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【26-27ラ・リーガ第4節:ベティス戦雑感】開きかけたパンドラの箱。トリデンテの沈黙と、試されるモウ・マドリー

こんにちは、おせんどうです。

アウェイでのラ・リーガ第4節、ベティス戦。 試合終了の笛が鳴った瞬間、思わずタメ息が漏れました。

0-1での敗戦。開幕3試合で抱えていた課題が、力のあるチームを相手にアウェイという厳しい環境で、明確に顕在化してしまった。負けに値する内容ではなかっただけに悔いが残る、そんな90分間でした。

両チームスタメン。前節から中3日でむかえた試合で、入れ替えはギュレル、コナテ、ダンフリースの3人。

【試合結果】
レアル・ベティス 1 - 0 レアル・マドリ

【得点者】
レアル・ベティス:
 トロイ・パロット 81'

【選手交代(マドリー)】
63' OUT:カマビンガ / IN:ベルナルド・シウバ
64' OUT:ダンフリース、ギュレル / IN:トレント、ディオマンデ
81' OUT:バルベルデ / IN:エスピ
87' OUT:ククレジャ / IN:カレーラス

見えていたポジティブな兆しと、ビニシウスの変化

最終的に無得点での敗戦になってしまったとはいえ、前半からすべてがダメだったわけではありません。両者共にボールを握りたい試合展開の中で、マドリーが保持しゴールに迫る、ポジティブな要素も見て取れました。

この日のビルドアップの中心はカマビンガ。相手が最終ラインまでプレッシャーをかけてこなかったこともあり、うまく間に入ってボールを引き取り、無難に散らす動きが効いていました。彼と最終ラインでボールを持てるため、右サイドのダンフリースが高い位置を取る時間を作れ、中央左や、最終ラインから一気にロングボールで局面打開を狙う形も作れていました。

そんなマドリーの右、ベティスにとっての左サイドを守るのは、昨シーズンまでマドリーの仲間だったフラン・ガルシア。小回りの効く走力自慢のSBですが、右サイドの局地戦であればダンフリースに圧倒的な高さの利があります。

ベティスが比較的小柄でテクニカルなチームである一方、マドリーは190cm超えの2CB、それに継ぐ高さを持つダンフリースとベリンガムと、エリア内でターゲットになれる選手が多数。実際、コーナーキックを始めとするセットプレーには期待感がありました。残念ながら相手GKバジェスの反応が素晴らしく、最後までこじ開けられませんでしたが、、

また、モウ・マドリーで色んな意味で注目を集めるビニシウスですが、開幕から3試合を経て、少しずつですが着実に攻撃面で周りとの連携が増えてきています。個人的に目を引いたのが、43分のシーン。ビニシウスが抜け出し、少し角度が無いながらも十分ゴールに狙える位置で、自らシュートを打つのではなくエンバペへのパスを選択しました。残念ながら得点を奪うことはできませんでしたが、昨シーズンの彼との違いが顕著に現れた場面でした。

今シーズンの彼は「味方を使おう」「連携しよう」という意識が明らかに高い。どのような伝え方をしているか詳細は不明ですが、モウリーニョの指導の効果と言っていいでしょう。 本来のビニシウスのウリ=相手にとって恐さでもある「合理性を無視して単独でこじ開ける」個人能力とのバランスは今後見守る必要がありますが、周りを使う選択肢が結果に結びつけば、相手は常に2人がかりで対応することが難しくなり、結果的にビニシウス個人の突破も活きてくるはずです。

さて、一方のベティスですが、先に挙げたフラン・ガルシアに加え、イスコ、アントニー、フォルナルス、ベジェリン、ベルナル、、、名のある選手も多く、ペジェグリーニ体制で昨シーズンはリーグ5位。21年ぶりとなるCL出場も勝ち取っており、確かな実力を備えたチームです。特に狭い局面でもボールをしっかり繋ぐテクニックはCLでも通用するレベルで、マドリーが例によって前からハメにいかない(いけない)こともあり、こちらもボールを持つ時間をしっかりと作れていました。

それでも、最後のところではコナテ&ハウセンの安定感のある守備でチャンスを作らせず、ベティスに決定機を許さず前半を折り返しています。

ベティスのペースに傾く試合と、後手に回った采配

しかし後半、徐々に試合のペースはベティスへと傾いていきます。中3日、移動のあるアウェイ、クーリングブレイクが必要な暑さ。足が止まる条件は揃っており、早々に試合がオープンな展開になってきます。

本来であればボールを握り、失っても即時奪回してマイボールの時間を長くすることで体力消耗を抑えたいところ。しかし、ベティスからなかなかボールを奪えません。マドリディスタには懐かしきイスコは細かなステップでパスコースに顔を出し、歳を重ねてさらに賢く安定感のあるプレーを見せていました。活躍は嬉しいが憎らしい。。さらに、彼が交代した後でもマドリーの良さを消すためにのらりくらりとボールを保持しつつ、フォルナルスを中心に右サイドの崩して決定機をつくるなど、チーム全体として焦らず、じわじわとマドリーのペースを削いでいった印象です。

ゴールが生まれず、ファウルとカードが増えて嫌なムードが漂い始めた60分過ぎ。得点がほしいマドリーはベルナルド、トレント、ディオマンデを投入する3枚替えを敢行します。相手にとって脅威になっていたギュレル&ダンフリースの右のセットを変えるのは思い切った判断ですが、カードを貰っていることもありやむなし。それでも、今日は試合を通じてセットプレーが相手の脅威になっていたので、「セットプレーで点を取るためにプレースキッカーはマスト(ギュレル→トレント)」ということでしょう。現在のマドリーは右SBと右SHでユニットを組んでいる形のため、トレントに加え、サイドで勝負できるディオマンデが投入され、打開を図ります。

しかし75分のクーリングブレイク明け、分があるはずだったセットプレーから痛恨の失点を喫してしまいます。デオッサの強烈なヘッドをクルトワがなんとか弾いたものの、こぼれ球をトロイ・パロットに詰められました。 耐えるべき時間帯に、相手にしっかりボールを保持され、自分たちのペースを崩された末の失点。交代で出場したデオッサとパロットが絡んだゴールとなり、ここは完全にベティスにしてやられた、と言わざるを得ません。

幻のゴラッソ、沈黙するエース。そして開いた「パンドラの箱」

失点後、マドリーはエスピを投入してパワープレーに出ます。そこで生まれたエスピの強烈なバイシクルシュート(幻のゴラッソ)は、オフサイド判定になったとはいえ、彼の序列を上げてもいいと思わせるほどの迫力がありました。

そして90分、ビニシウスがエリア内をえぐって見事にPKを誘発。ここでは自分で仕掛ける判断が冴え渡り、彼の質の高さを改めて証明しました。 しかし……キッカーを託されたエンバペが、まさかのPK失敗。エースの痛恨の沈黙。

この瞬間の落胆は計り知れませんが、それ以上に私が感じたのは、今後のチームマネジメントに対する強い危機感です。

この試合、エンバペは明らかにシュートの感触が悪く、ベリンガムも疲労から後半は消えがちでした。モウリーニョも当然見抜いていたはずですし、何より、この試合ではセットプレーでの高さ勝負が最も合理的であることも理解していたはず。

私としては、W杯の日本対ブラジル戦で、相手のアンチェロッティ監督が後半早々に動いたように、今日のマドリーも60分の時点でエスピを投入するような思い切った采配ができたはずです(結果論ではありますが)。 なぜ動けなかったのか? それは現在のチームにおける「ビッグ3(エンバペ、ビニシウス、ベリンガム)」の序列と、彼らを下げることによるハレーションを監督が危惧しているからに他ならないと考えています。

モウリーニョは「走らない選手はバッサリ切る」と言われていますし、実際そういう判断を下す局面が今後やってくるとは思います。しかし、そのカードは諸刃の剣で、彼も無駄な強権発動でマドリーでの監督寿命を縮めたくはないはず。しかし、今回のようにアウェイで劣勢の状況下で「誰を先に交代させるか」は、非常にセンシティブで、チーム内の序列を示す強烈なメッセージになってしまいます。もしエンバペがPKを決めていれば全て丸く収まったかもしれませんが、この失敗により、スター選手間の序列問題というパンドラの箱が再び開く可能性があります。

おわりに:いきなり弱くなったわけではない。焦らず見守る覚悟を

マドリーというクラブは、勝利によってあらゆる問題を覆い隠してきました。だからこそ、内容にポジティブな面があっても、負ければ一気に周辺が騒がしくなります。

ただ、ここでパニックになる必要はありません。高さを活かしてゴールに迫るシーンは作れていましたし、中3日という条件や、まだ前からのプレスが仕込めていない現状を考えれば、多少ベティスにボールを持たれようとミドルブロックで応戦した判断自体は間違っていなかったと思います。華々しい開幕3連勝から状況は一転してしまったわけですが、チームがいきなり弱くなったわけでも、戦術が完全に崩壊したわけでもないのです。

ただ、想定よりも早く「モウ・マドリーの真価と覚悟」が試される時期がやってきた、ということでしょう。ここからはすぐにCLも始まります。 新体制のチームがこのデリケートな問題をどう乗り越え、ひとつの「チーム」として完成していくのか。一喜一憂しすぎず、焦らずに見守りたいと思います。

Hala Madrid.

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