市役所にギャルがいると安心する
昔からオシャレな人が苦手なんですよ。
自分と違う世界にいる人間のような気がして。
でも多分、オシャレタウンの住民達の方が、垢抜けず村の民である私のことを嫌っていると思います。
「いやー、ちょっと近くに寄って来ないでもらえますかね? うちのブランドに傷がつくと困るので」
って迷惑そうな顔して文句言ってくるんですよ、私の脳内で!
事実に基づいた記憶を見渡してみても、ズボンのことを「ズボン」と言った私に、
「パンツ↑ね(笑)」
と、笑われたことがあります。
間違っているのはいつも垢抜けずの民であるワタクシのほうでございますね。
ダサいは悪!オシャレこそ正義!
◼️ギャル
そして、オシャレタウンの上級国民といえば、ギャルですね。
少なくとも私の若い時のギャルは一目置かれていました。
渋谷の109はオシャレの聖地として取り上げられ、その中心には常にギャルがいたわけです。
ギャル達は、装飾に装飾を重ね、カラフルで奇抜な形状の布地を身に纏っているんですが、私はその格好を正確に説明することができません。
だって、服装に関して「Tシャツ」「パーカー」「上着」「ジーパン」「スカート」「ズボン(パンツ↑)」くらいの語彙しかないですし。
アクセサリーだって、「ピアス」と「イヤリング」の違いがいまだにわからないので、なるべくその単語を発さないように生きてきました。
髪色も、私には「金髪」にしか見えないんですが、どうせ違うんでしょ?
今調べてみたら、「ミルクティーブロンド」という言い方があるんですね。
髪の色を飲み物で形容するその感覚、とてもオシャレだと思います。
◼️市役所
そんなわけで当時の渋谷は、垢抜けずの民である私からすると、遠い国どころかもはや異世界に見えていたわけです。
一方で、市役所ってダサいですよね。
最近は、オシャレな空間を目指している市役所も増えてきましたが、たいていの市役所はダサいです。
あらゆる市民が安心して利用できるようにオシャレすぎてはいけないって感じの行政的美学があるんだろうなって思います。
すばらしいポリシーです。
市役所に行くとすっかり安心してしまってオレンジジュースとか飲みたくなりますよね?
ダイドーの自販機とか設置している自治体は市民の心をとても理解していると思います。
◼️住民票を発行するギャル
ある時、ジュースを飲みながら待合のソファーに腰掛けていると、隣にギャルが座ってきました。
ピンクに黄色にキラキラした装飾にとまごうことなきオシャレで、Tシャツにズボン(パンツ↑)という善良な市民みたいな格好の自分がみじめに思えてきました。
しかし、
「109番の方。3番窓口までお越しください。」のアナウンスに反応したそのギャルは、毛玉みたいな装飾品をユラユラさせながら住民票の発行窓口へと歩いて行きました。
住民票!!!
ギャルも住民票必要なんだ!
オシャレタウンの上級国民なのに、ちゃんと戸籍で管理されているんだ!
そう思えてくると、途端に親近感が湧いてきます。
「あのギャルの髪の色はなんていうんだろ? ダイドーのミルクティー奢ってあげたいな」
って思えるくらいに心が軽くなってきました。
オシャレタウンと垢抜けず村の大きな溝は、住民票という行政的癒しによって埋められたわけですね。
それ以降私は、「ちょっとこの人オシャレすぎて一緒にいて緊張するな」って感じる時は、その人が住民票を受け取っている姿を想像します。
ミルクティーを奢りたくなる気持ちになれるので。
