掌編小説「弔いの煙」
もぐらは、墓を作って生きていた。
どこかで消える命あらば、直ぐ様駆けつけて長い鼻をぷんぷん振って弔意を示し、誰もいなくなってから仕事を始めた。
落ち葉の降り積もった、山の和毛のような場所を探して、お得意の穴掘りを手際よく進めていく。
落ち葉をどけた黒い地面はただでさえ冷たいというのに、もぐらが一掻き二掻きとするうちにその冷ややかさを増していく。
どんどんと膨れる冷たさの先に、死のような気配を感じた頃合いで、もぐらは手を止める。
地面は破壊され、墓穴が出来た。
創造を介さずして、空っぽの「物質」を作り上げた仕事に満足。
もぐらはセブンスターに火を点けながら、湿った紫煙と、まずいウイスキーのような土の匂いを一緒くたにして吸い込んだ。
そうしてずるずると引き摺ってきたものを穴へと転げ入れた。
歯型の残るそれは、非常に甘美な舌触りだった。
もぐらの埋もれた目にも月明かりははっきりと映る。
急かされるようにして後ろ足で土を掻き掻き、あっという間に穴は消え、地面と同化した。
掘る前と、何も変わらない姿になった。
その黒い胃の中にはあれが入っているのだが、知っているのはもぐらと月だけだ。
忘却の夜風がすべてをさらって、もぐらはもう忘れていたが。
ことの終わりをあれの親に報せると、感謝と、それよりも嬉しい対価を貰った。
これで二カートンは占めたものだ。
それから風俗へも行こう。
ご無沙汰だった温もりを、もぐらは蚯蚓より愛していた。
もぐらの鼻歌は、森を抜けて、ネオンに突き刺さった。
