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5分より10分。10分より20分?トリートメントは、長く置くほど効く?「浸透」と時間の関係。

ここまで、保湿、電荷、高級アルコール、ラメラ構造と、トリートメントそのものがどのように設計されているのかを見てきました。
けれど、どれだけ優れた処方であっても、容器の中に入っているだけでは髪は変わりません。
手に取り、髪へつけ、なじませ、少し待って、すすぐ。
ここから先は、「何を使うか」ではなく「どう使うか」の話です。
美容室でも家庭でも、トリートメントにはさまざまな使い方があります。時間を置く、たっぷりつける、コームを通す、手で握り込む。どれも当たり前のように行われていますが、それぞれの操作が髪の上で同じことをしているわけではありません。
では、その中で本当に意味を持っているのは何なのでしょうか。
今回からはトリートメントの「使い方」をひとつずつ分解し、何となく続けてきた手順を、毛髪の上で起きている現象から考えてみたいと思います。
まずは、多くの人が一度は気になったことのある「時間」からです。

塗った瞬間から始まっている物理現象

トリートメントを髪になじませ「少し時間を置いてください」と言われると、誰もが「放置時間を伸ばすほど奥深くまで効いてくれるはずだ」と考えがちです。5分よりも10分、10分よりも20分。長く置くほど成分が髪の奥深くへとじっくり染み込んでいくイメージは、直感的にも非常に理解しやすいものです。
しかし、実際のトリートメントは、数分経過したタイマーの音とともに突然働き始めるわけではありません。
髪に塗布したその瞬間から、毛髪表面ではすでに成分との接触と化学的なアプローチが始まっています。プラスの電荷を持つカチオン性成分は、塗ってすぐに毛髪表面のマイナス部位へと吸着を開始し、油分や皮膜形成成分も素早く表面へ行き渡って滑らかさを与えます。指通りや摩擦の軽減といった表面のコンディショニング作用の多くは、塗布直後の段階からすでに進行しているのです。

物質が移動する「浸透」のリアルな構造

では、時間を置くことで促進される「浸透」とは、具体的にどのような現象なのでしょうか。
毛髪は均一な一本の空洞ではなく、外側のキューティクル、内部のCMC(細胞膜複合体)、そして中心部のコルテックスといった多層構造を持っています。成分が内部へ進むには、分子の大きさ、電荷、水や油との親和性など、数々の条件をクリアしなければなりません。
すべての成分が時間をかければ等しく中心部へ進んでいくわけではなく、あえて表面に留まるように作られた成分もあれば、微小な隙間を縫って内部へ移動していく成分もあります。
「時間を置けば放置時間に比例して全成分が深部へ染み込む」という考え方は、毛髪内部で起きている拡散のメカニズムを少し単純化しすぎていると言えます。

放置時間と補修効果は比例し続けない

だからといって、放置時間にまったく意味がないわけではありません。特定の成分が毛髪内部へと移動する「拡散」のプロセスには一定の時間経過が必要となるため、適切な接触時間を確保することには確かな意義が存在します。
しかし、ここで知っておくべきなのは、時間と効果の関係が直線的な比例関係ではないという点です。
吸着できる毛髪側のスポットには物理的な上限があり、毛髪の内外で生じる成分の濃度差も時間が経つにつれて徐々に埋まっていきます。1分から5分に延ばしたときの変化の幅と、20分から25分に延ばしたときの変化の幅は決して同じではありません。
放置時間を延ばせば延ばすほど効果の伸び率はゆるやかになり、やがて飽和状態へと向かいます。時間をかければかけるほど際限なく効果が高まり続けるわけではないのです。

時間の長さよりも「均一な塗布」という前提

こうした物理的な限界を踏まえると、「結局何分置くのが正しいのか」という答えは、個々のプロダクトの設計に委ねられることになります。
短時間でのすすぎを想定して素早く表面を整えるよう作られた製品もあれば、数分間の放置によって成分の拡散を狙った製品もあります。基本的には、製品のパッケージに記載された推奨時間を守ることが、最も効率的で無駄のない使い方になります。
そして何より、放置時間以上に仕上がりを左右するのが、「髪全体へどれだけ均一になじませられたか」という塗布の精度です。どれほど長く放置したとしても、トリートメントが触れていない毛束には何も起きません。
水分量を適切にコントロールし、必要な部分へムラなく行き渡らせた上で、定められた推奨時間を守ること。
「とにかく長く置く」という時間への依存から一歩離れて、成分と毛髪が正しく出会う環境を整えることこそが、トリートメントの持つ真価を最大限に引き出すための確かな手入れと言えます。
次回は、「トリートメントは、たくさんつけるほど効く?」をテーマに、塗布量と毛髪の表面積、吸着の関係から考えてみたいと思います。

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