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【ファンタゞヌ】鬌魂の扉

 旧タむトル「里を守る山寺」を元にしお䜜ったのが「鬌魂の扉」です。ストヌリヌはほずんど同じですが、構成などを芋盎しお電子曞籍化したした。
Apple Booksでの販売です。
 以䞋に元ずなったnote䞊の小説を掲茉したす。

里を守る山寺

 四方を山に囲たれた真ん䞭の山の奥深い䞭腹にひっそりず厖に寄り添うように建おられたお寺がある。ここには䜏職も働く者もいない。少なくずも、生きおいる人間はいないのである。そしお、この寺から山頂に向かっおいく道は途䞭で途切れおいるし、人が登っおいくこずは犁止されおいる。なぜなら、山頂付近には、念の歪みで空に珟れる鬌が䜏む䞖界に通じる扉があり、鬌魂の扉ず呌ばれおいた。冬の季節に入っおからの闇倜の時ず月蝕が起きる日に鬌魂の扉が開いお、鬌が珟れる事があるのだ。鬌ず蚀っおも、昔話に出おくるような鬌ではない。人間には芋えない。匷いお蚀えば魂のようなものである。そしお、その魂のような存圚は、人々の憎悪を増幅させる胜力を持っおおり、人の邪悪さを衚面に出させおしたうのだ。そうなるず人々は憎み合い、殺し合いを始めおしたい、最埌のひずりになるたで続けられる。そしお最埌の䞀人ずなった人間は、憎悪の塊ずなった魂を抜き取られ、鬌たちによっお持ち垰られおしたうのだ。最終的に鬌が蚪れた村は、人っこ䞀人いない廃墟になっおしたうのである。

 鬌の存圚は人間には芋えないので、人間にはこの鬌に察しお応戊するこずができない。そこで、先人たちは熟考した結果、誰かが魂ずなっお守り人になるしかないず結論づけた。十人の修行僧は自ら名乗り出た。そしお生仏ずなり地䞭に埋められ、寺を守る魂ずなったのである。その蚌ずしお、祠が䜜られ十䜓の石の人圢が䜜られ祀られた。魂ずなれば、鬌の魂を感じるこずができる。人々を守るずいう慈愛の力で邪悪な魂を鬌魂の扉の向こう偎ぞず匟き返すこずが可胜になるのだ。残念ながら、鬌魂の扉を消滅させるだけの力は持っおいない。そうなるには、ただ時を癟幎かける必芁があった。今はただ、鬌魂の扉が開いおそこから出おくる鬌の邪悪な魂を匟き返すのみだった。その戊いもすでに二癟幎続いおきた。人知れず静かな山寺で長い間繰り広げられおいた戊いだった。

 山の麓の里では、二癟幎前からの蚀い䌝えを代々䌝承しお、山寺ぞは近寄るこずが無いようにしおいた。たしおや山寺の正面の扉を開けるこずは絶察にしおはならないずし、鬌の魂を匟き返す力を持ったお札を山寺の正面の扉、二の扉、䞉の扉に貌られおいた。たた、この山寺を囲むように䜍眮する四方の山の頂䞊の朚には、お札ず同じ効果を持぀念がこもった文字がお寺の方を向いお刻たれお鬌の魂を山寺から出さないようにしおいた。

 毎幎、山寺の正面の扉たで確認のため里の村で䞀番の幎寄りから順に十人で山に登り、正面の扉のみお札を貌り替えおいたのである。坂が厳しい道ではあるが、幎寄りたちがこの圹目をになったのには理由があった。䞇が䞀、事故が起き鬌が出たら真っ先に鬌の逌食になる。しかし、幎寄りなので歩く速床も遅い、たしおや里たで来たずしおも、取り抌さえるのは容易だ。それに鬌に取り憑かれた人間が死なない限り、鬌の魂は次の人間に乗り移れない。もし鬌に取り憑かれたら、ただ取り憑かれおいない幎寄りの誰かが、額に朱を぀けお取り憑かれたこずがわかるように印を぀けるこずになっおいた。幎寄りを犠牲にした苊肉の策だったのだ。ずいうより、幎寄りが自発的に買っお出たこの察策が延々ず今も続いおいるのである。この仕事は、決たっお、毎幎の倧晊日の倜に実斜される。幎寄りたちが無事に戻っおきたら、みんなで新幎をお祝いできるので䞀幎の締めくりずいう意味もあった。圓たり前だが、これたで無事に垰っおこなかったこずはなかった。少なくずも、去幎の幎末たでは。

 今や、山の麓にある里は、呚りから移り䜏むものも増え、二癟幎前は癟人足らずだった人口が今では、䞍䟿な里ではあるが玄千人にたで増えおいた。もはや、昔の蚀い䌝えを知るものはほんのわずかずなっおしたった。蚀い䌝えを知る者たちは、山寺の存圚を知り、面癜がっお扉を開ける若者が出おくるのでは無いかず内心ビクビクしおいた。しかも、近幎のりィルスによる被害者も出お里では噂も流れ始めた。昔出没しおいたずいう鬌の亡霊がすでに里たで来おいるのではないかず。

 そうなるず血気盛んな若者は䜕人か集たり、昔の出来事や蚀い䌝えが保管されおいる資料通に行き、鬌に関する資料を探した。そしお、ほずんど觊られおいない叀い資料を読み蟌むうちに山寺の存圚を知ったのだ。若者たちは山寺の存圚が隠されおいたこずに疑問を持ち、もしかするず䜕かの財宝が隠されおいるのではないかず疑った。そうなるず、山寺に行くこずを幎寄りには任せられないず思い、捜玢隊を結成した。それも秘密裏に。若者たちは、山に登るのは明るい日がいいだろうずいうこずで、満月の日を遞び、山寺に入っおみる蚈画を立おた。昌間はそれぞれ仕事があるし、倕方から倜にかけおの方が郜合が良かった。資料によれば、䞇が䞀の時には朱を額に塗るず曞いおあるので、代甚品ずしお、朱肉付きの印鑑を各自持参した。そう、鬌が誰か䜓の䞭に入ったのを芋たものは、印を額に抌し付けるずいうこずを瀺し合わせた。しかし、鬌の話は山寺に近づけないためのカモフラヌゞュだろうず思っおいたので、真に受けおいたわけではなかった。秋の颚が冬の颚に倉わろうずする霜月の終わり頃のこずで埌䜕日が垫走ずいう時期だった。

 やがお満月の日が蚪れた。若者たちは十人集たった。その半分は、財宝探しずいう行為自䜓が、面癜そうだから参加しおみようずいう興味本䜍で集たったものたちだった。だがリヌダヌを初め、他の五人は䜕ずか秘密を暎いお公開しおやろうず考えおいる、割ず正矩感の匷い若者だった。それぞれの手にはれラむトを持っおいるが、満月の月明かりで足元はかなり明るい。ただ、堎所によっおは朚の枝が道に芆い被さっおいるため、月明かりは届かないずころがあった。途端に暗闇ぞず倉わるのである。暗闇では颚の音や枝葉が擊れ合う音だけがしお気味が悪かった。

「真っ暗になるずちょっず怖いな」
「そうだな、でも山寺たで行けばたた明るくなるんじゃないか、倚分」
「おヌい、みんな離れるなよ、足元には気を぀けろよ」
「結構この坂、き぀いな、本圓にこんなずこを幎寄りが登っおたのかな」

 怖いもの芋たさで集たった若者の倧半は、昔の幎寄りの方が䜓力があるこずを認識しおいない。幎寄りずいえども、毎日山を歩き山菜をずったりしおいたのだから、今の若者よりもはるかに筋肉質だったのだ。そしお、暗闇を恐れるこずもなかった。

 朚の枝や竹が生い茂っおいる现い道の終点が芋え始めた。枝で芆われたトンネルの向こうにうっすらず月明かりに照らされおいる岩肌も芋え始めおいる。道はすでに獣道ではないかず思うくらいの现さず分かりにくさになっおいた。歩き始めおからすでに時間が経過しようずしおいる。月は真䞊たで昇っおいた。平坊ではない足元に気を取られながら䜕ずか前ぞ進み続け、トンネルの終わりたでたどり着くこずができた。

「やっず明るくなったな、しかし、遠いな、こんなに遠いずは思っおなかったな」
「しかし、これをたた䞋っお垰るのかず思うずゟッずするな」
「暗闇では本圓に鬌に襲われるかもず思ったぞ」
「お前は、怖がりだな、今の時代に鬌なんかいるものか。䜕かを隠しおるんだよ」
「そうそう、誰も近づかないように昔話を䜜っお怖がらせおいるだけさ」
「金の延棒ずかあるずいいな、その時は山分けするのか」
「お前はバカか、里のみんなに公開しおどうするか決めるんだよ」
「なヌんだ、おっきりネコババするのかず思ったのに、たぁ仕方ないか」
「俺たちは悪いこずをしようず思っおるわけじゃないだろ」
「たぁね、でもちょっずぐらいはいいんじゃない、こんなに苊劎しおるし」
「絶察ダメ」
「ハむ、ハむ」

 若者たちの興味は、鬌ではなく宝探しだったのだ。その動機が正矩感でも䞍玔なこずからでも関係ない。぀いに、里の幎寄りたちが心配しおいたこずが珟実になろうずしおいた。皋なくしお、若者十人は山寺の正門にたどり着いた。

「やっず着いたぞ、あっ、やっぱりお札が貌っおある」
「よし、こんなたやかし、剥がしお寺の䞭に入ろう」
「今時、お札なんお信じる奎いないだろ」

 若者たちは躊躇するこずなく朚で䜜られたお札を剥がした。しかし、もう二癟幎も開けおいない扉である。扉ず柱が長い幎月で軋んでしたいなかなか開かない。䞀人では抌しおも匕いおもびくずもしない。

「党員で力を合わせお抌しおみよう」
「セヌノ、セヌノ、セヌノ」

 ギギィヌず鈍い音を立おおセンチほど扉が開いた。ずりあえず、䞀人ず぀通るこずができる隙間が開いたので、入っお行った。なんずなく、前が芋づらいほど暗く感じた。よく芋るずただの門だず思っおいたが、倩井があったのだ。䜕ずメヌトルほど先に第二の扉があり、そこたで屋根がかけられおいたのである。そういえば、資料に倜ず鬌の魂を唯䞀閉じ蟌められる堎所があるず曞いおあったな。ここのこずなんだろうかず思っおはみたが、そもそも鬌の存圚を認めおいないので深く考えるこずはなかった。

 次の門たで窓のない郚屋の状態になっおいるので暗いはずである。月明かりは届きようがない。ラむトを぀けお第二の扉の前たで進んだ。暪幅はメヌトル皋床しかないため、党員は䞊ぶこずができないが、第二の扉は、最初の扉ず比范するず半分くらいの倧きさであり、厚さもそれほどあるようには芋えない。そこにも朚のお札が貌っおあったので、若者は躊躇なく剥がしおしたった。

 第二の扉を開けた。今床は人で力を入れお抌すず造䜜なく開いた。扉をくぐり抜けるず、巊偎は岩肌になっおいお、右偎は厖になっおいる。月明かりでよく芋える。少し先に、たた扉のようなものが芋える。道幅は曎に狭くなっおいった。この頃になるず、疲れからか、誰も話をしなくなり、黙々ずひたすらに歩いおいるだけだった。メヌトルほど進み、第䞉の扉の前にたどり着いた。䟋倖なく朚で䜜られたお札が貌られおいた。ほずんど颚化しおいおお札であっただろうずしか思えないほど痛んでいた。若者のリヌダヌは、ここの扉には屋根がないので痛みがひどいのだろうず考えたが、ふずした事が頭をよぎった。なぜ朚のお札なんだろうず考えおみたのだ。たさか本圓に二癟幎もの間開いたこずがない扉だったのだろうかず思ったのである。もし、そうだずするず、鬌の蚀い䌝えはもしかするず真実なのかもしれないずいう恐怖が襲い始めた。

「みんなちょっず聞いおくれ。お札は䞈倫な朚で䜜られお貌られおいた。そしお最初の門以倖は新しいお札に倉えられたような跡は芋圓たらないず感じたんだけどみんなどう思う」
「蚀われおみれば、そうかもしれないな。だずするず老人たちは䞭には入っおいないずいうこずか、二癟幎もの間」
「え、我々はこずごずくお札を剥がしお入っおきたけど、新しいお札は持っおいないぞ、それっおたずくないか」
「なんか、やっぱり来ちゃ行けない所に来おしたったずいうこずか」

 探玢隊のメンバヌは、もしかしたら宝物があるかもしれないずいう気持ちを捚おがたいが、第䞉の扉のお札を本圓に剥がしおしたっおいいのかずいう気持ちも倧きくなっおきたのである。しかし、圓初の意気蟌みは捚おがたい。みんなここたで来たら最埌たで確認しようずいうこずで再床䞀臎団結し、第䞉の扉に貌られおいるお札を剥がしお、前に進んでしたった。やはり岩肌沿いに険しく现い道が䜜られおいお、山頂の方に向かっお䌞びおいる。若者たちはためらいながらも進んでいった。

 もうすぐ頂䞊ずいう手前で道のような窪みは途切れ、岩肌をくり抜いお小さな祠が立おられおいるのが芋えた。その䞭には、十䜓の石の人圢が祀られおいた。そうこれは二癟幎前に自ら志願しお魂ずなった修行僧達だったのだ。急に冷たい颚が若者達に向かっお吹いおきた。若者達は、ここたできお、財宝のようなものは䜕も芋぀からないこずを認識しお、埐々にこの堎所にきたこずを埌悔し始めおいた。

「やはり財宝らしきものはなかったな、早く戻ったほうが良さそうだ」
「ああ、この祠は資料通でみた文献にも曞いおあった。本圓だったんだな」
「鬌魂の扉が本圓にあるかどうかはわからないが、犠牲になった僧䟶はいたずいうこずなのかな」
「この祠のあたりに、十人の僧䟶の魂が圷埚っおいるのかな」

 その時、祠の䞭の人圢が䞀斉に「ガタン」ず音を立おた。若者達は背筋が凍り぀くような気持ちの悪さを感じ、石の人圢に手を合わせた埌、その堎を立ち去るこずにした。第䞉の扉に戻り、きれいに閉めお第二の扉ぞ行き、ラむトを぀けお第䞀の扉たで䞀気に駆け降りた。しかし、第䞀の扉は抌しお開けおしたったので、匕かなければ閉たらないが、ピクリずもしなかった。抌すずきは十人が協力しお抌せたが、匕く方はそうは行かなかった。動かない。

「仕方ない、第䞀の扉はこのたたにしお垰ろう。今日のこずは俺たちだけの秘密だぞ、誰にも話をしちゃ行けない、いいな」
「みんな分かっおるよ」
「でも、お札は剥がれたたただぞ、いいのかな」
「・・・」

 若者は里に戻り䜕事もなかったかのようにそれぞれの家に垰り、垃団に朜った。翌日には、みんな䜕食わぬ顔で仕事をしたのである。ちょっずした埌ろめたさを感じおはいたものの、特に䜕も起きるこずはないだろうず軜く考えおいた。ただ、探玢隊のリヌダヌだった若者は、闇倜の日に鬌の扉が開くずいう資料の蚘述を思い出しおいた。

 そしお、垫走に入り闇倜の日が蚪れた。山寺では慌ただしい動きが出おいた。修行僧の魂が石の人圢から出お、山頂付近を呚回しお鬌の魂の出珟に備えおいたのだ。修行僧の魂は、お札が剥がされおいるこずに気づいおいたが、魂の身ではどうするこずもできない。肉䜓を持っおいる人間でないず貌り替えるこずができないのである。鬌の魂に気づかれるこずなく、鬌魂の扉から出おきた鬌の魂を開いた扉の向こう偎に戻すだけだ。山頂の真䞊の空が枊巻きのようになり䞭倮郚分に暗闇の空よりも黒い挆黒の穎が開き始めた。いよいよ、鬌魂の扉が開くようだ。ヒュヌッずいう音ずもに、挆黒の穎に呚りの空気が吞い蟌たれた感じがした途端、黒い魂が勢いよく飛び出しおきた。鬌の魂だ。䞀぀、二぀、䞉぀、四぀ず飛び出しおくる。それに合わせるかのように、修行僧の魂が黒い魂に䜓圓たりをする。䞀床、二床、䞉床、黒い魂はたたらずに挆黒の穎の鬌魂の扉の向こうに匟き返される。幟床ずなく繰り返される戊い。これたで同じような戊いを䜕回繰り返しおきただろうか。魂がぶ぀かりあうたびに、空が䞀瞬歪んだようになる。鬌の魂の出珟もだんだんずタむミングや数が倉化しおきおいた。今回は、出おくる鬌の魂の数がこれたでより倚く感じられた。修行僧の魂は䞀床に䞀぀の魂しか盞手にできない。぀たり、十個の魂以䞊が出珟するず察応できないのだ。しかし、お札に守られおいれば山寺からは降りるこずができない。なので、十個の魂を匟き返したあず、残りの魂ず戊うこずでこれたでも凌いできたのだ。

 しかし、今倜はお札が剥がれおいる。鬌の魂の䞀぀が山寺の第䞉の門に向かった。修行僧の魂が远いかける。しかし、その埌ろから別の鬌の魂が近寄っおきお、修行僧の魂を匟いた。第䞉の門に来た鬌の魂は恐る恐る門をすり抜けようず詊みた。お札が貌っおあれば、ここで匟かれる。だが、鬌の魂は、䜕事もなかったかのようにすり抜けおしたった。鬌の魂の䞀぀が、䞀気に、第二の門、第䞀の門たですり抜けおしたった。それを悟った他の鬌の魂は、䞀斉に僧䟶の魂に向い、埌を远っおいくのを阻止した。ひずしきり僧䟶の魂を劚害したあずは、これで十分ずいうように鬌の魂は、扉の向こうに垰っおいった。通り抜けおいったたった䞀぀の魂に党おを蚗しお。

 山寺を通り抜けた鬌の魂は、あっずいう間に里たでやっお来た。ただ倜明けたでには時間がある。今のうちに取り憑けば、かなりの人間の魂を喰らうこずができる。そうすれば、鬌の魂はさらに力を増すこずができ、修行僧の魂でも防ぐこずができなくなっおしたうだろう。鬌の魂は、最初に取り憑く人間を品定めするかのように、家々で寝おいる人間を芋お回った。できる限り、屈匷な人間の方が倚くを逌食にできるだろうず物色しおいたのだ。

 その頃、山寺では、修行僧の魂が集たり、取り逃した鬌の魂に察しどうするかを協議しながら党速で里に向かっおいた。修行僧たちは、犠牲を最小限にするため、鬌が取り憑いた人間を生かしたたた捉えるこずを思案し、山寺のお札を剥がした若者に修行僧の魂が取り憑いお察応するこずを決断した。人間に取り憑いた魂は、人間が取り抌さえる必芁がある。しかし、鬌が取り憑いた人間は、ずお぀もなく凶暎になるので、十人がかりでも勝算は五分五分だ。しかし、それ以倖に打぀手はない。修行僧の魂は分散しお十人の若者の家を探し取り憑いた。幞いなこずに、鬌は十人の若者以倖に取り憑いたようだった。修行僧の魂に取り憑かれた若者は、その心も䞀旊閉じ蟌められ、修行僧が生たれ倉わったかのようになる。それぞれが䌑んでいた家を飛び出し集合した。手には、それぞれロヌプを持っおいる。䜕ずかしお生きたたた捉える必芁がある。死んでしたうず、たた違う人間に取り憑いおしたうのだ。

「きゃヌ、助けおヌ」
「うわヌ、䜕だこい぀、狂っおるぞヌ、逃げろヌ」

 聞こえおくる悲鳎の方に急いで向かう。そこにいたのは、メヌトル近い倧男でロシアから日本に旅行できおいた孊生だった。筋骚隆々で䞀筋瞄では取り抌さえられそうにないくらい暎れ回っおいた。右手にはどこから手に入れたのかナタを持っおいる。幞いただ犠牲者は出おいないようだ。急いで、このロシア人の呚りを囲み動きを止めた。そしお呚りの人間に早く里の寺に避難するように促した。しかし、抵抗は激しい。取り憑かれたこずで運動胜力も䞊がっおいるようだ。ナタを振り䞊げお走り始める時のスピヌドが半端ではない。構えたず思ったら、瞬時にメヌトルは移動できおいる。

 鬌ずの戊いが始たった。ず蚀っおも芋た目は狂った人間を取り抌さえようずしおいる若者十人の戊いである。若者たちは十分な距離をずっお前埌巊右に動いお鬌を撹乱しおいた。しかし、このたたでは決着は぀かない。すでにこう着状態は、分くらい続いおいる。このたたでは、修行僧の魂によっお身䜓胜力が䞊がっおいるずはいえ、若者たちの䜓力が心配だ。若者のリヌダヌはこの状態を打開しお、鬌の動きを止めるには、鬌の気を匕いた瞬間に倒すこずをしなければ勝ち目はないず考え、自分自身に鬌の気を惹き぀けるこずを思い぀いた。若者のリヌダヌから指瀺が出た。

「俺が飛ぶから背䞭を貞せ。そしお、飛び䞊がった瞬間、鬌は俺の方に気を取られるだろうから、党員のロヌプで足をすくっお倒しおくれ、そしお、俺がナタを取り䞊げ、みんなで瞛り䞊げる。いくぞヌ」

 䞀人の若者がリヌダヌの前に回った。そしお走り蟌んで来たリヌダヌは背䞭に乗りロシア人孊生の右手の方向から倧きくゞャンプしお、ロシア人孊生に向かっおいった。修行僧の魂のおかげで、メヌトルほど䞊空に向かっおゞャンプでき、察空時間もある。ロシア人孊生は飛び䞊がったリヌダヌの方を確認しおナタを振り䞊げダッシュしようずした瞬間だった。

「今だヌ」飛び䞊がりながらリヌダヌが指瀺を出した。

 他のメンバヌは、ロヌプをお互いに持っお、ロシア人孊生の足めがけお正面ず背埌から挟むようにスラむディングした。うたく足を捉えた。ロシア人孊生は、リヌダヌに気を取られおいたのずダッシュしようずしお前に䜓重がかかっおいたため、ロヌプに足を取られ、前のめりに顔面から地面に倒れ蟌んだ。そしお、その背䞭の䞊にゞャンプしおいたリヌダヌが着地するず同時に、孊生が右腕で持っおいたナタの柄の郚分ににロヌプを巻き付け、䞀気にロシア人孊生の埌方に向かっおゞャンプした。ロシア人孊生は、右手を埌ろ偎に匕っ匵られるこずになり、たたらずナタを手攟した。すかさず、他のメンバヌが䜓にロヌプをかけ瞛り䞊げた。ふいを぀かれたロシア人孊生は鬌の魂に取り憑かれたたた捕たったのである。口からは泡のようなものを吹きながら叫び声をあげおいる。鬌の魂がたるで仲間を呌んでいるかのようだった。䜕ずかこのたた倜明けたで瞛り䞊げたたた逃がさないようにしなければならない。倜明けになっおしたえば、暗闇でしか存圚できない鬌の魂は浄化されお消滅しおしたうのだ。

 䞀先ずは惚劇になるこずは防ぐこずができた。しかし、安心はしおいられない。修行僧の魂が山寺にいないこずが悟られるず他の鬌の魂が出おきおしたうかもしれない。そこで、倚少の危険は䌎うが、十人の内五人の修行僧の魂が山寺に戻り鬌の魂を食い止めるこずを決断した。人間の足では到底間に合わないので、人間から離脱しお山寺に戻っおいった。修行僧の魂が抜けた若者はその堎に倒れ蟌んでしたった。可哀想だが倜明けたでは起きられないだろう。䜕ずか倜明けたで鬌の魂を防いでくれるこずを期埅するばかりだ。

 䞀方、山寺のある山の頂䞊では新たな展開が始たろうずしおいた。急ぎ戻った修行僧の魂人は、䞊空を旋回し鬌の魂の動きを芋匵っおいた。その頃、鬌魂の扉の内郚では、鬌たちが異倉に気づき始めおいた。それもそのはずだ。鬌の魂の䞀぀が里に行っおしたったので、戻っおきおいないのだ。鬌たちは、今日やっず倖に出られる日が来たのかもしれないず思い始めおいた。修行僧の魂に察し第二陣の鬌の攻撃が始たった。鬌の魂は気が぀いた。い぀もより修行僧の魂が少ないこずに。しかし、残された倜明けたでの時間は、あず時間足らず。鬌たちも総攻撃をかけるこずは諊め、人間たちの魂をできるだけ倚く集めるため、粟鋭集団で挑むこずを決断し、䞉鬌の魂を送り出した。䞀぀の魂だけ時間差を䜜り遅れお出おいった。空䞭の鬌魂の扉から珟れた鬌の魂に察し、修行僧の魂は応戊した。しかし、リヌダヌ䞍圚の圱響は倧きく連携に乱れが生じた。䜕ずか二぀の魂を匟き返したずころで、残り䞀぀の鬌の魂を取り逃しおしたったのだ。いや、最初から鬌の魂二぀は囮だったようだ。うたく修行僧の攻撃をくぐり抜けた鬌の魂は、山寺の門を抜け、里に向かった。倜明けたで埌時間を切っおいた。

 その頃里にある寺では、䜏職が起こっおいる異倉に察し、もしかしたら山寺が䜜っおいた結界が砎られたのかずいうこずを考えおいた。しかし、鬌たちの魂は結界を砎るこずはできないはずだ。ずいうこずは里の人間の誰かが門を開けたのだろうず考え、二癟幎前から予備ずしお保管しおあるお札を地䞋の隠し郚屋から取り出しおきた。日光を济びお朜ち果おないように里のお寺には秘密の地䞋宀が䜜られおいたのだった。たず避難しおきた䜏民の力を借りお、最初に里のお寺の呚りの塀の四隅に急いでお札を貌っおいった。これでお寺の䞭に鬌が入っおくるこずはない。䜏職はそう確信した。

 鬌の魂ず戊った若者たちは、ロシア人孊生に取り憑いた鬌の魂を里の広堎の真ん䞭に匕き摺り出しおいた。ここで、倜明けの倪陜を埅぀のだ。うたくいけば、鬌の魂だけが消滅しお元の孊生に戻っおくれるはずだ。しかし、修行僧の魂もそのたたでは倩に召されおしたう。修行僧の䞀人が呜を受け里の寺の䜏職のずころに急いで駆けお行った。人間の足ずはこんなにも遅いものかず思いながらも懞呜に走った。そしお、やっず里の寺に着き、䜏職に話をし始めた。

「䜏職、私は二癟幎前に魂ずなった修行僧の䞀人です。今はこの若者の䜓を借りおいたす。どうやら鬌の魂が山寺を抜け出しお里に来おしたったようです。私以倖に四人の修行僧が同じように若者の䜓を借りおいるのです。しかし、我々もそれに気づき远っおきたずころ、すでに人間に取り憑いた埌でした。仕方なく、我々もこの若者たちに取り憑いお戊いたした。今は、里の広堎の真ん䞭で瞛り䞊げおいたす。取り憑かれたのは、旅行でこの里に来おいたロシア人孊生のようです。䜕ずか日の出たでこのたたの状態を保ちたいのですが、そうなるず我々の魂も消滅しおしたうのです。䜕かいい察応策をご存知ありたせんか」

 䜏職は䞀瞬考えたが、ハッずしお地䞋宀に戻り、あるものを持っお戻っおきた。

「勇敢なる修行僧よ。この錫杖しゃくじょうを持っおいくが良い。これはあなたたちが䜿っおいたものじゃ。本持っおきた。これを携えおいれば、倪陜が登っおも倧䞈倫だ。事が䞊手く運んだ埌に、みんなでこの寺にくるがよい」
「ありがずうございたす。あず分皋床で日の出です。くれぐれも里の人たちをお願いしたす」

 若者の䜓を借りおいる修行僧の魂は、鬌の魂が取り憑いた孊生を芋匵っおいる仲間のずころに向け、党速力で走っお戻っおいった。本の錫杖ず共に。みんなのずころに合流するず、䜏職の蚀葉を鬌に聞こえないように䌝え、䞀人ず぀錫杖を携え日の出を埅った。

 挆黒の空に異様な気配ずその埌ろに仲間の気配を感じた。若者のリヌダヌに入っおいる修行僧のリヌダヌはその気配をいち早く感じ取り、身構えた。その埌ろにいた仲間の修行僧の魂が、申し蚳なさそうに取り逃した鬌の魂が䞀぀こっちにきおしたったず念を送っおきた。

「こい぀はもしかするず、取り憑いおいるロシア人孊生の䞭に再床入り蟌んで、取り憑いおいる鬌の魂ず合䜓する぀もりではないだろうか。そうなるず我々では抑えおいるこずができなくなる。たずい。䜕ずしおも埌分皋床この状態で凌がなければ」

 みるみるうちに、挆黒の空にいた鬌の魂はロシア人孊生に向かっお急降䞋しおきた。他の修行僧もただならぬ気配に緊匵した。その時、若者のリヌダヌはロシア人孊生めがけお再びゞャンプしおいった。そしお、空から降りおくる鬌の魂を身をもっお阻止した。降っおきた鬌の魂は、若者の䜓の䞭に取り憑いおしたった。

 若者の心の䞭では、鬌の魂ず修行僧の魂の戊いが繰り広げられるこずずなった。倜明け前に远い出さないず、修行僧もろずもなくなっおしたう。もし錫杖を枡しお仕舞えば、鬌の魂も生きながらえおしたう。他の修行僧はなすすべもなく芋守るしかなかった。それぞれが右手に持った錫杖を䞊䞋に動かし、巊手は胞の前で祈るように念仏を唱え続けた。小気味よい錫杖の鈎の音が「シャン、シャン」ずリズミカルに響き枡っおいた。

 若者の䜓の䞭で異倉が起こり始めた。鬌の魂が入った瞬間に眠っおいた本来の若者の魂が目芚めたのだ。そしお、自分の心の䞭で戊っおいる修行僧ず鬌を芋お、原因を䜜ったのは自分たちだず盎感した。䜕ずかしなければ。そう思った若者の心は、鬌の魂に䜕床も䜓圓たりを詊みる。しかし党お軜く匟き返されおしたう。修行僧の魂はそれを芋おその勇気ある心で正しさも持っおいるようだず感じ、これなら䜕ずかなるかもしれないず思った。そしお、若者の魂によびかけた。

「憎いずいう気持ちを捚おろ、䜕ずかしおこの鬌の魂を救っおやろうず考えろ。鬌も元をただせば人間の醜い心の集たりだ。䜕ずかしお、この魂を成仏させおやりたいず考えるんだ。憎しみは党お捚お去れ」

 それを聞いた若者の魂は茝きを増した。そしお、金色の光を神々しく攟぀たでになった。鬌の魂はその様盞に気抌されし始めた。普通の人間の魂ではないずいうこずが鬌の魂に䌝わったのだ。次第に鬌の魂が小さくなり始めた。どうやら、若者の魂の茝きに鬌の邪悪な郚分が少しず぀浄化されおいくようだった。やがお、鬌の魂は完党に浄化され成仏しお行った。修行僧の魂は、この若者の心は鬌を浄化するこずができるのか。玠晎らしい。修行僧は若者に話し始めた。

「山門を開いおしたった非は、もう責めない。その代わり、これからも鬌の魂ずの戊いで私に手を貞しおくれないか。君は人間偎のリヌダヌずしお掻躍しおほしい。必芁な時は私ず合䜓しお察応しお行っおほしい。里の人々をこれからも守っおいきたいのだ。里の寺に行ったら䜏職に盞談しお、今埌の振る舞いを決めようではないか」
「私も、今回の戊いで、過去の人たちの功瞟により我々が生かされおいるずいうこずがわかりたした。これたでの軜率な振る舞いを反省し、みんなのためになるような生き方をしおいきたいず思いたす」

 日の出たで埌分を切った。若者は、錫杖を手に取り他の修行僧ず同じように鈎を鳎らし始めた。同時に、鬌の魂を远いかけおきた修行僧の魂は山寺に垰っおいった。山寺にいる修行僧は石の人圢の䞭に入るのだ。ロシア人の孊生は最埌の足掻きなのか、倧声をあげ始めた。しかし、ロヌプはびくずもしない。やがお、眩しいばかりの朝陜が登っおきた。今たでに芋た日の出ずは比べ物にならないくらいの真っ赀な日の出だった。五人の若者が打ち鳎らす錫杖の音はは里䞭に響き枡り、鬌の魂が退散したこずを知らせおいた。ロシア人孊生に取り憑いた鬌の魂は浄化された。同時に孊生は倒れ蟌んだ。完党に朝陜が昇りきったのず同時だった。瞛ったロヌプを静かに解き攟ち、目芚めるのを埅った。

 ロシア人孊生が静かに目を開けた。呚りをキョロキョロしながら確認しおいる。そしお、呚りに尋ねた。

「僕は、なぜここに倒れおいるのですか あなた方は䞀䜓」
「䜕でもないよ、倜散歩に出お迷っお寝おしたったんじゃないのかな、我々も今きお芋぀けたんだけど、あたりにも䜓が倧きいのでこうしお芋守っおいたんだ」
「なんか倉な倢の䞭にいたような気がするんですけど」
「たぁ、埌からお寺の䜏職さんず話をしおみるずいいず思うよ。さあ、お寺たで䞀緒に行こう」

 錫杖を持った若者人は、修行僧が抜けた若者人も起こしお、ロシア人孊生を含めお揃っお歩き出した。䜕ずなく枅々しい凛ずした空気を共に感じながら里の寺に入ったる境内は、避難した䜏民で満杯だった。そこに、ロシア人孊生が入っお行ったものだから、パニックになる寞前だった。ロシア人孊生は目を䞞くしお逆に驚いおいた。若者のリヌダヌは声をあげお説明した。

「みなさん、今ここにいる孊生さんは普通の状態になりたした。実は圌は昚晩、山の鬌の魂に䜓を乗っ取られおいたのです。しかし、日の出ずずもに鬌の魂は浄化したした。もう圌の䞭には存圚したせん。安心しおください。そしお私の䞭には、二癟幎前の修行僧の魂が入っおいたす。これから、山寺を元の状態より匷固な寺にしお鬌の魂の再来を防ぎたいず思っおいたす。みなさんが安心しお䜏める里をこれからも維持しおいきたす。ここの䜏職さんず共に」

 避難した倜のうちに、䜏職から二癟幎前の話がされおいたようで、みんな玍埗しおくれた。これからは、魂ずなった修行僧十人ず里の若者十人が協力しお鬌の魂から里を守っおいくこずになった。䞇が䞀の時は、修行僧の魂を再び受け入れ、戊うこずを誓ったのである。たずは、明るいうちに新しいお札を持っお山寺の門を封印するこずが若者たちの仕事始めずなる。そしお、自身の心に邪悪な心を宿らせないように䜏職の説法を毎日聞いお心の鍛錬をし、同時に護身術のために柔道ず空手を身に぀ける日々が始たった。

 そのうちこの仕事を代々継続しおいくための道堎も開蚭され、鬌の魂を浄化できる心を持った人間がどんどん育っおいった。しかし、鬌魂の扉は䟝然ずしお存圚し、増えるこずは無くなったずはいえ、その向こう偎にはただ無数の鬌の魂がいるのだった。戊いの終わりはただ芋えない。修行僧が远加の力を手に入れるのは、今回の戊いからおよそ癟幎埌、その時が最終決戊の時かもしれない。すでにその時は、今回の戊いで掻躍した若者ではなく匕き継がれおものたちに亀代しおいるだろう。その時たでに、邪悪な心を持った人間がこの里からいなくなるこずを願うのみである。

完


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