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PFAS対策は「水」から「土」へ。ベントナイトで汚染土壌を「動かさない」|前田建設工業×ボルクレイ・ジャパン

PFASの話をするとき、これまで主役はずっとでした。

水道水の基準、井戸水の検査、川や地下水の測定。2026年4月には水道水質基準も動きました。ニュースになるのも、たいてい水です。

でも、その水はどこから来るのでしょうか。

泡消火剤がまかれた場所、工場があった場所、そこのにPFASが残っていて、雨が降るたびに少しずつ地下水へ移っていく。水を何度きれいにしても、供給源が土に残っていれば、また出てきます。

だからいま、対策の焦点が土に移りつつあります。

環境省が、土壌の技術を2件選んだ

2026年8月6日、環境省が「PFOS等の濃度低減のための対策技術の実証事業」の二次公募結果を発表しました。

この二次公募は土壌が対象でした。6件の応募があり、審査を経て2件が採択されています。

そのうちの1件が、今回の話です。

前田建設工業(共同提案:ボルクレイ・ジャパン)/ベントナイト系機能性材料を用いたPFOS等汚染土壌の固定化技術

もう1件は太平洋セメントの「セメント資源化」で、こちらはまったく違う発想です(別の記事で書きます)。

「固定化」って、何をすることなのか

技術の名前にある固定化。これは、PFASを分解して消すことではありません。

その場から動かないようにすることです。

土の中のPFASが問題になるのは、雨や地下水に溶け出して移動するからです。だったら、溶け出さないように土の中でつかまえておけばいい。掘って運んで燃やすのに比べれば、はるかに現実的です。

たとえるなら、暴れる子を叱って追い出すのではなく、手をつないで座らせておくようなものかもしれません。いなくなったわけではないけれど、外には出ていかない。

なぜベントナイトなのか

ここで登場するのがベントナイトです。

聞き慣れないかもしれませんが、実は身近な材料です。粘土の一種で、水を吸うと大きく膨らんで、水を通しにくくなる性質があります。だから昔から、ため池の底や廃棄物処分場の遮水シート、土木のトンネル工事などで使われてきました。「水を止める粘土」として、建設業界では定番の材料です。

そのベントナイトに、PFASをつかまえる力があるという話が出てきました。

共同提案者のボルクレイ・ジャパンは、ベントナイトを扱う専門企業です。同社のベントナイト系吸着剤について、各種活性炭より4〜7倍の吸着性を発揮すると報じられています。

面白いのは、この組み合わせの意味です。水を通しにくくする材料と、PFASを吸着する材料が、同じひとつの物質だという点。 土に混ぜれば、雨水が通りにくくなり、通った水の中のPFASもつかまる。二重の効果が期待できます。

前田建設が「水」でやってきたこと

もう一方の前田建設工業は、PFASの分野ですでに実績を積んできた会社です。

同社はメタウォーターと共同で、イオン交換樹脂を使ったPFAS吸着処理システム「De-POP's ION」を開発しています。汚染された水を処理場まで運ばずに、その場で浄化できるのが特徴です。

沖縄県企業局と連携した実証試験も行っています。北谷浄水場の施設に「De-POP's ION mini」を複数設置し、嘉手納井戸群からの原水を使って、粒状活性炭とイオン交換樹脂の性能を比較検証するというものです。実施期間は令和7年4月から令和8年3月まで。長期間のデータを取り、設備の設計・施工に向けた知見を集めています。

ほかにも、防衛省基地内からの排水対策業務の受注、東京工科大学でのPFOS漏洩事案への対応、沖縄県庁舎の泡消火薬剤流出対策など、実際の現場を数多く踏んできた会社です。第9回インフラメンテナンス大賞では防衛省特別賞を受賞しています。

つまり今回の採択は、水で経験を積んだ会社が、土に踏み出したという構図です。

なぜ「土」がこれから増えるのか

正直に書くと、土壌のPFAS対策には難しさがあります。

水と違って、土は動きません。だから流れていく先で捕まえる、という戦術が使えない。掘り出して運べばコストも量も跳ね上がるし、運んだ先で燃やすには高温が必要です。そして何より、土壌については環境基準がまだ定まっていません。 何をどこまでやれば「終わり」なのかが、はっきりしないのです。

それでも、泡消火剤が使われた場所は全国にあります。基地、空港、石油関連施設、工場。そこの土は、地下水への供給源として残り続けます。

環境省が実証事業の対象を土壌に広げ、得られた知見を地方自治体等に広く提供していくとしているのは、この先を見据えてのことでしょう。

完璧じゃなくても、進むしかない

固定化という発想には、当然こういう批判があり得ます。「消えていないじゃないか」と。

そのとおりです。固定化は分解ではありません。土の中にPFASは残ります。将来また掘り返すことになれば、そこで再び向き合うことになります。

でも、分解できる技術が実用化するのを待つあいだ、土からの溶け出しを止められるなら、それは十分に意味のあることだと思います。地下水への供給を止めれば、下流の水はきれいになっていきます。時間を稼ぐ、というのは立派な対策です。

完璧な解決策が現れるまで何もしない、というのがいちばん良くない。

ベントナイトという、100年以上前から土木で使われてきた地味な粘土が、「永遠の化学物質」を座らせる役目を担おうとしている。この実証がどんな結果を出すのか、静かに注目しています。

※本記事は公開情報(環境省報道発表2026年8月6日、前田建設工業ニュースリリース、業界報道等/2026年9月時点)にもとづく解説記事です。実証事業の詳細な内容・条件は公表されていません。


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※この記事の「PFAS」は有機フッ素化合物のことです。医療で使われる「花粉-食物アレルギー症候群(PFAS)」とは別物です。

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