開発日誌 #10 — チュートリアル「古地図章」を追加した話
リリース直前の段階で、チュートリアルに「古地図章」という新しい章を追加しました。最初のテストプレイで、想定していなかった離脱パターンが見つかったためです。今回は、その発見と対応の記録です。
最初のテストで気づいた問題
完成した HOTARU を最初に触ってもらったとき、何人かのテスターが同じ場所で離脱しました。
「屋敷の迷路で、どこに行けばいいか分からなくて、3周ぐるぐるしてやめた」
これは想定外でした。「迷う楽しみ」を提供するゲームのつもりが、「ただ迷ってストレスを受けるゲーム」になっていた。
迷い家というモチーフ自体が「迷うこと」を前提にしているので、ナビゲーション支援を最小化していました。でもそれが、新規プレイヤーの最初の壁になっていたのです。

「迷い方」を教える必要があった
ここで重要な気づきがありました。プレイヤーが知りたいのは、「どう進むか」ではなく「どう迷えばいいか」 だということ。
HOTARU は、最短経路を探すゲームではありません。蛍を頼りに屋敷を彷徨い、雰囲気を味わい、たまに妖怪に遭遇して隠れる、というセッション全体が体験の本質です。でも、新規プレイヤーはまずクリア目的でプレイするので、「進路の選び方」が分からないと不安になります。
そこで追加したのが、チュートリアル「古地図章」 です。
古地図章で伝えること
この章では、プレイヤーに次の3つを体験してもらいます。
1. 古地図というアイテムの存在
ゲーム序盤で、不完全な古地図を1枚拾う。これは現在地と一部の通路だけが見える、頼りない地図です。
2. 古地図は「正解」を示さない
古地図には、出口(裏木戸)の位置は描かれていません。あくまで「どこに行ったか」を記録する地図です。これによって、プレイヤーは 「迷うこと自体がゲーム」 だと納得できます。
3. 古地図は迷路の中で拾う
古地図は迷路内に数枚だけ落ちていて、拾うと少しずつ埋まっていきます。枚数が限られているので、全部は教えてくれない。「ヒントは有限」という設計が、地図への頼りすぎを防ぎます。

「ストレス」と「達成感」の境界線
古地図章を入れる前、私は 「迷いの過剰が離脱を生む」 と思っていました。それは半分正しい。でも、ナビゲーションを与えすぎると今度は「自分で迷い家を解いた」という達成感が失われます。
古地図はその境界線にうまく座る道具になりました。
完全には教えない(達成感は奪わない)
でも全くのノーヒントでもない(ストレスは緩和する)
拾える枚数を絞ることで、ヒントの量そのものを調整できる
「迷う楽しみ」を提供するゲームには、「迷い方を教える」設計 が必要だったのです。
チュートリアル(紙芝居)の構成
HOTARU のチュートリアルは、本編に入る前に読む 紙芝居スタイルのスライド です。最終的に8枚になりました。
「迷い家」 — 物語の導入
「蛍」 — 周囲を漂う蛍の役割
「行灯」 — 蛍籠と蛍の補充
「妖怪」 — 追跡してくる存在
「隠れる」 — 押入れなどでやり過ごす
「裏木戸」 — 脱出口
「古地図」 — 迷い方を学ぶ(今回追加)
「操作」 — 端末ごとの操作説明
スライドはスキップも可能。「ゲームのルール」と「ゲームの楽しみ方」の両方を、本編前にここで伝えきります。

テストで見つかる「想定外」こそ価値
開発者の想定と、プレイヤーの行動には必ずズレがあります。そのズレを発見できる場が、クローズドテストの最大の価値です。
古地図章は、机の前で考えていただけでは絶対に思いつかなかった追加でした。「迷ってもらいたいゲーム」と「迷ってつらいプレイヤー」の間の橋を、テストの現場で初めて発見した のです。
これからもクローズドテストを通じて、想定外の発見を積み重ねていきたいと思っています。
HOTARU: The Lost House について
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