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【ファンタゞヌ】結心芳音 (2) 【創䜜倧賞2024 応募䜜品】


第二章 倱った日垞

出䌚い

 嚘ず若者の出䌚いは、二幎前に遡る。二人の家は狭い村ずはいえ家同士は離れおいたので普段顔を合わせるこずはなかった。二幎前たで若者は父芪ずの二人暮らしだった。母芪は早くに病気で亡くなっおいた。父芪も幎老いおからは無理が効かなくなり、段々倖に行くこずができなくなっおいた。そしお、぀いには眠るように母芪の元に旅立っおいったのである。若者はある皋床芚悟の䞊だったので、涙より先に、今埌どうすればいいかを考えおいた。通倜や葬匏の準備もしなければならないのだが、心の䜙裕がなかったのだ。そんな時、亡くなった母ず遠い芪戚にあたる嚘の母芪に盞談しようず思い぀いたのだ。ずりあえず、その足で嚘の母芪に䌚いに行った。母が生前䜕かあったら、近所ではなくたず芪戚を頌りなさいず蚀っおいたこずを思い出したのだ。

「ご無沙汰しおいたす。心助です。実は、父が亡くなりたしお、どうしたらいいか分からず唯䞀の芪戚であるおばさんのずころに来おしたいたした」

「たぁ、たぁ、遠いずころから、頌っおきおくれおありがずう。この床は色々ず倧倉だったわね。本圓に、ご愁傷様です」

「いえ、ただどうすればいいか分からず、悲しむ暇がありたせん」

「そうよね、䞀人になっおしたったものね。ずりあえず、嚘の結衣をたず手䌝いに行かせるわ。そのあず远いかけお私も手䌝いに行っおあげたす。お料理ずかもしないずいけないしね、結衣、こっちにいらっしゃい。こちら心助さんよ、お父様が亡くなられたばかりなの。お手䌝いしおあげお」

「結衣です、この床はご愁傷様です。私でよければお手䌝いさせおください」

「ありがずうございたす。助かりたす。䞀人でどうしようかず思っおたしたから」

 これが、二人の初めおの出䌚いだった。若者の父芪の死がきっかけずなり、亡き母の蚀葉が二人を匕き合わせたのだ。先に嚘ず若者は若者の家に戻り、お通倜の準備を敎えた。嚘の母芪は、お通倜の垭で匔問客に振る舞う料理を䜜っおから二人を远いかけた。そしお、近所の奥様方の手䌝いもあり、若者の父芪のお通倜、葬儀ずも滞りなく枈たせるこずができた。若者はこの嚘ず嚘の母に深く頭を䞋げ感謝した。この時は、この村の人たちの助け合う匷い絆に若者も嚘も感心し玠晎らしいず思っおいた時だった。この村に生たれお本圓に良かったず思っおいたのだ。

「この床は、ありがずうございたした。本圓に助かりたした。ひずりではどうしようもなかったず思いたす」

「いいのよ。それが芪戚ずいうものよ。衚面の぀ながりだけでなく心が぀ながっおいるのよ。ねぇ、結衣」

「はい。お母さんの蚀うずおり。心助さんも倧倉だったず思いたす。ご苊劎様でした」

「結衣さん、ありがずう。結衣さんにもたくさん助けおもらったな」

「あらっ、こんな時に䞍謹慎だけど、結衣ず心助さん、なんだかいい感じだわね」

「えっ、いや、おばさん、からかわないでくださいよ」

「そうよ、お母さん。こんな時に䞍謹慎だわ」

「そうね。ごめんなさい。でも、心助さん、少し元気になったみたいだったから」

 こうしお、無事に葬儀を終えお、二人は、その埌も若者の父芪のその埌の法事でも顔を合わせるこずになり、次第にお互いの心の距離が瞮たっおいったのだ。そうなるず若い二人の間には自然発火するようにお互いぞの思いが高たっおいったのである。その時は、嚘の父芪が事故に遭うずいう䞍幞も自殺しおしたうずいうこずも想像すらできず、絵に描いたような幞せの時間の䞭に二人は浞っおいた。やがお、若者は嚘に結婚を申し蟌んだ。

「結衣、もう少し僕の仕事が安定しお暮らしおいける目凊が立ったら䞀緒になっおほしい。裕犏ではないけど、きっず幞せになる努力は惜したないから」

「心助さん、嬉しい。私もいい劻になるように努力したす。末長く、䞡芪ずもどもよろしくお願いしたす」

 こうしお必然的に若い二人は結婚の玄束を亀わした。二人ずも、これから蚪れる玠晎らしい未来を信じ、幞せを最高に感じおいた。

突然の事故

 嚘の父芪である枅䞀は、村の仲間数人ず獣道を䜿っお険しい山越えをしお䜜物を近隣の村に売りに行っおいた。倖郚ず繋がっおいる普通に通れる道は、党く反察偎にあるので枅䞀たちが行きたいず思っおいる村にはかなり遠回りになっおしたう。しかも䜜物は痛みやすいので、どうしおも危険だずはわかっおいおも、近道を遞択しおしたうのである。䜿う獣道はわずか幅䞉十センチ足らずの山肌を瞫うような道である。足を螏み倖しおしたうず䞀気に滑萜しおしたうこずになる。枅䞀たちは重い野菜を背䞭に背負っお山向こうの村に行き、党おを売り切り、䞊機嫌で同じ道を䜿っお村に戻っおきおいた。高倀で売れたため、山向こうの村で嬉しさのあたり、仲間たちずほんの少しだけ酒を飲み、劻や結衣ぞのお土産の櫛を買っお垰っおきおいた。それが過ちだった。

 にわかに空暡様が怪しくなり、山肌の狭い道を歩いおいるずきに、運悪く雚が降り出しおきた。酒を飲んでいるせいか䜓は暖かいので、少々の雚は気にならなかった。い぀もなら、雚が止むたで安党な堎所を探しお䌑憩をするのだが、この日は誰しもが早く垰っお土産を枡したいず思い、䌑むこずなく歩き続けおしたった。次第に雚足が匷くなり、さすがの枅䞀も危険だず感じ始めおいた。しかし、すでに䌑もうにも山肌の现い道の半ばたで歩いおきおしたっおいる。進むのも匕き返すのも同じくらいの距離だず思い、ならば急いで進んだほうがいいず刀断しおしたったのだ。だが、それが裏目に出おしたった。匷い雚で狭い山肌の道はい぀厩れおもおかしくない状況になっおいた。枅䞀たちは䞇が䞀のこずを考え、䞀本のロヌプをみんなで掎みながら歩いおいた。先頭は枅䞀で道の安党を確認しながら進んだ。次第に雚足は匷くなっおいった。前を確認するのが困難なくらいの土砂降りになっおいる。売䞊ずお土産を萜ずしおは元も子もない。すでに村の集萜が芋える䜍眮たで来おいたが、匷い雚のためはっきりずは確認できない。「危ない、逃げお」枅䞀の耳にはそんな声が遠くからかすかに聞こえた気がした。人の声が届くわけはないから、匷い雚の音が䜜り出した声なのかもしれないず思い盎した。しっかりず懐を気にしながら進んでいたその時、枅䞀の足元がガラガラず厩れ萜ちおしたった。䞀瞬、枅䞀は宙に浮かんだような感芚を芚えたが、それはたさしく足元の地面がなくなっおしたっおいたからに他ならなかった。どうするこずも出来ないたた、枅䞀は厖の䞋ぞず滑萜しおしたった。握っおいたロヌプはい぀しか手から離れおいた。䞊の方から、呌びかける声が聞こえるが枅䞀には、どうする事もできない。声は滑萜ずずもに次第に遠ざかっおいった。

 枅䞀は転げ萜ちながら死を芚悟した。脳裏には劻ず嚘の顔が浮かび䞊がる。匷くなった雚は容赊なく晎䞀に打ち付け、党身の感芚を奪い去っおいくようだった。萜ちおいく途䞭、鋭く角匵った岩に䞡足を打ち付け、䜓は回転しながら谷底ぞず萜ちた。䞡足の感芚は無くなったが、萜ちた堎所は山の朚を䌐採した枝葉が山のように積たれおいる堎所だった。枅䞀は、奇跡的に助かったのだ。その埌、呜からがら、村になんずか蟿り着いた仲間たちが、雚の䞭を探しに戻っおきおくれた。

「枅䞀、どこだヌ。返事をしおくれヌ」

 遠くから聞こえる仲間たちの声に必死に声を匵り䞊げお助けを呌んだ。

「ここだヌ、ここにいるぞヌ。足をやられお動けないんだヌ。助けおくれヌ」

 叫ぶ声は匷い雚にかき消されそうになったが、次第に雚足は匱たり、枅䞀の声も仲間たちに届いた。なんずか助けにやっおきた仲間たちは、枅䞀の足を芋お呆然ずなった。

「枅䞀、お前の足」

「えっ、俺の足か。倚分折れちたったんだず思うよ。動かないんだ」

「いや、折れおいるんじゃないぞ。ほずんど千切れおるぞ」

 枅䞀の足は、鋭い岩に圓たったずきに膝から䞋をひどく損傷し、なんずか繋がっおいるだけだったのだ。誰しもが枅䞀の足が元に戻るこずは無いずわかった。その埌なんずか枅䞀は村たで運ばれ、無事に自宅に戻るこずができた。村には病院はない。倚少医孊に詳しいものが枅䞀の足の状態を確認したが、銖を暪に振った。それを芋お枅䞀も自分の足の状態を悟った。劻ず嚘が駆け寄っおきた。

「あんたヌ、䞀䜓どうしたのさヌ」

「父さん、父さん、倧䞈倫なの」

「ああ、心配するな。䞀応、生きお戻ったぞ。野菜も党郚売れたんだよ。ほら、お土産もあるぞ」

「そんなこずより、あんたの足が」

「どうやら、足はダメそうだな。痛みも感芚もないしな」

 この埌、枅䞀は䞡足を倱い、寝たきりの生掻を䜙儀なくされるこずずなり、家族の生掻は䞀倉しおしたった。

父の決断

 嚘は心助ず共に、䞡芪に結婚したいずいうこずをい぀䌝えようかず話をしおいた矢先、村の倖で嚘の䞡芪が事故にあったずいう連絡を受けた。嚘の父芪は山を越えるため厖っぷちの道を歩いおいるずきに厖から滑萜しおしたったず知らされた。その結果、䞡足が䞍自由になり、歩くこずができず、働くこずもできなくなっおしたった。嚘の母はそれでも懞呜に寝る間も惜しんで働き、なんずか介護しながら嚘ずの生掻を保ずうず考えおいたのだが、結局無理が祟っお倒れおしたった。そうなるず嚘が頑匵るしかない。嚘も頑匵ったのだが、どうしおも力仕事には限界がある。男手が必芁だった。そんな嚘を芋おいた父芪は、嚘が䞍憫になり涙を流しながら、隣に寝おいる嚘の母芪を手にかけおしたったのだ。

「お前、すたん。このワシがこんなこずになっおしたったために、蟛い日々を過ごさせるこずになっおしたったな。このたたではい぀たでも結衣の重荷になっおしたう。ワシら二人䞀緒に先に旅立ずう。蚱しおくれ、結衣䞀人なら䜕ずか生きおいくこずもできるに違いない」

 その時、傍で寝おいる劻の頬に涙が光ったような気がしお、䞀瞬躊躇したが、父芪は勢いに任せお䞡手で劻の銖を締め䞊げた。劻はやはり気づいおいたようだった。苊しさを懞呜に堪えお息を止め、されるがたたに身を委ねた。その頬にはずめどなく溢れる涙が堰を切ったように流れおいた。そしお、数分埌、静かに逝った。倫は、死に際の劻の顔が埮笑んでいるように感じお自らも涙しおいた。

「すたん。ワシもすぐにお前の埌を远うから埅っおいおくれ。この足では生きおいおもお荷物になるだけだからな」

 そう蚀っお、自分も济衣の垯を家の䞭の梁に投げかけ、自分の䜓重で銖を぀っお自殺しおしたった。遺曞すら残す間もなく。嚘が家の倖にある畑に仕事に出た朝早くの出来事だった。䜕も知らずに、日が沈む倕方になり仕事から戻っおきた嚘は家の䞭に入った瞬間、その惚事に向き合うこずずなった。父芪が䞍自然な姿で壁にもたれかかっおいる。よく芋るず銖に垯が巻き぀き、着物がはだけおいた。父芪の顔にはすでに血の気がなくなり、顔色は青癜く䞋を向いおいる状態だった。嚘は咄嗟に悟った。自害したのだず。

「お父さん、お母さん、どうしお、どうしおこんなこずを、私はどうなるの」

 嚘は泣きながら、銖を吊っおいる父芪の銖から垯を倖し、母芪の暪に䞊べお寝かせた。しばらくは呆然ずしおいた。すでに日も沈み、蟺りは暗闇ずなっおいった。灯りを点ける事も忘れ、嚘は窓から入り蟌む月明かりだけを頌りに䞡芪の前に座り、身じろぎもせずに䞀倜を過ごした。䜕も考えられなかった。䞀晩䞭泣き続け倜が明けるず、ずりあえずフラフラず家を出お䞡芪が亡くなったこずを近所に報告した。自分ではどうしたらいいか分からなくなっおいた。しかし、報告を受けた近所の䜏民は、話を聞くなり、顔色を倉え玄関の扉を硬く閉ざしおしたったのだ。䜕件か回っおみたが手を貞しおくれるどころか、みんな扉を固く閉ざしおしたいたずもに話を聞いおはくれなかった。家族同様だず思っお育っおいただけに嚘の心は傷぀いたし、理解すらできなかった。でも、䞡芪をそのたたにはしおおけないし、埋葬もしなければならない。嚘は途方に暮れた。村で唯䞀存圚するお寺に行き、䜏職にも盞談した。しかし、䜏職は、蟛そうな顔をしながら嚘に䌝えた。

「みんなに盞談せずに自ら呜を断ち、逝っおしたった家は、この村では誰も助けおくれない。このお寺のお墓に遺骚を埋葬しおやるこずも出来ない。すたないのう。裏庭にでも埋めおあげなさい。そしお、あなたもこの村から出おいくこずを考えた方がいい。この村は結束が硬い分、裏切られたず感じるず絶察蚱しおはくれない。だからこそ、誰にも邪魔されるこずなく、ひっそりず今たで生きお来られたのだよ。理解しおくれるかい」

「そんな。お父さんもお母さんもこれたで村のために䞀生懞呜働いおいたのに。もう、誰も助けおくれないの」

「すたんのう。この村が村ずしお存続しおいくために昔の人が䜜っおくれたしきたりなんじゃ。䟋倖を䜜るこずはできないんじゃよ」

 嚘は、理解できなかった。しかし、どうにもならないこずなのだずいうこずだけは認識した。䜕かが違うず感じ぀぀も䜕もできない自分が腹立たしかった。そのたた家に垰り、仕方なく䞡芪を埋葬するために䞀人で裏庭に穎を掘った。深く掘らないず動物に掘り返される。嚘は自分の胞くらいたでの深さに穎を掘り、䞡芪を仲良く䞊べお手を繋いで埋葬した。すでに、倜になっおしたった。嚘は心も身䜓もボロボロだった。もちろん、匔問客もいない寂しい埋葬だった。この時、結婚の玄束をした若者に連絡するず迷惑がかかっおしたうずいうこずが脳裏をかすめ、若者のずころに行くのを躊躇い、なんずか䞀人で察応しようずしおいたのだ。そしお最埌に、嚘はお隣の䞖話になったおじさんずおばさんをもう䞀床だけ頌っおみよう思った。

「私䞀人では冬を越す準備はできない。流石におじさんならこっそり助けおくれるかもしれないからもう䞀床だけ、信じお蚪ねおみよう」

 そう思い隣の家を蚪ねたのだった。しかし、玄関の扉が開くこずはなかった。お寺を頌っお行った時には、村人から村長ぞも自殺の話が䌝わっおいお、村長からしきたりを守るように党村人に察し連絡が回っおいたのだ。雪が降りしきる䞭、嚘は党おの繋がっおいる糞を断ち切られたかのような絶望感を感じおいた。そしお、それならば神様の䜏む山に入っおしたおうず考えおしたったのである。そう思っおなんずか山の麓たで行ったものの門番杉に簡単に远い払われおしたい、結局行く圓おもなく途方に暮れおしたい、必然的に若者の家の前たでやっお来おしたったのだった。そしお、匵り詰めおいた意識もプツッず切れおしたい、若者の腕の䞭で倒れ蟌んでしたった。

目芚め

 嚘が若者の家で眠りに぀いおから䞉日間が過ぎ、透き通るような空気の朝、嚘は日の出ずずもにゆっくりず目を開けた。若者はその日の朝もおかゆを囲炉裏で䜜っおいた。ふず、気配を感じ嚘の方を確認するず目を開けおいるのが芋えた。

「結衣、目が芚めたのか。よかったヌ」

「心助さん、、、わたし、ずっず眠っおいたのかしら」

「あぁ、䞉日間も寝おいたよ。心配で心配でたたらなかった。ほんずによかった」

「ごめんなさい、ごめんなさい。迷惑をかける぀もりじゃなかったのに」

「䜕を蚀っおるんだ。た、ずにかくおかゆ䜜ったから、食べおくれ。少しでも食べお䜓力を回埩しないず働けないぞ」

「ありがずう、こんな私のために。村䞭から嫌われおいるのに」

「ばかなこず蚀うなよ。誰が嫌っおいおも僕は嫌いになんかならない。死んでも䞀緒だ。それに村の人たちは決しお嫌っおるわけじゃないず思うよ。みんながそうしおいるから合わせるしかないんだよ。い぀かはわかっおくれるさ。だっお、みんな根はいい人たちばかりなんだから」

 若者はおかゆを冷たしながら嚘の口に運んであげた。ゆっくりずそしお噛み締めるように嚘は䞀口おかゆを食べた。これたで口にした䜕よりも矎味しさず若者の愛情を感じおいた。涙が止たらなかった。それを芋お若者も涙したが、嚘に芋られないように暪を向き涙を拭っお笑顔を芋せた。若者にずっお元気の源は嚘の存圚だったのだ。数日しお、嚘の䜓力もだいぶ回埩したので、二人で畑仕事に出かけられるようになった。盞倉わらず、呚囲の目は冷たく感じおいた。そんなある日、若者の方から切り出した。

「結衣、僕たちはもう䞀緒に生掻をしおいるが、ただ結婚匏をあげおいない。二人だけでここで匏をあげおお互いの䞡芪に報告しないか」

「そうね。二人だけの結婚匏ね。玠敵だわ、䜕もなくおも心助さんず䞀緒だもの」

「ありがずう、それから、」

「それから」

「僕は、やっぱりこの村の人たちが奜きだ。こんなふうに冷たくされおいおも、きっずみんなの本心じゃないず思うんだ」

「そうね。私はあなたのそんな優しいずころが奜き。私も村の人たちを憎めない」

「だから、今埌僕たちのような境遇の人が蟛い思いをしなくおいいような村になっおもらいたいず思うんだ。みんな、人ず違うこずをするずいうこずを怖がっおいるだけなんだよ、きっず。叀いしきたりに瞛られおいお、それを打ち砕く勇気がないだけだず思うんだ。僕たちず同じ境遇に家族が萜ちおしたうのが怖いだけなんだず思う。この村の人たちも倉わらなければいけないず思うんだよね。そうじゃないず、これからこの村を盛り立おおいく若者も同じこずを繰り返しおしたうのだから」

「でも、どうすればいいのかしら」

「僕らがみんなのこずを思っおいるず蚀うこずをなんずかしお䌝えお、わかっおもらえたらいいよね。そしお」

「えっ、そしお、どうするの」

「そしお二人で神様の山に入りたい」

「えっ、神様の山に、どうしお」

「僕らは今のたたではずっず孀立しお生きおいくしかないけど、僕らの間に子䟛ができる前にこの村を芋守れるような存圚になれれば、村ももっず幞せな空気に包たれるんじゃないかなず思うんだよ。僕たちの間に子䟛を䜜るこずは諊めなければならないけど、みんなが幞せになれるのだったら埌悔しないず思う」

「あなたは本圓に心優しい人ね。そんなにも村人のこずを思っおあげられるなんお」

「いや、そんなこずはないさ。結衣のこずが䞀番だよ」

「いいのよ、私に気遣っおくれなくおも。だっお、そんな優しいあなたが倧奜きですもの。それじゃあ、私たちの想いを䌝えるために、䜕かしおあげられるずいいわね。䜕がいいかしら。私たちの心が届くものでしょ。そうねぇ、村の人みんなが普段䜿う着物を䜜っおあげるずいうのはどうかしら。䞀幎もあれば村人党員の着物を䜜れるず思うわ。私、裁瞫が埗意だから。普段の生掻に必芁なものを莈っおあげるの。そうすればきっず私たちの真心が村の人たちに届くず思うの。もちろん、あなたの分も䜜るわよ」

「なるほど。うん、それはいいね。毎日䜿えるものならきっず僕たちのこずを忘れないでいおくれるね。そうしよう」

 こうしお若い倫婊は、村人党員が普段䜿う着物を䜜っお送るこずを決意したのだ。もちろん、村の人たちは䜕も知らない。二人も党おの䜏民の着物を瞫い䞊げるたでは黙々ず䜜業をするだけだった。二人の時間は村人のために䜿っおいったのである。それでも、䞀緒にいられるずいう時間が二人にずっおは幞せな時間だったのかもしれない。

二人だけの生掻

 この埌、若者の家の䞡芪の䜍牌の前で、簡単な結婚匏を二人で執り行った。立䌚人もいない寂しい結婚匏だが、二人は満足だった。自分たちの䞡芪に報告できればそれでいいず思っおいたのだ。若者の家で結婚匏を挙げた二人は、嚘の実家に向かっお歩きだした。䞀幎近く離れたっきりだったので嚘は実家がどうなっおいるのかず心配だった。実家に到着しお二人は裏庭にたわり、嚘が匔った䞡芪の墓前で結婚の報告をした。嚘が䜜ったお墓は動物に荒らされるこずもなく無事だった。もっず雑草が生えおいるのかず思ったが、意倖に綺麗なたただった。これで二人ずも肩の荷が降りたような気になった。家の䞭も気になるので二人で入っおみるこずにしたが、入っおみおびっくりしおしたった。埃がしおいないのである。もしかしお近所の方が掃陀をしおくれおいたのかもしれない。きっずそうに違いないず思い、お瀌に行こうずする劻を若者は止めた。そのご近所の方に迷惑をかけおしたうかもしれないず思ったのだ。きっず、内緒で掃陀をしおくれおいたのだろうず若者は思ったのだった。

 䞀安心した二人は、その日は嚘の実家に泊たっお、翌朝早くに若者の家に垰っおいった。呚りの人に䌚わないようにず配慮したのだ。こうしお、二人は無事倫婊ずなった。しかし、そのこずを知っおいるのは二人のみだった。本圓は村のみんなから祝犏をしおもらいたいずいう思いは二人ずも心の䞭では思っおいた。

「結衣、たった二人だけの結婚匏だけど、これで晎れお僕たちは倫婊だ。お互いの䞡芪にも報告したし、これからは二人で力を合わせお頑匵ろう。村の人たちを僕たちの結婚匏に招埅するこずは叶わなかったけど、い぀かはきっず村の人たちも祝犏しおくれる日が来るず信じよう」

「はい、私もそう信じお粟䞀杯着物を䜜りたす。䞍束な嫁ですが、よろしくお願いしたす、旊那様」

「えっ、旊那様っお、照れるなぁ。今たで通り、心助さんず呌んでくれよ。くすぐったくお倉な感じだから」

「ふふ、私も倉な感じです。やっぱり心助さんっお呌んだ方が自然ね、心助さん」

「そうそう、それでいいよ。さぁ、明日からは着物を䜜る材料や道具を揃えないずいけないから忙しくなるなぁ。蟛いかもしれないけど頑匵ろうな」

「はい。村の人たちから無芖されおも心助さんがそばにいるから倧䞈倫です」

 若い倫婊は家に戻るず、村人の着物を䜜るための反物を仕入れるために、それたで䞀生懞呜働いお貯めおいたお金を持っお村の倖に買いに行った。村の䞭では買い物はできないので、村の倖の店たで出かけなければならない。山あいの道を抜け、埀埩するだけで䞀日では足りない道のりだ。それでも二人で出かけるので苊にはならなかった。癟人足らずの村人の着物を䜜る垃が必芁だった。二人で持っお垰っお来ないずいけないので、毎月倩気のいい日を芋蚈らっお、少しず぀買いに出かけるこずにした。そしお、呉服屋さんには毎月買うからず蚀う条件で、少し安くしおもらったりもした。二人はお金を残す意味はないず考え、党おの蓄えのうち䞀幎間皋床の生掻費以倖のお金を党お着物を䜜るためのお金ずしお䜿っおいったのだ。二人ずも、埮塵も埌悔するこずなく晎れやかな顔をしお毎日蟲䜜業ず着物䜜りに励んだのだった。


 そんな二人のこずを村人たちは気づかれないように窓の隙間からい぀も様子を䌺っおいた。若者の家で新しい生掻を始めおいたので、嚘のこずはあたり知らない近所の人たちだった。それ故、どうしおも、嚘の悪口が陰口ずしお囁かれおいたのである。い぀の時代も他人の話は有る事無い事語られる。村でも有名なおよね婆さんが最初に話し始め、呚りの女性を匕き蟌んでいった。

「心助さんのずころに転がり蟌んできた嚘さんは、䞡芪が誰にも盞談せずに自殺しちゃったんだそうよ。嚘さんは可哀想だず思うけど、そんな家の嚘が抌しかけおきたら、心助さんたで巻き添えになるのにねぇ。あの嚘はどうもないんだろうかね」

「抌しかけおくるくらいだから、心臓が匷いんじゃないの。だっお、村長さんもお寺の䜏職さんも村を出た方がいいず勧めたのに、居座ったらしいわよ。だから、結構図倪いんじゃないの。顔は可愛いけど」

「それにしおも、毎日毎日、家の䞭に閉じこもっお䜕をしおいるんだろうね」

「なんでも、村の䞭では仕事もできないので、他の村たで時々出かけおいるらしいわよ。時々倧量の反物を持っお垰っお来おるみたいだから、倧きな呉服屋の仕事でもしおるんじゃないのかい。それにしおも毎日仕立おるだけの仕事がよくあるね」

「私たちずは話もできないから、きっずお金をたくさん貯める぀もりなんじゃないのかい」

「そうね。そうかも知れないわね。党く抜け目がない嚘ねぇ」

「ああ、あんな嚘にはきっず倩眰が降るに違いないよ。私たちもあんたり近づいお、ずばっちりを貰わないように気を぀けないずね」

「そうね。こっちたで倉になったら倧倉よねヌ」

 人の口ずは怖いものである。火のないずころにも煙は立぀ものらしい。畑仕事で萜ち合った女性たちが若い二人の噂をしおいる。毎日を決たった仕事をしお食事の準備をする女性たちにずっお、二人の行動は栌奜の噂の的ずなっおいた。特に、二人のこずをよく知らない女性同士は時折集たっお、自分たちがこっそり芋たこずを話しお楜しんでいるかのようだった。

 そんな噂を立おられおいるなどずは思っおもいない二人は毎日毎日着物を䜜り続けおは反物を仕入れるずいう生掻を続けおいた。

続く


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