結婚相談所がみかん収穫の人手確保に取り組むわけ。14年続けて分かった人と地域のご縁の力【愛媛お手伝いプロジェクトの歴史①】
「愛媛お手伝いプロジェクト」をご存じでしょうか?
会社員、公務員、主婦、学生、シニアなど、さまざまな地域の方々が、人手を必要としている農家さんの元へ休日などに1日単位でお手伝いに駆けつける『有償ボランティア』の取り組みです。

お手伝いプロジェクトの立ち上げ人(北川)である私は普段、地元・愛媛で結婚相談所の代表をしています。 一見すると「結婚相談所」と「農業のボランティア」は、全く関係がないように思われるかもしれません。しかし、私の中では「人と人をご縁でつなぐ」という点で、完全に同じ想いからスタートしています。
今回は、2012年に立ち上がったこのプロジェクトが、数々の試練を乗り越えながらどのように地域に根付いてきたのか、そのストーリーをご紹介します。
きっかけは「地域の後継者の結婚をサポートしたい」という想い
2012年、私は「愛媛の一次産業の後継者が結婚できるようにサポートすることこそが、地元の結婚相談所の役割ではないか」と考えていました。
そんな折、八幡浜でのワークショップで「産地と消費者の距離を縮めたい!」と熱く活動する若手みかん農家グループと出会います。
松山などの都市部に住む人が参加したくなり、1シーズン限りで終わらず毎年継続できる仕組みはないか……。試行錯誤する中でふと思い出したのは、昔、夫婦で叔父の伊予柑収穫を手伝ったときのことでした。

帰り際、叔父夫婦が「ありがとう。これでお茶でも飲んで!」と5,000円を手渡してくれたのです。びっくりすると同時に、「自分も誰かの役に立てたんだ」と胸が温かくなったことを今でも鮮明に覚えています。
「これだ」と思いました。
八幡浜は少子高齢化が進み、特に収穫期の人手不足が深刻。一方で、松山市などの都市部には「休日に新しい挑戦がしたい」「人と交流したい」「社会貢献したい」と思っている人がたくさんいる。
農家さんからの感謝のお礼が地域で使えるクーポンやポイントになり、人・お金・モノが回る仕組みを作れば、絶対に継続できる。こうして「愛媛お手伝いプロジェクト」の構想が動き出しました。

「猫の手も借りたいけど…」厳しい一言から始まった意識改革
意気揚々とスタートしたプロジェクトでしたが、2012年冬のボランティアモニター体験で、農家さんから厳しいご意見をいただきました。
「猫の手も借りたい忙しい時に、ハサミの使い方から指導しなければならず、茎の切り方も守ってもらえない。これでは報酬を出せる作業ぶりではないよ」
ハッとさせられました。農家さんが出荷する大切な「商品」を扱う以上、気持ちだけでは成り立ちません。
そこで実行委員会では、JAの協力のもと初心者向けの「作業研修会」を必須にしました。ハサミの使い方や注意点を事前につたえ、ボランティアと農家さんの意識統一を徹底したのです。
翌年秋、第1期がスタート。「人手がなくて困っていた。孫が継いでくれるまで、このプロジェクトがあれば農家を続けられそうだ」という感謝の声が届き、リピーターとなるボランティアも一気に増えていきました。

西日本豪雨、コロナ禍…試練のたびに強くなった「人の善意」
プロジェクトの歩みは、決して平坦ではありませんでした。
2018年 西日本豪雨災害:被害が大きかった宇和島市から依頼を受け「宇和島お手伝いプロジェクト協議会」を発足。復興のため多くのボランティアが駆けつけました。
2020年 コロナ禍:県外からのアルバイトが見込めなくなったため、「愛媛お手伝いプロジェクト本部」を創設。地元メディアの取材も重なり、年間1,459人役という過去最高の参加実績を記録しました。
「急にバイトが来られなくなった」「家族が怪我をした」といった農家さんからの悲鳴にメルマガを発信すると、その日のうちに「行けます!」と次々に手が挙がる。
このプロジェクトは、「誰かの役に立ちたい」という参加者の純粋で温かい善意によって支えられているのだと、何度も胸が熱くなりました。

条件だけでなく「安心感と信頼関係」をつなぐ
結婚相談所でも、大切なのは条件だけではありません。「この人となら一緒に歩んでいけそう」という安心感や信頼関係が生まれるお手伝いをすることが、私の仕事です。
農業ボランティアもまったく同じでした。
「助けてほしい」農家さんと、「役に立ちたい・農業を体験したい」参加者。その間に入り、人と人をつなぐ。何度も顔を合わせるうちに「今年も来てくれたね」「またあの農家さんのところに行きたい」と信頼が深まり、それが地域の大きな力になっていきます。
実際、この活動をきっかけに農業に興味を持ち、地域とのつながりから愛媛に移住・就農した若い世代も生まれています。一人の小さな一歩が、地域の未来を変える瞬間に、私たちは何度も立ち会ってきました。

「愛媛お手伝いプロジェクト」は、単なる人手不足を補うための労働力マッチングではありません。 人が地域と出会い、人と人が繋がり、地域の未来を育てるプロジェクトです。
後編では、この温かいボランティア活動を10年以上持続させている有償の仕組みや、デジタル化(アプリ導入)における壁と工夫について詳しくお伝えします!
【イベントのお知らせ】
9/9と9/12に松山市のEN:BASEにて『愛媛のみかん農業をみんなで考える 農家×ボランティア共創交流会』と題したイベントを開催します。
みかん収穫期が直前にせまったタイミングということもあり、ボランティアの参加方法の説明や参加者での交流を行います。
下記ページの参加フォームからお申し込みのうえ、お気軽にご参加ください!

