへ走らせると、5メートルほど離れた場所で、白髪のボブヘアの小柄な女性がこちらを凝視していた。
ほんの少し眉をひそめた彼女のその表情を見た瞬間、私の時が止まった。
(あ、この感じ、知ってる⋯⋯)
忘れていた記憶が一気にフラッシュバックした。

私は昔、頻繁ではないものの、稀に男性だと思われることがあった。
女子だけで行ったカフェで、レディースデーで付くデザートが自分の分だけなかったり、街で「お兄さん」と声をかけられたり、女子トイレの順番待ちで「ぎょっ」とされたり。
女性の眉間のしわは、まさにその時の表情だった。

身長や顔立ちのせいもあるが、例えばショートカットに大きめのシャツ、スキニージーンズという、一般的な女性なら「ボーイッシュ」や「メンズライク」で済む格好も、私がするとあっさりと性別を超えてしまうようだった。

​誤解された時、何より申し訳ないのは周りや相手に余計な気を遣わせることだ。
「お腹いっぱいだったからちょうど良かったよ」と取り繕い、「ニヘッ」と愛想笑いでやり過ごし、時にはわざとらしく高い咳払いをして「私は女性です」と必死にアピールしてみたりもした。

​はっと我に返った。この日の私は、夫のジーンズを履いていた。身長差があまりないので、たまに夫の服を借りているのだ。それにダボっとした紺無地のTシャツにスニーカー。塾の送りだけのつもりだったので、メイクは日焼け止めと眉毛のみ。髪はロン毛の男性がするような雑なハーフアップ。

​(あぁ、やってしまったかもしれない)
​ここ15年くらいはそんなこともなかったので、すっかり油断していた。
だがそれなら、あの表情にも納得がいく。男性(に見える人物)が女性用下着をジロジロ見たり、女児用パンツを手にとって吟味している様なんて、不快に思う人がいても当然だ。
また、誤解させてしまったようだ。

(安心してください。私はこう見えて女性ですからね)と、少しクネクネとした動きで女性らしさを出そうかと考えたその時、その女性がすっとこちらに向かってくる気配がした。ヤバい、何か言われるかもしれない。
こういう時は、余計な接触を避けるのが一番だ。
​私は慌てて近くにあったパンツを手に取ると、足早にレジへ行き会計を済ませ、そのまま急いで車に乗り込んだ。女性は追ってこなかった。

​ほっとしてシートベルトを締めようと少し右側へ体をひねったとき、視界の下の方で、白いものが動いた。

(え⋯⋯うそ、だろ?!)
それは、服の洗濯表示のタグだった。
そしてタグから脇までは、くっきりとした縫い目が続いていた。

私は、Tシャツを裏返しに着ていたのだった。

あの女性の眉間のしわは、「裏返しなの、教えてあげるべきか⋯⋯?」という葛藤のしわだったのだろう。親切心から逃げるように車に駆け込んだ自分の行動と、裏返しのまま店内をうろついていたことが猛烈に恥ずかしかった。

帰宅後、Tシャツを脱いで床へぶん投げ、湧き上がる恥ずかしさを埋めるようにプリンを貪った。
​(こんなっ⋯⋯こんなことっ⋯⋯「ちょっと出かける」程度でも、ちゃんと鏡は見なきゃダメだッ⋯⋯!)
​荒んだ気持ちではスプラトゥーンも全然だめで、クッションに突っ伏したまま寝落ちした。
気づいた時には塾の迎えの時間になっており、私のひとり時間はあっけなく終了したのだった。

​ちなみに、パニック状態で焦って手に取り買ってきた次女のパンツは、「くまのプーさん」だった。



こちらの記事は、「#エッセイしりとりコンテスト」として繋いでいただいたバトンを受け取り、書いたものです。

↓マイキーさん主催の、コンテスト概要

今回、私に「た」で繋いでくださったのは、
⭐相生エッセイさん。

相生さんの書くエッセイからは、味だったり色彩だったり香りだったりを感じます。五感で感じる文章に、毎回唸らせてもらっていますが、あれは魔法でしょうか⋯⋯💫
繋いでいただき、ありがとうございました😊


エッセイとは⋯⋯?
まずそこから理解できていない私は、日記に毛が生えたようなものになってしまいました。
「た」じゃなくて「だ」にしてしまったし😅
そんな私からバトンを繋がせていただく3名は⋯⋯


⭐️ささかまさん

最近フォローさせていただいた、ささかまさん。
写真のセンスと、可愛らしい言葉を使った文章に「わぁ❤️」っとなります。悶絶必須。猫通いされているそうですが、私は猫通いしているささかまさん通いをしています。


⭐️桃瀬めぐさん

イラストを使ってくださったことがきっかけで記事を読んだ私は、その圧倒的な面白さと文章力におののき、秒でファンとなりました🥹だってまず、タイトルからして、隠せないセンスが滲み出ちゃってると思いませんか?


⭐️猫杓子さん

独特の比喩がツボすぎて⋯⋯😂記事を読んでいると、すぐ隣で見ている感覚に陥ります。先日の小旅行の記事は、いつの間にか私も一緒に旅のお供をしていました。それほど、惹きつけられる文章を書かれる方なのです。

ささかまさん、桃瀬めぐさん、猫杓子さん、
私からのバトンは「い」です。
突然のバトンですし、もちろん受け取らなくても結構です。でももし、受け取ってくださるなら、「い」から始まるタイトルでエッセイをお願いいたします🙂‍↕️


●バトンを渡した人の記事のタイトルの最後の文字をタイトルにつける
●本文140字〜3000字
●8月31日まで
●「#エッセイしりとり」のタグをつける
●3名以内で次の人に繋げる(繋げなくてもいい)


どうぞよろしくお願いします🙂‍↕️

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