毎週ショートショートnote 【迎え火オペラ 】 ーー誰も寝てはならぬ夜ーー ♬トゥーランドット 誰も寝てはならぬを聴きながら、読んでみてください。
真夜中、玄関のドアベルが鳴った。
ティーン。ティーン。
目が覚める。誰かがドアを開けた? 強盗かもしれない。見に行って鉢合わせたら、殺されるかもしれない。
それでも気になり、ベッドを抜け出した。 階段の下は真っ暗。一段。また一段。
頭の中に『トゥーランドット』が流れ始める。
姫は命じた。今夜は誰も寝てはならぬ。
夜明けまでに、王子の名を探し出せ。
誰も寝てはならぬ。
一段。また一段。
静まり返った家の中で、脳内のオーケストラと歌声だけが、ますます高らかに響き渡る。
玄関には誰もいなかった。
朝、夫に話すと、
「帰ってきはったんかもしれんな」
「誰が?」
「お盆やろ」
すっかり忘れていた。
その頃、町を見下ろす霊たちは困っていた。
迎え火がひとつもない。
やがて、暗闇のあちこちに小さな光が灯っていることに気づく。
「あれだ」
霊たちは一斉に降りたった。
ベッドの上で、私はスマホを見ていた。
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