PFAS規制は製造業にどこまで影響するのか。2026年秋に確認したい4つのこと
「うちはPFASを使っていないから、関係ないですよ」
製造業の現場で、よく聞く言葉です。実際、主原料としてPFASを扱っていない会社は少なくありません。
ただし、そこで確認を終えるのは少し早いかもしれません。PFASは、潤滑油、離型剤、表面処理剤、シール材、泡消火薬剤などに、補助的な用途で含まれることがあります。自社で「使っている」という認識がなくても、購入品や設備を通じて関係している可能性はあります。
大切なのは、必要以上に怖がることではありません。規制や取引先の要求がどこから来るのかを整理し、期限のあるものから確認することです。
影響は「3つの入口」から来る

PFAS規制が製造業に及ぶ経路は、次の3つに分けると整理しやすくなります。
1. 作る・輸入する
化審法の第一種特定化学物質に指定されると、製造・輸入は原則として許可制となり、実務上は大きく制限されます。政令で指定された製品については、PFASを含む製品そのものの輸入も禁止対象になり得ます。
2. 使う・管理する
PFOS・PFOAは水質汚濁防止法の指定物質です。対象物質を製造・貯蔵・使用・処理する施設で事故が起き、公共用水域への排出や地下浸透による被害のおそれがある場合、応急措置と自治体への届出が必要です。
ここで注意したいのは、水道水の基準強化が、直ちに全事業所の排水規制を意味するわけではないことです。ただ、地域でPFASへの関心や調査が高まるほど、自社の使用実態や設備状況を説明できる状態にしておく重要性は増します。
3. 売る
中小企業にとって、最初の実務負担になりやすいのがこれです。取引先から届く「納入品にPFASは含まれますか」という調査票です。
法令上の直接規制ではなくても、完成品メーカーや輸出企業は、自社の調達先へ確認を求めます。一次、二次、三次のサプライヤーへと照会が遡るため、EUへ直接輸出していない企業にも影響が及びます。
直近で確認したい日付は2026年11月22日

2026年5月、化審法施行令の改正が閣議決定されました。長鎖ペルフルオロカルボン酸(LC-PFCA)とその塩、LC-PFCA関連物質は、2026年11月22日に第一種特定化学物質として指定・施行される予定です。
実務上、特に確認したいのは次の点です。
LC-PFCA等を含む潤滑油は、輸入禁止製品として指定される予定
LC-PFCA等を使用した消火器、消火薬剤、泡消火薬剤は、当分の間、取扱いに関する技術上の基準の対象
対象は物質名の単純な一覧ではなく、構造による定義を含む
つまり、「SDSにこの物質名がないから大丈夫」とは限りません。候補が見つかった場合は、原料・部材の供給元に、対象物質への該当性を照会する必要があります。
なお、PFHxS関連物質についても、2026年6月に第一種特定化学物質としての規制が施行されています。
水道水基準の強化は、事業所にも無関係ではない
2026年4月から、PFOSとPFOAの合算値50ng/L以下が水道水の水質基準になりました。
これは水道事業者に対する基準であり、製造業の排水に一律の規制値を設けるものではありません。それでも、取引先、自治体、地域住民から「自社では何を使い、どう管理しているか」を問われたとき、何も把握できていない状態は避けたいところです。
排水、地下水、泡消火設備、保管中の薬剤について、少なくとも「確認済み」「未確認」を分けておく。それだけでも、後からの対応は変わります。
EUの包括規制は「決定前」だが、調査は先に来る
EUでは、PFASを幅広く制限する提案について審査が進んでいます。2026年3月にECHAのリスク評価委員会(RAC)が最終意見を採択し、社会経済分析委員会(SEAC)は適用除外を伴う制限を支持する意見案を公表しました。SEACの最終意見は2026年末までに採択される見込みです。
現時点で、最終的な対象範囲や適用時期が確定したわけではありません。したがって、「2029年から一律に規制される」といった言い切りは避けるべきです。
一方、食品接触包装については、EUのPPWRにより、2026年8月12日からPFAS濃度制限が適用されています。食品包装材や関連部材をEU向けに供給する企業は、包括規制の結論を待たず、個別規制への対応が必要です。
「使っていない」と言い切る前に確認したいもの

PFASは、製品の主成分ではなく、性能を支える補助材として使われることがあります。
加工時の離型剤・潤滑油
撥水・撥油などの表面処理剤
シール材、パッキン、配管部材
泡消火設備と消火薬剤
めっき工程などで使われるミスト抑制剤
これらすべてにPFASが含まれるわけではありません。重要なのは、「使っていないはず」で終わらせず、購買品、設備、工程ごとに確認対象を切り分けることです。
まず着手する順番

大規模な調査から始める必要はありません。
1. 購入品とSDSを集める
化学品、表面処理剤、潤滑油、接着剤、洗浄剤などを一覧化し、SDSと仕様書を確認します。
2. 供給元へ照会する
候補品について、LC-PFCA関連物質やPFHxS関連物質への該当性、意図的添加の有無、代替予定を確認します。
3. 泡消火設備を確認する
薬剤名、設置時期、保管量、更新計画を把握します。設備担当と購買担当の情報が分かれている場合は、ここでつなぐことが重要です。
4. 排水・保管・事故対応を確認する
排水の実態、保管場所、漏えい時の初動手順を確認します。測定が必要かは、使用実態と工程を踏まえて専門家や分析機関に相談します。
5. 記録を残す
調査票への回答、供給元の回答、SDS、設備情報を一つの台帳に残します。次の照会に短時間で答えられることが、実務上の大きな価値になります。
「PFASフリー」は定義なしに言わない
確認が十分でない段階で、「当社製品はPFASフリーです」と表明するのは避けたほうが安全です。
PFASの範囲、意図的添加だけを見るのか、不純物や検出限界まで含めるのかで、答えは変わります。表明するなら、対象範囲と確認方法をセットにします。
たとえば、「当社が把握する範囲で、OECDのPFAS定義に該当する物質の意図的添加はありません」のように、根拠と範囲を明らかにするほうが実務的です。
まとめ
PFASへの影響は、製造・輸入、設備・事故管理、取引先からの調査という3方向から来ます。
直近では、2026年11月22日のLC-PFCA等に関する化審法規制を確認しつつ、SDS、供給元、泡消火設備、記録管理を順番に見直すことが現実的です。
PFASは、放置してよい話でも、何もかも直ちに置き換える話でもありません。期限と対象を確認し、説明できる状態をつくる。それが製造業にとっての最初の対応になります。
なお、事実関係は、LC-PFCA等の施行日・輸入禁止製品・消火薬剤の扱いを経済産業省の公表、水道水基準を厚生労働省資料、事故時措置を環境省Q&A、EUの審査状況をECHA、食品接触包装をEU官報のガイダンスで再確認しています。(2026.09.02現在)
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