エレファントカシマシ|交差点で何も起きなかった
交差点で、バンドメンバーが突っ立っている。
子供の自分は、「いつ始まるんだろう」と思いながら見ていた。
自分にとって、最初のエレファントカシマシはその映像だった。
「やさしさ」だったのか、「男は行く」だったのか。どちらもeZで見ていた気がする。記憶の中心にいるのは、交差点でほとんど動かないバンドの姿だ。
子供のこちらは、当然どこかで何かが起きると思って見ている。演奏が始まるのか、誰かが歌い出すのか、画面が変わるのか、何か物語が動くのか。
でも、なかなか何も起きない。
こちらはずっと展開を待っているのに、画面の中ではエレファントカシマシが突っ立っている。まだ突っ立っている。
なんかある?と思っているうちに、そのまま曲が終わった。
今見ると、かなり斬新なミュージックビデオだ。
今回調べてみると、「やさしさ」を撮ったのは坂西伊作。eZの主力スタッフでもあり、長回しを得意とした人らしい。自分は、まんまと待たされていた。笑
その映像は、ずっと頭に残った。
eZには、岡村靖幸もTHE STREET SLIDERSも出ていた。もともと、クセの強い人が珍しくない番組だ。
その中でも、エレファントカシマシを見た時は、**「なんだこのピリピリした人」**と思った。熱くて、かなり男臭い。
バンドブームの中には、変わったバンドも、クセの強いバンドもたくさんいた。でもエレカシは、格好が変わっているとか、ふざけているとか、そういうクセではなかった。
歌い方も、表情も、言葉も、そのまま前に出てくる。少し引いて見られる隙がないというか、画面越しなのに、ずっと宮本浩次に絡まれている感じがした。笑
ミヤジの歌い方は、普通に歌おうとするとかなり難しい。というより、エレカシの曲はだいたい歌いづらい。
あのクセを真似しようとすると、もう歌ではなくミヤジの真似になってしまう。それくらい、声と歌い方が曲にくっついていた。
その後、自分はどっぷり海外バンドにハマっていた。UKのバンドやアメリカのオルタナティブを追いかけていて、エレカシの動きを細かく見ていたわけではない。
それでも、エレファントカシマシは、むしろ後年になってからよく聴くようになった。
その前に聴いた「奴隷天国」は、かなり強烈だった。挑発的で、言葉も音もグサグサ来る。
ブルーハーツの言葉も刺さったし、エレカシの言葉も刺さった。ただ、その刺さり方はかなり違う。
「奴隷天国」は、励ますというより、いきなり目の前に突きつけてくるような曲だ。自分も、あれはかなり食らった。
その後、1994年の『東京の空』を最後にEPICとの契約が終わり、1996年は新しいレコード会社からの再出発になった。
それでも、自分にはかなり急に見えた。
気づけば「悲しみの果て」が流れていた。その翌年には「今宵の月のように」が出た。
昔から追っていた人には、もっと長い流れが見えていたのだと思う。
ただ、不思議と「変わった」とは感じない。
曲の届き方は変わったのだと思う。でも「悲しみの果て」も「今宵の月のように」も、ただ丸くなったようには聞こえない。あの真っ直ぐさは、ちゃんと残っていた。
世の中に広く知られるようになっても、画面の向こうから宮本浩次に絡まれている感じは、今も同じだ。笑
