短編 | 星の世界
「世界は星で出来ているって本当なの?だったら、僕も多佳子ちゃんも星から作られたってことだよね?」
「ええ、そうよ。」
思い付きでつくったおとぎ話に、良太が食いついた。
「だったら、多佳子ちゃんも僕も、きっと良い星から作られたんだよね」
「ええ、そうなんでしょうね」
多佳子はもうこの話を早く切り上げたいと思った。だから、良太が何を言っても「そうね」とだけ言おうと決めていた。
「でもさ」と良太は不思議にそうに尋ねた。
「多佳子ちゃんの木には、柿ができるよね。でも、美味しそうなきれいな柿と、虫の食った柿ができるのは何でなんだろう?」
なんか妙なことになった、と多佳子は思った。この質問には「そうね」では答えにならない。考えた末に「そうねぇ、たぶん星にはきれいな星と虫の食った星があるんだろうね。」と答えた。
「ふ~ん、そうなんだね。でもさ、良い子の僕と良い子の多佳子ちゃんには、どっちの柿が似合うだろうね?」
良太は首を傾げながら考えはじめた。しばらくして、真っ直ぐな目で、多佳子の顔を見つめた。
「良い子の僕たちなら、やっぱり虫のついていない、甘くてきれいな柿だよね?」
多佳子はため息を押し殺した。適当に合わせるつもりが、逃げ道を塞がれてしまった。本当は早くこのまま家へ帰って、冷えた麦茶でも飲みたかった。
「そうね。きっと、きれいな柿なんじゃないかな?」
「そっか!やっぱりそうだよね!」
良太の顔がぱっと明るくなった。
「じゃあさ、あの木の上の方にある柿、僕が取ってきてあげるよ。多佳子ちゃんには、一番きれいで美味しいやつを食べてもらいたいからさ」
そう言って良太は、庭の隅に立つ大きな柿の木へ走り出した。木を見上げながら、一番赤くて虫の喰っていない実を探している。その小さな背中を見て、多佳子は少しだけ胸が痛むのを感じた。
「ちょっと、良太くん、危ないから登らなくてもいいよ。早く下りてきて!」
「平気だよ! 僕たちの星の柿を取るんだからさ」
良太は半ズボンの膝をすりつけながら、器用に幹へしがみついた。適当にあしらうつもりが、いつの間にか冒険が始まってしまっている。多佳子は木の下まで歩み寄り、念のためにと両手を広げた。
「気をつけてよ。落ちたら痛い星になっちゃうんだからね」
「わかってるって!心配しないで!」
木の上から良太の元気な声が響いた。枝の隙間から差し込む夕日を受けて、良太の髪がオレンジ色に光っていた。多佳子は空を見上げた。まだ明るい青空のどこかに、本当に自分たちを作った星が隠れているのかもしれないと、少しだけ思った。
おわり
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記事を読んで頂き、ありがとうございます。お気持ちにお応えられるように、つとめて参ります。今後ともよろしくお願いいたします