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詩 『自然委託奏者』


かつては満席だった客席も今や風前の灯
ここが特殊な会場だなんて……
主催者は頭をひねる
音は本来地中奥深く暗闇で操るため、
奏者は盲目が条件となる
アンモナイトは、三次元名ピアノ

白羽の矢は――古参のモグラに当てられた

小さなお手々はタッチが繊細
目にも留まらぬ速さで、
アンモナイトをさすってゆく
ふだんは狂暴にミミズを漁っているのに、
ここではちと慎重だ

音符なんて片腹痛い
譜面なんて数式と同じ
実証主義や唯物論が覗こうともしない
魅惑の世界が広がっている
永遠なる神秘
著作権もない
楽曲さえも変幻自在

奏者は、早速前奏で魅せる
土壌で養われた技は並みではなく、
魅惑と厄介事を兼ね備えた四季折々を
華麗なテクニックで表現
時間というさらなる問題要素も逆手にとり、
徐々に、その虚偽を浮き立たせてゆく
三次元は――まがいもので構成されているから
そうすることで、お目当ての
すっかり朽ちた地上を荒々しく奏でられる

やがて空間すらも楽団の支配下に置く
より重要な局面を迎えるのに脇役は欠かせない


佳境に入る――
ここで、奏者の表情はニヒルに変化する
演奏会場を破壊しようとする愚かな生命体よ
悪の権化は何と、
方々の生みの親や先導者という現実
羊の皮をかぶった猫たちよ
惻隠や矜持のかけらもない詐欺師よ
彼らにより、
魂を守るべく存在する脆い心や精神は
ひとたまりもなく洗脳される
彼らの排除が先決となるも、
もっともらしいかどを用意するのに難航する
さすがの手練れの奏者も珍しくしかめっ面に

詐欺師の支配下はおのずと受け子に
義務を果たさず権利を主張し
資本を当然のように収奪し、
物に愛着を持たず、
人も物のように扱い
しまいには――
対処や憤りさえAIに委託する
効率と成果だけがエネルギー
重く荒々しいメロディが続く

この難題を前に、
奏者は更なる技を駆使する
汚染の少ない民の脳を引き寄せ、
アニミズムという
共同体主体の利潤を糧に再構成し始める
太古の昔の記憶をDNAから引きずり出し
修行僧のような忍耐と幼児のような清純さで
遅れて嫌々やってきた観客も、
フィナーレの頃にはそっと目をつむる

静謐とは――
 
 俗世の観察
  内省の時間
   神秘につながる呼吸
    麗らかな言霊
   保守的思想
  しがらみと安らぎに満ちた
 あまたの匂い漂う自然の一員への道


奏者は弾き終わると―――、
珍しくそっと佇んでは、
つぶらな瞳で会場をそっと見渡す
静謐とは、この会場を超えた永遠のルール
母性が赤子を見守るかのように

奏者はどういう涙か、
たどたどしくも
いつものせわしない動作で袖へはけた
拍手喝采の中そそくさと


    了


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