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【Season2 第6回】食とグローバリズム。「生命・健康」と「帳簿の辻褄」を秤にかける愚~(1)

星涼し夏木立の仙台。

萩野町の質屋のルーペは今週より、「食とグローバリズム」の闇を覗いていきます。


■縁の蔵で眠る物と凍死寸前の農業


私の経営する質屋 縁(えにし)の蔵には、数年来大切に質預かりしている物がある。


それは、この様な農業用の資材だ。




当店は2020年7月28日に開業した。

半年位したある日、農業周辺のインフラ関係をお仕事とされる方から「これで資金を用立ててくれないか?」とご相談をいただいた。

普通の質屋は100%断る。

だが私は、店が開業したばかりという事もあったが、その方のお困りのご様子と、売値見込みや売り先の見通し、そして「こちらのお客様は信用できそうだ」という自分の直感を信じ、資材を預かり資金を用立てた。

結果的に、引き続きのご愛顧を頂戴し、今でもお付き合いは続いている。


この話は単純な美談などではない。

「資材すら預けないと資金が無い」との、日本の農業の景気が極限まで冷え込んでいる事の証だ。


事実、日本の稲作農家の現状は、平均年齢が70才、95%が赤字の兼業農家、後継者無し、今も廃業は加速中で、「あと数年で日本の米は消える」と専門家は警鐘を鳴らす。

※農林水産省の公式統計




数年前に、「令和のコメ騒動」と題し、スーパーのお米の価格の上げ下げに右往左往する報道があったが、もはや事はそんな次元の話ではない。

1970年から国が続けてきた減反政策と言う「供給能力を削る自傷行為」の結果、日本は命の源である米を作る能力自体を失いつつある。


その目的は、緊縮財政=「只の帳簿の数字の辻褄合わせ」

諸悪の根源である「税は財源」「日本の財政は破綻する」との、天動説の迷信がその発端だ。


農業予算は何十年も毎年2兆円前後のまま。

「作りすぎは無駄である」との認識の元、日本政府は国の礎である「食の供給能力」を自ら捨てて来た。

その結果、遂にお米の生産能力が、日本の総需要を割ってしまったのが「令和のコメ騒動」の原因なんだ。


そして、愚行は更に続く。

政府は以前より、JAを株式会社化する事を可能な法整備を継続して行ってきた。

根拠法施行規則

JAの法的な構成は、個々の農家さん達が肩を組む「組合」の扱いだ。

株式会社と違い買収が出来ないため、これが日本の農業や食、そして日本人の健康や命を守る安全保障兼供給能力として機能して来た。


だが、仮にJAが株式会社化されるとどうなるか?

それは、宮城県の水道事業コンセッション方式と同様に、気づけば仏ヴェオリア・ジェネッツ社がインフラに侵食していたが如く、外資による「日本の食」の買収が可能になってしまう。

「自由市場に任せれば競争力がついて農業は強くなる」との名目で、着々と「日本の食を外国に売り渡せる」下地を整えているのが今だ。


■食=安全保障。日本に自由化を迫る矛盾。


ところが、日本の農業に自由化を迫る欧米は、自らの農業をどう位置付けているのか?

実際の欧米は、食料を国の安全保障上の最重要防壁と位置づけ、巨額の国費(国債)を投入し農家を徹底的に保護している。

とかく農業は豊作過ぎても、不作過ぎても、構造上価格と継続性に不安定さが付きまとう。

それを国がお金を出し、供給能力を安定させる構造となっている。

以下に具体例を示す。

・アメリカ 「再生産可能方式(不足払い)」



アメリカ方式は一言で言えば、赤字分の補填、だ。

農作物の市場価格が政府の定めた基準価格を下回った場合、その差額を国が直接補填する「価格損失補償(PLC)」「農業リスク補償(ARC)」という強力なリスク補填型システムを構築している。

どれだけ市場価格が暴落しようとも、農家が確実に次の作付けを行える「再生産の原資」を国が100%保証する仕組みだ。

・EU 「基礎的所得支持(BISS)」


EU方式は一言で言えば、作付面積比例の所得保証だ。

生産量や価格とは完全に切り離し、農地面積(ヘクタール)に応じて一律で現金を給付する「デカップリング(生産と給付の切り離し)」の思想に基づく「基礎的所得支持(BISS)」を導入している。

受給要件として、環境保護や安全基準を満たす「クロス・コンプライアンス(相互遵守)」を課す代わりに、農家に対して事実上の「半公務員」並みの安定した所得を国が直接支給している。

これら欧米の盤石な防壁に対し、日本の現状は凄惨の一言に尽きる。

EUでは農家所得に占める補助金(財政出動)の割合が平均9割、アメリカのコメ・小麦等は6割だ。

これに対し、日本のコメ農家へは「主食用米を作るための補助」はなんと0だ。


自国の農産業は安全保障として全力で守り、日本へは金儲けのために自由化を迫る。

この矛盾が、本稿で一貫して主張している「今だけ、カネだけ、自分だけ」=グローバリズムの本質なんだ。


では、このまま何もせずに日本の食が外国に握られると、どうなってしまうのか?

次回、第6回(2)では、「JA株式会社化」と「郵政民営化」の類似性を元に、国の食を外資に明け渡した諸外国の末路を、質屋のルーペで暴きます。

※次回はコチラ!

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