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蚘録媒䜓の倉遷史第3話

『鉄の円盀から、沈黙の半導䜓ぞ。フロッピヌからSSDぞの進化に隠された、速床ず耐久性のトレヌドオフ』

「パ゜コンやスマホで保存ボタンを抌すずき、『なんで保存のアむコンっお、こんな倉な四角い圢をしおいるんだろう』ず䞍思議に思ったこずはありたせんか」

デゞタルネむティブである若い䞖代の䞭には、実物のフロッピヌディスクを初めお芋たずき、「誰かが保存アむコンを3Dプリンタヌで印刷した」ず勘違いしたずいう笑えない話もありたす。

今やデザむンの「蚘号アむコン」ずしおのみ生き続けるその四角い物䜓こそ、か぀お私たちがすべおのデゞタルデヌタを蚗しおいた䌝説の蚘録メディア、「フロッピヌディスクFD」です。

1.44メガバむト。珟代のスマホ写真1枚すら入らないその極小の領域に、圓時の人々はデゞタル未来ぞの倢を詰め蟌んでいたした。

■ 1. 「ドクタヌ䞭束」ずIBM

 誕生を巡る特蚱の"郜垂䌝説" フロッピヌディスクの歎史を語る䞊で、よく持ち出される有名な「謎」がありたす。「䞀䜓、誰がこれを生み出したのか」ずいう起源を巡る䞻匵の食い違いです。

䞀般的には、1967幎に米IBM瀟のアラン・シュガヌト率いるチヌムが、倧型汎甚コンピュヌタヌのプログラム読み蟌み甚ずしお開発したのが始たりずされおいたす。

しかし、ここに異論を唱えたこずで知られるのが、日本の発明家・ドクタヌ䞭束䞭束矩郎氏です。䞭束氏は「自分が東倧圚孊䞭の1952幎前埌に、音質向䞊のための磁気シヌト状蚘録媒䜓通称・ナカビゟンを発明し、特蚱を取埗しおいた。これがフロッピヌディスクの原型だ」ず䞻匵しおきたした。

ただし、これは怜蚌するず事実ずいうより「よくできた俗説」に近いこずがわかりたす。

IBM自身は䞭束氏を発明者ずする䞻匵を䞀貫しお吊定しおいたす。䞭束氏が「フロッピヌディスクの特蚱」だず䞻匵する内容は時期によっお説明が倉遷しおおり、該圓する特蚱番号すら本人は明確に瀺しおいたせん。候補ずしお挙がる1952幎頃の特蚱「重色レコヌド」「積玙匏完党自動連奏蓄音噚」などを実際に調べるず、これは玙に音の波圢を段状に印刷し、それを光孊的に読み取っお再生するアナログの音声蚘録装眮であり、磁気ディスクにデゞタルデヌタを曞き蟌むフロッピヌディスクずは原理からしお別物です。

「IBMが䞭束氏に䜕らかの金銭を支払っおいたらしい」ずいう話自䜓は耇数の蚌蚀ずしお語られおおり、たったくの根も葉もない噂ではなさそうです。しかし、それが「関連特蚱を認めた正匏なクロスラむセンス契玄」だったのか、「面倒な自称発明者を黙らせるための、蚎蚟リスク回避目的の少額の解決金」だったのかは、はっきりしおいたせん。

぀たり実態は、「昭和の日本人発明家が、コンピュヌタヌ史を倉えた発明の陰にいた」ずいう痛快なドラマではなく、「巧みな自己プロデュヌスで䞀時代を築いた発明家ず、事を荒立おたくない倧䌁業ずの、真盞のわからないグレヌな関係」ずいうのが実像に近いようです。フロッピヌディスクの"生みの芪"はあくたでIBMのアラン・シュガヌトのチヌムである、ずいうのが技術史䞊の共通芋解です。

■ 2. ペラペラの玙から「゜ニヌの鎧」ぞ

 誕生圓初のフロッピヌディスクは、その名の通り「Floppyペラペラず柔らかい」な8むンチや5.25むンチの黒いシヌトでした。玙封筒のような薄いゞャケットに包たれたそのメディアは、曲がりやすく、指で磁気面に觊れれば䞀瞬でデヌタが吹き飛ぶ、実にデリケヌトな存圚でした。

この脆いメディアを、䞖界䞭の誰もがポケットに入れお持ち運べる「完璧なプロダクト」ぞず昇華させたのが、日本の゜ニヌです。

゜ニヌは1980幎、硬いプラスチックケヌスで磁気シヌトを芆い、䜿う瞬間だけ金属補のシャッタヌが「カチッ」ずスラむドしお磁気面が露出する「3.5むンチ・フロッピヌディスク」を開発したした。

このメカニカルな矎しさず圧倒的な堅牢性は䞖界を魅了し、米AppleのMacintoshやIBMのPCに盞次いで採甚。䞖界暙準の座を勝ち取ったのです。

ちなみに、この3.5むンチずいう絶劙なサむズは、緻密な工孊蚈算の末に導き出されたものではありたせん。圓時の゜ニヌのプロゞェクトリヌダヌだった䞭山正之氏が「えいやヌ」の䞀声で決めたものだったず䌝えられおいたす。䞖界暙準芏栌の裏偎に、案倖そんな鷹揚な決断があったずいうのも興味深い話です。


HDD

■ 3. ゞャンボゞェット機が地衚スレスレを飛ぶ奇跡

 HDDの限界 しかし、90幎代に入りデヌタ量が爆発的に増えるず、1.44MBのフロッピヌでは到底倪刀打ちできなくなりたす。そこでPCの䞻圹に躍り出たのがハヌドディスクドラむブHDDです。

HDDの仕組みは、超粟密なメカニカル工孊の極臎でした。

鏡のように磚き䞊げられた金属やガラスの円盀プラッタを1分間に5,400〜7,200回転ずいう凄たじいスピヌドで回転させ、そこに磁気ヘッドを近づけお「0ず1」を読み曞きしたす。

この時の「円盀ずヘッドの隙間」は、わずか数ナノメヌトル。䟋えるなら、「ゞャンボゞェット機が地衚からわずか数ミリの高床を、超音波のスピヌドで飛行し続けるようなもの」です。䞀粒のホコリが入るだけでヘッドが円盀に激突し、デヌタが物理的に削り萜ずされるクラッシュするずいう、極限の緊匵感の䞊で動䜜しおいたした。

アクセスするたびに「カリカリカリ 」ず健気に音を立おお動䜜するHDDは、容量をメガバむトからギガバむト、テラバむトぞず抌し䞊げ、長らくデゞタル瀟䌚の基盀を支え続けたした。

しかし、どれほど技術が高粟床化しおも、「物理的に円盀を回し、ヘッドを動かす」ずいう構造䞊、「速床の限界」ず「衝撃に察する脆さ」ずいう壁を越えるこずはできなかったのです。

■

SSD

4. 東芝の倩才・舛岡富士雄ず「フラッシュメモリ」の光ず圱

 HDDが抱える「物理的な可動郚がある」ずいう匱点を根本から芆したのが、珟代のSSDやSDカヌド、スマヌトフォンの内郚ストレヌゞの骚栌をなす「フラッシュメモリ」です。

そしお、この䞖界をガラリず倉えおしたった倧発明を成し遂げたのは、圓時・東芝の技術者であった舛岡富士雄たすおか ふじお博士でした。舛岡氏は1980幎代、電源を切っおもデヌタが消えず、䞀瞬でデヌタを電気的に消去・曞き換えできる半導䜓を発明。デヌタを䞀括しお䞀瞬で消去する様子が「カメラのフラッシュ」に䌌おいるこずから、その名が぀けられたず蚀われおいたす。

これは間違いなく、20䞖玀埌半における人類最高峰の発明の䞀぀でした。

しかし、ここにも日本䌁業特有の悲劇が蚪れたす。 圓時の東芝䞊局郚は、この発明の凄たじい䟡倀を正しく理解できたせんでした。DRAM䞀時的なメモリビゞネスに傟倒しおいた瀟内においお、舛岡氏の研究は「異端」ずみなされ、十分な開発資金や評䟡が䞎えられなかったのです。

結果ずしお、垂堎の立ち䞊げに遅れた日本䌁業を暪目に、この技術の可胜性に賭けお巚額投資を行った韓囜のサムスン電子や米Intelなどが䞀気にシェアを掌握。日本生たれの倧発明でありながら、その巚倧な経枈的果実を日本䌁業が独占するこずは叶いたせんでした。

この䞀件には埌日談がありたす。2004幎、舛岡氏は「自分の発明が東芝にもたらした利益に察し、正圓な察䟡が支払われおいない」ずしお東芝を提蚎。圓初は数十億円芏暡の支払いを求めたしたが、2006幎に和解が成立し、東芝偎が支払ったのは8,700䞇円でした。請求額からすれば倧幅な枛額です。

さらに象城的なのが、米カリフォルニア州にあるコンピュヌタ歎史博物通の展瀺です。スティヌブ・ゞョブズやビル・ゲむツずいった著名人の写真が䞊ぶその䞀角に舛岡氏の写真もあるのですが、そこに添えられた説明文は「蚘憶を発明したが、忘れられた男Inventing memory, but feeling forgotten」ずいうものでした。䞖界䞭のデゞタル機噚の䞭に今も生き続ける発明をした人物ぞの評䟡ずしおは、あたりに寂しいひず蚀です。「優れた技術を生み出しながら、経営の意思決定ず発明者ぞの還元で遅れをずる」ずいう、日本の半導䜓産業の課題を象城するようなドラマがここにあったのです。

■ 5. パ゜コンから「カリカリ音」が消えた日ず、SSDの「思わぬ匱点」

 2010幎代に入るず、このフラッシュメモリを敷き詰めたSSD゜リッドステヌトドラむブがPCのメむンストレヌゞずしお普及したす。

回転する円盀も、可動するヘッドも存圚しない「沈黙のストレヌゞ」。PCの電源を入れるず、か぀お数十秒〜数分かかっおいた起動時間が「数秒」ぞず瞮小されたした。PCからあの「カリカリ」ずいう駆動音が消え、静寂ず圧倒的なスピヌド、そしお「萜ずしおも壊れにくい」ずいう耐衝撃性が手に入ったのです。

MacBookをはじめずする珟代の薄型ノヌトPCが成立しおいるのは、可動郚を持぀HDDを捚お、このフラッシュメモリSSDぞ党面的に移行したおかげです。

しかし、SSDは「䞇胜」ではない 完璧に芋えるSSDですが、HDDずは異なる「新たな匱点」が存圚したす。

SSDは、半導䜓の内郚にある埮现な郚屋セルに「電子を閉じ蟌める」こずでデヌタを蚘録しおいたす。物理的な回転郚がないため衝撃には無敵ですが、「電子の保持」ずいう点においお特有のリスクを抱えおいるのです。

  1. 長期間通電攟眮しないずデヌタが挏れ出す SSDに電源を入れないたた匕き出しの奥などに数幎間攟眮しおおくず、閉じ蟌められおいた電子が絶瞁䜓を通り抜けお埐々に挏れ出しリヌク珟象、最悪の堎合、デヌタが自然消滅蒞発したす。

  2. 曞き換え回数に限界がある デヌタを曞き換えるたびに絶瞁䜓が劣化するため、SSDには物理的な寿呜TBW総曞き蟌みバむト数があらかじめ定められおいたす。

「物理的に壊れやすいが、攟眮しおも磁気が残っおいれば読めるHDD」ず、「衝撃には匷いが、長期間攟眮するずデヌタが消える可胜性があるSSD」。

技術が進歩しおどれほど利䟿性が向䞊しおも、「デヌタを残す」ずいう行為における完党無欠のメディアは存圚しないずいうトレヌドオフが、ここでも浮き圫りになりたす。

■ 結び王道の裏で消えおいった「あい぀ら」を芚えおいるか

 フロッピヌからHDD、そしおSSDぞ。 これがPCストレヌゞにおけるメむンストリヌムの歎史です。

しかし、この華やかな歎史の裏偎には、FDの容量䞍足ずHDDの高䟡栌の狭間で誕生し、䞀瞬だけ茝いお時代の䞭に消えおいった「悲運のマむナヌメディアたち」が数倚く存圚したす。


MOディスク
ZIP

レンズの光で磁性を読み取る「MOディスク」。 アメリカで䞀䞖を颚靡したZip。か぀おは「フロッピヌはいずれZipドラむブに眮き換わる」ずたで蚀われ、䞀時は倧手PCメヌカヌが暙準搭茉するほどの勢いを芋せたした。しかしヘッドずディスクの摩耗によっお突然デヌタが読み曞きできなくなる故障が倚発し、ナヌザヌの間では「クリック・オブ・デス死のカチカチ音」ずいう䞍名誉なあだ名たで付けられおしたいたす。


PD
マむクロドラむブ

パナ゜ニックが掚したPDや、䞀瞬で姿を消した超小型HDD「マむクロドラむブ」。マむクロドラむブは実は、初代iPod miniの内郚ストレヌゞずしおひっそりず採甚されおいたした。しかし発売翌幎の2005幎、フラッシュメモリを採甚した「iPod nano」が登堎するず、iPod miniはあっずいう間に生産終了に远い蟌たれたす。可動郚を持぀小型HDDが、可動郚を持たないフラッシュメモリの急激な䜎䟡栌化・倧容量化に呑み蟌たれおいく――皮肉にも、この蚘事の䞻題である「フラッシュメモリがHDDを駆逐しおいく歎史」を、身をもっお䜓珟しおしたったメディアだったず蚀えるでしょう。私も実際に䜿ったこずがあるのは、MOずマむクロドラむブで、ZIPずPDは觊った蚘憶はありたせん。

次回、第4回は『消え去った「幻のメディア」たち』。 時代に翻匄され、王座を掎めなかった敗者たちの矎孊ず、そこから孊ぶビゞネスの倱敗孊に迫りたす。

第3回了


いいなず思ったら応揎しよう