DX推進指標が2026年2月に改訂されデジタルガバナンス・コード3.0の5つの柱へ構成を再編し24時間365日のオンライン提出受付を開始
経済産業省および独立行政法人情報処理推進機構(IPA)は、企業が自社のデジタルトランスフォーメーション(DX)の取組状況や課題を自ら評価・把握するための「DX推進指標」に関するガイダンス資料を公表した。本指標は2019年7月に取りまとめられたものであるが、技術の進展やビジネス環境の変化に対応するため見直しが行われ、2025年1月の検討会立ち上げを経て2026年2月に本格的な改訂が実施された。
改訂された「DX推進指標」では、経営指針である「デジタルガバナンス・コード3.0」に対応し、従来の2区分から5つの柱に沿った設問体系へと再構築された。経営者や事業部門、DX部門などの関係者が自社の現状や目指すべき姿とのギャップについて認識を共有し、必要なアクションの検討につなげる機会を提供することを目的としている。
自己診断結果はIPA事務局へオンラインで提出可能であり、提出企業には全社や業界内での位置づけを把握できるベンチマークレポートが無償で提供される。企業の規模や業種を問わず全事業者が対象となっており、提出手続きは24時間365日体制で受け付けられている。また、条件を満たす中小企業者に対しては日本政策金融公庫による融資利率の引き下げといった支援施策も用意されている。
2019年7月の初回取りまとめから2026年2月改訂までの経緯と目的
我が国における企業DXを巡る環境は、技術の急速な進展や施策の変遷に伴い大きく変化してきた。経済産業省とIPAは、変化する環境や施策と整合性を取る形で指標のアップデートを実施した。背景記述には次のように示されている。
経済産業省は、2019年7月に、経営者や社内の関係者がDXの推進に向けた現状や課題に対する認識を共有し、アクションにつなげるための気付きの機会を提供する自己診断指標として、「DX推進指標」を取りまとめた。
さらに、デジタルガバナンス・コードの改訂や各種施策の展開を踏まえ、2025年1月に検討会を立ち上げて検討を重ねた結果、次のように指標の改訂が行われた。
デジタルガバナンス・コード3.0に基づき、設問の追加や内容の見直しを行い、DX経営の推進に必要となる事項・内容を充実させ、2026年2月にDX推進指標の改訂を行った。
DXを推進する上では、目的が明確でないまま技術起点で議論が始まってしまうことや、変革の必要性が共有されず理解が得られないといった課題が存在する。これらの課題を克服し、データとデジタル技術を活用した価値創造経営を実現するための共通言語として本指標が位置付けられている。
デジタルガバナンス・コード3.0の5つの柱に基づく設問体系と新設項目
改訂前のDX推進指標は「経営のあり方、仕組みに関する指標」と「ITシステムの構築に関する指標」で構成されていたが、改訂版ではデジタルガバナンス・コード3.0の5つの柱(1. 経営ビジョン・ビジネスモデルの策定、2. DX戦略の策定、3. DX戦略の推進、4. 成果指標の設定・DX戦略の見直し、5. ステークホルダーとの対話)に対応する形へと再編された。
設問の中身としては、リスキリング制度に関する問の追加やDX人材の量の明確化、サイバーセキュリティリスクの認識に関する問、ステークホルダーへの情報発信に関する問などが新設・強化されている。
本資料には、設問の趣旨を理解するための取組事例として多様な企業の規模やデータが紹介されている。例えば、情報・通信業のソフトバンク株式会社(資本金:244,355百万円、従業員数(連結):58,432名、2026年3月末時点)では、2030年に向けたビジョンと中期経営計画のもとでAIインフラへの戦略投資を推進している。また、大日本印刷株式会社(資本金:114,464百万円、従業員数(連結):36,360名)や電気機器メーカーの富士通株式会社(資本金:325,600百万円、従業員数(連結):99,000名)、日本電気株式会社(資本金:427,800百万円、従業員数(連結):101,800名)などの大企業における組織体制やAI実践体制の構築事例が掲載されている。
成熟度レベルの評価基準と最高段階レベル5における判断根拠の必須化
定性指標のうち「望ましい方向性」に基づく設問では、企業の取り組み状況を「レベル0」から「レベル5」までの6段階の成熟度レベルで評価する。全社方針の整備状況や、一部部門での散発的実施なのか全社的・部門横断的な実施なのかといった観点から総合的に判断する仕組みである。
最高段階であるレベル5は全設問共通で「レベル4を満たした上で、個社の取組を超え、社会価値を創出している」状態と定義されている。自社内にとどまらず高度なリーダーシップを発揮して多様なステークホルダーを巻き込んだり、業界や地域全体へ波及する先進モデルを創出したりすることが求められる。レベル5の選択に関しては、次のように留意事項が明記されている。
自社の取組が社会的な価値創出に繋がっていると明確に判断できない場合は、レベル5を選択せずに、レベル4以下を選択することを推奨いたします。
なお、自己診断においてレベル5を選択した場合には、その判断根拠の入力が必須となる。客観的な自己分析を通じて自社の現在地を正しく捉えることが推奨されている。
24時間365日のオンライン提出と中小企業向け金利優遇等の活用メリット
DX推進指標の診断結果をIPA事務局へ提出することにより、企業は様々な実務上のメリットを享受することができる。提出に関する基本的な枠組みについて、資料内では次のように説明されている。
企業の規模や業種を問わず、全ての事業者が対象
24時間365日オンラインで提出が可能
提出されたデータはIPAで集計・分析され、自社の経年変化や全国・業界内での位置づけ、先行企業との比較が可能な「ベンチマークレポート」および「分析レポート」が無償で提供される。
また、行政・金融上のインセンティブも整備されている。DX推進指標の提出は「DX認定制度」の認定基準を満たすための確認書類として活用できるほか、提出を行った中小企業者に対しては、日本政策金融公庫の融資制度において基準利率より0.2%低い利率が適用される。資料内では、中堅・中小企業の取組事例として三行合成樹脂株式会社(従業員数:110名)や旭光電機株式会社(従業員数:234名)、株式会社セブン銀行(従業員数:715名)などの事例も取り上げられており、小規模事業者から大企業まで幅広い企業において指標の活用が期待されている。
読者が確認できる形にまとめる
制度の沿革 — 2019年7月に初期版が取りまとめられ、2025年1月の検討会を経て2026年2月にDGC3.0に対応した改訂が実施された。
設問の体系 — デジタルガバナンス・コード3.0の5つの柱に対応し、定性指標(認定基準・望ましい方向性)と定量指標で構成されている。
成熟度評価 — レベル0からレベル5までの段階で自社の状況を評価し、最上位のレベル5を選択する際は具体理由の記入が義務付けられる。
提出の利便 — 全事業者を対象として24時間365日オンラインで提出を受け付けており、無償でベンチマークレポートが提供される。
インセンティブ — IPAへの提出によりDX認定制度の申請に活用できるほか、日本政策金融公庫の融資において0.2%の低利適用を受けられる。
この記事で確かめられなかったこと
本資料にはDX推進指標の改訂背景や全体構造、成熟度レベルの判定基準、提出手続き、および一部参照事例の資本金や従業員数などの数値が明記されているが、個別の設問33項目すべての具体的な設問本文テキストや詳細一覧は示されていない。また、これまでに自己診断結果を提出した企業の平均成熟度レベルや業種ごとの到達度統計データについては記載されておらず、IPAが発行する個別の分析レポートや関連公式Webサイトで別途確認する必要がある。
出典一覧
プレス発表 「DX推進指標自己診断フォーマット」のWebフォーム化・ガイダンス資料を公開 IPA、2026年8月3日
https://www.ipa.go.jp/digital/dx-suishin/rcu1hd000001a4xh-att/dx-suishin-guidance.pdf
