【めっきAIニュース #6】中東物流リスク長期化|めっき薬品から塗装・樹脂まで「止まるリスク」を点検
今月の3分まとめ
今月の最大テーマは「価格」より「供給」です。
中東情勢の緊張が続き、ホルムズ海峡に加えて紅海・バブ・エル・マンデブ海峡でも物流リスクが継続しています。
日本では中東依存度の高い原油だけでなく、その先にある石油化学製品・樹脂・溶剤・塗料・物流費への波及を考える必要があります。
めっき会社が見るべき範囲は、もはや「めっき槽の中」だけではありません。
①【最重要】中東情勢――「原油不足」より物流長期化に警戒
日本の石油会社では、中東からの原油調達ルートを変更する動きが実際に出ています。
出光興産はサウジアラビア産原油について、紅海側の物流混乱を受けスエズ運河や喜望峰を経由する調達を開始。通常約20日の輸送が50~60日程度に延びるケースが報じられています。
現時点で日本の原油供給が直ちに止まる状況ではありません。しかし問題は、輸送距離・船舶確保・保険・在庫負担などのコストです。
めっき業界への影響
注意したいのは原油そのものより、その下流です。
めっき工程
脱脂剤/界面活性剤/湿潤剤/添加剤/消泡剤/溶剤
前工程
ABS・PPS等の樹脂/接着剤/マスキング材/治具関連材料
後工程
塗料/シンナー/プライマー/UV塗料/印刷インキ/接着剤
排水処理
高分子凝集剤/キレート処理剤/消泡剤など
原料メーカーが国内生産でも、原料を海外に依存していれば影響を受けます。
▶ 今月やること
「どこのメーカーから買っているか」だけでなく、その薬品の原料がどこから来ているかを薬品商社・メーカーへ確認しておきましょう。
② めっき後の「塗装」が意外な弱点になる
中東リスクで見落とされやすいのが、めっき後工程です。
装飾めっきでは、Crめっき後にクリア塗装、カラー塗装、印刷、接着、組立などが続く製品も少なくありません。
塗料やシンナーには石油化学由来原料が多く、物流・原料価格の影響を受けやすい領域です。
さらに怖いのは、単なる値上げではなく材料変更による品質変化です。
塗料・シンナー・プライマーの銘柄変更によって、
密着不良/ハジキ/白化/乾燥不良/色差
などが発生すれば、めっき自体が正常でも完成品は不良になります。
▶ 現場への提案
代替材料を「同等品だから大丈夫」で流さず、
外観 → 密着 → 耐熱 → ヒートサイクル
まで小ロットで確認するルールを作っておくべきです。
③ 銅価格――国内建値2,300円台、依然として高水準
8月の国内銅建値は大きく動きました。
8月3日 2,280円/kg
↓
8月17日 2,420円/kg
↓
8月21日 2,340円/kg
短期間で上下していますが、絶対水準は依然として高い状態です。
めっき業界への影響
特に厚付け銅を使用する樹脂めっきでは影響が直接的です。
Cu 20~30μmなどの仕様では、加工賃の中に占める金属材料費を改めて確認する必要があります。
▶ 今月やること
「kg単価で買っている銅を、㎡当たり何円使っているか」
まで原価を落として確認してください。
金属建値が動いた際に価格改定を説明しやすくなります。
④ 六価クロム――「すぐ全面禁止」ではない。しかし準備は必要
欧州では六価クロムを巡る規制が続いています。
一方で2026年にも、三酸化クロムについて樹脂めっきのエッチングや装飾クロム用途への認可事例が出ています。
つまり、
「六価クロムは明日から使えなくなる」
という単純な状況ではありません。
しかし、自動車・衛生設備・家具などのサプライチェーンでは代替技術への要求が続くと考えるべきです。
めっき会社への提案
六価Crを現在使用していても、
六価Cr → 三価Cr
クロム酸エッチング → Crフリーエッチング
について「量産採用するか」ではなく、まず自社で何ができて何ができないのかを整理しておくことが重要です。
顧客から突然「六価クロムフリーにできますか?」と聞かれてから調べるのでは遅くなります。
⑤ 半導体関連は好調――高機能表面処理には追い風
8月の日本企業の景況感では、半導体関連需要の強さが製造業を押し上げています。
化学、金属・機械などでも景況感改善が確認されています。
一方、自動車関連は一様に強いわけではありません。
めっき業界への示唆
今後、中小めっき企業でも注目したいのは、
PPS/LCP/高耐熱樹脂/電子部品/センサー/パワー半導体周辺部品
などの高機能領域です。
大量生産だけを追うのではなく、
「難しい素材を少量でも安定して処理できる」
技術力が営業上の武器になります。
今月の「工場長チェック」
主力めっき薬品の在庫日数を確認
薬品メーカーに中東由来原料の有無を確認
塗料・シンナー・プライマーの供給状況を確認
塗装・印刷など協力会社の材料在庫も確認
代替薬品・代替塗料使用時の評価方法を決める
銅・ニッケル等の価格転嫁条件を再確認
顧客から六価Crフリーを求められた場合の回答を準備
編集長コメント
今月、私が一番気にしているのは**「材料価格がいくら上がるか」ではありません。**
**「いつも使っている材料が、いつも通り入ってくるのか」**です。
中東情勢が長期化すると、最初に原油、次に物流費、その後に石油化学原料、樹脂、薬品、塗料へと影響が広がる可能性があります。
そして、めっき会社にとって怖いのは、めっき薬品が届かないことだけではありません。
めっきが完成しているのに、塗料がなくて出荷できない。
そんな事態でも売上は止まります。
2026年後半は、めっき槽だけを見るのではなく、成形 → めっき → 塗装 → 印刷 → 組立 → 出荷まで一本のサプライチェーンとして見ることが重要になりそうです。
今月のキーワードは「値上げ対策」から「止めない対策」へ。
参考情報
・中東情勢・ホルムズ海峡および紅海物流動向
・国内非鉄金属建値
・欧州/英国REACH関連公表資料
・国内製造業・半導体関連景況動向
※本記事は2026年8月24日時点の公開情報を基に編集しています。市場価格、国際情勢、規制内容等は変更される可能性があります。個別の取引・設備投資・法令対応については、最新情報を確認のうえご判断ください。
#めっきAIニュース #めっき #メッキ #表面処理 #電気めっき #樹脂めっき #装飾めっき #めっき業界 #製造業 #中小製造業 #ものづくり #中東情勢 #サプライチェーン #原材料高騰 #銅価格 #ニッケル #六価クロム #REACH #塗装 #工場経営
