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小谷落城 ―― 滅びの美学と、生き残る者の宿命【豊臣兄弟!第17話】

「戦国時代」と聞くと、
私たちはつい英雄たちの勝利に目を向けてしまいます。

しかし歴史の大半は、
勝者ではなく、敗者の物語でできています。

『豊臣兄弟!』第17話「小谷落城」は、
まさにそんな“敗者の物語”でした。



■ 信長最大の危機は、なぜ終わったのか

前回、比叡山焼き討ちを断行した織田信長。

しかし、その裏では信長包囲網が完成しつつありました。

東からは武田信玄。

西では足利義昭が挙兵。

北には浅井・朝倉。

もし武田軍が京へ進軍していたら、
信長は滅んでいたかもしれません。

ところが――

武田信玄が突然撤退。

ドラマではあっさり描かれましたが、
史実でも理由は完全には分かっていません。

病死説。

肺結核説。

胃がん説。

脳卒中説。

さらには暗殺説まであります。

いずれにせよ、

「天下に最も近かった男」が突然姿を消した。

それが戦国史を大きく変えました。



■ 足利義昭、将軍の終焉

信玄を後ろ盾として挙兵した室町幕府十五代将軍・足利義昭。

しかし、信玄亡きあと、
彼に味方する大名は急速に減っていきます。

義昭は決して愚かな将軍ではありません。

※全国に点在する八幡宮は、いわゆる「武神」
バトルの神様であり、津の千歳山に鎮座していた。八幡宮も、足利将軍家が建立したと言われています(現在は結城神社の杜へと移遷)

外交能力に優れ、
全国の大名へ書状を送り、
「反信長連合」を築こうとしました。

しかし問題は、

彼が求めたのは

「将軍中心の古い秩序」

であり、

信長が作ろうとしたのは

「実力で動く新しい時代」

だったこと。

つまり、

これは単なる権力争いではなく、

時代と時代の衝突

だったのです。



■ 小谷城――戦国一美しい悲劇

そして信長は、
最後の敵となった浅井長政へ兵を向けます。

舞台は近江国、小谷城。

天然の要害。

堅牢な山城。

しかし兵糧は尽き、
援軍も来ない。

もはや敗北は避けられません。

それでも長政は降伏しない。

なぜか。

それは、

彼が

「勝つために戦っていたのではなく、
武士としての誇りを守るために戦っていた」

からです。

現代人から見れば、

「生き残ればいいじゃないか」

と思うかもしれません。

しかし戦国武将にとって、

生き恥をさらすことは、

死より重いことでした。



■ 浅井長政は、本当に愚将だったのか?

一般には、

「信長を裏切った男」

として語られる浅井長政。

しかし、そう単純ではありません。

長政は朝倉家と代々盟約を結んでいました。

一方で、
信長とは妹・お市を迎え、
姻戚関係を結んでいます。

つまり、

朝倉を取れば信長を裏切る。

信長を取れば朝倉を裏切る。

どちらを選んでも、
誰かを裏切らなければならなかった。

長政は、

義理を選び、

滅びを選んだ。



■ お市と三姉妹

小谷城落城に際し、

お市は娘たち――

茶々





を連れて脱出します。

この三人が後の歴史を大きく変えることになります。

茶々は後の淀殿。

豊臣秀頼の母。

初は京極家へ嫁ぎ、

江は二代将軍徳川秀忠の正室となり、

三代将軍家光の母となります。

つまり、

小谷城で滅んだ浅井家の血は、

豊臣と徳川、

両方の天下に受け継がれていくのです。

滅びたはずの家が、

歴史の中心に生き続ける。

なんとも皮肉で、

そして美しい話です。

だからこそ、

四百五十年後の今でも、

私たちは浅井の名を覚えているのでしょう。



■ 「生き残る」という罪

今回、印象的だったのは、

小一郎(後の秀長)と藤吉郎(後の秀吉)の姿です。

彼らは勝者側。

しかし、

勝利の喜びなどありません。

昨日まで笑い合っていた相手が、

今日は敵となり、

明日には死んでいく。

戦国とは、

敵を倒す物語ではなく、

知っている誰かの死を、
何度も見届ける時代

だったのでしょう。

小谷城の炎を見つめる兄弟の顔には、

勝者の笑顔ではなく、

生き残ってしまった者の苦しみがありました。



■ 秩序とは、まだ存在しない時代

この頃の日本には、

今のような全国共通の法律も、

警察も、

行政もありません。

あるのは、

義理。

野心。

友情。

裏切り。

そして、

人の心だけ。

そんな不安定な世界だからこそ、

人は信念に命を賭け、

家族のために死に、

友のために涙を流した。

現代から見れば非合理。

しかし、

だからこそ戦国時代は、

四百年以上経った今でも、

私たちの心を揺さぶるのでしょう。



小谷城は落ちました。

浅井長政は滅びました。

しかし、

滅びとは終わりではありません。

茶々、初、江。

そして秀吉と秀長。

彼らの人生はここからさらに大きく動き出します。

第17話「小谷落城」は、

ひとつの家の終焉であり、

豊臣兄弟が天下へ近づく、

新たな始まりの物語でもあったのです。

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