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No.2067 青春の息吹と鼓動と熱量

「甲子園」の名がつく高校生大会は、「全国高校野球選手権大会」の通称「甲子園大会」になぞらえて、各種のスポーツや文科系クラブ活動など、高校生の全国大会の親近感ある名称として用いられています。

「甲子園」とは、体育・文化を問わず、高校生たちが目指す最高の舞台であるという意味が籠められた聖地なのだと思われます。

ちょっと思い出すだけでも、「俳句甲子園」「書の甲子園」「アニメ甲子園」「かるた甲子園」「クイズ甲子園」「ダンス甲子園」「まんが甲子園」などがありますが、Wikipediaで調べたところ、スポーツ系で6大会、文科系では81大会も「甲子園」のつく名称が挙げられていました。
 
これは予想もしない驚きでした。「甲子園」は、日本人の高校生の夢を叶えたいとする、それぞれの魅力(理想)の場なのでしょう。

さて、今日は、1998年(平成10年)から毎年8月に愛媛県松山市で開催されてきた「全国高校俳句選手権大会」(通称:俳句甲子園)での最優秀俳句をご紹介したいと思います。

第1回 (1998年=平成10年)
秋立ちて加藤登紀子が愛歌う 
白石 ちひろ(愛媛県立松山中央高等学校)

第2回 (1999年=平成11年)
朝顔の種や地下鉄乗り換えぬ 
森川 大和 (愛光高等学校)

第3回 (2000年=平成12年)
裁判所金魚一匹しかをらず 
菅波 祐太 (愛光高等学校)

第4回 (2001年=平成13年)
カンバスの余白八月十五日 
神野 紗希 (愛媛県立松山東高等学校)

第5回 (2002年=平成14年)
夕立の一粒源氏物語 
佐藤 文香 (愛媛県立松山東高等学校) 

第6回 (2003年=平成15年)
小鳥来る三億年の地層かな 
山口 優夢(開成高等学校)

第7回(2004年=平成16年)
かなかなや平安京が足の下
高島 春佳(京都市立紫野高等学校)

第8回(2005年=平成17年)
土星より薄に届く着信音
堀部 葵(京都市立紫野高等学校)

第9回(2006年=平成18年)
宛先はゑのころぐさが知つてをる
本多 秀光(愛媛県立宇和島東高等学校)

第10回(2007年=平成19年)
山頂に流星触れたのだろうか
清家 由香里(愛知県立幸田高等学校)

第11回(2008年=平成20年)
それぞれに花火を待つてゐる呼吸
村越 敦(開成高等学校A)

第12回(2009年=平成21年)
琉球を抱きしめにゆく夏休み
中川 優香(熊本県立菊池高等学校)

第13回(2010年=平成22年)
カルデラに湖残されし晩夏かな
青木 智(開成高等学校)

第14回(2011年=平成23年)
未来もう来ているのかも蝸牛
菅 千華子(神奈川県立厚木東高等学校)

第15回(2012年=平成24年)
月眩しプールの底に触れてきて
佐藤 雄志(開成高等学校)

第16回(2013年=平成25年)
夕焼や千年後には鳥の国
青本 柚紀(広島県立広島高等学校)

第17回(2014年=平成26年)
湧き水は生きてゐる水桃洗ふ
大橋 佳歩(愛知県立幸田高等学校)

第18回(2015年=平成27年)
号砲や飛び出す一塊の日焼
兵頭 輝(愛媛県立宇和島東高等学校)

第19回(2016年=平成28年)
豚が鳴く卒業の日の砂利踏めば
池内 嵩人(愛媛県立松山中央高等学校)

第20回(2017年=平成29年)
旅いつも雲に抜かれて大花野
岩田 奎(開成高等学校)

第21回(2018年=平成30年)
滴りや方舟に似てあなたの手
桃原 康(興南高等学校)

第22回(2019年=令和1年)
中腰の世界に玉葱の匂ふ
重田 渉(開成高等学校)

第23回(2020年=令和2年)
太陽に近き嘴蚯蚓を垂れ
田村 龍(海城高等学校B)

第24回(2021年=令和3年)
ウミユリの化石洗ひぬ山清水
辻 颯太(岡山県立岡山朝日高等学校)

第25回(2022年=令和4年)
草いきれ吸って私は鬼の裔
阿部 なつみ(岩手県立水沢高等学校)

第26回(2023年=令和5年)
月涼し伽藍に蟹の道のある
小田 健(名古屋高等学校A)

第27回(2024年=令和6年)
戦死者のハンカチ青しそれを振る
岡 知咲恵(東京家政学院高等学校)

第28回(2025年=令和7年)
天に地に鶺鴒の尾の触れずあり
本間 まどか(学習院女子高等科)

大会で作られた句の中から、最優秀句1句、審査員が1句選ぶ優秀句と20句程度の入選句が選ばれ、最優秀句は松山市の椿神社の玉垣に句碑として建立されるといいます。

私は、第6回の
「小鳥来る三億年の地層かな」
のスケールの大きい時の流れと、目の前の小さな命の輝きを詠んだ句に「ほ」です。
また、第17回の
「湧き水は生きてゐる水桃洗ふ」
の句に深く共感し、地球の湧き水が生き物たちの豊かな命の水であることの祈りの句にも思えて、感動しました。

また、これとは別に句合(くあわせ)形式の団体戦は、2チームが赤白に別れて歌の優劣を競う5人一組のディベート(討論)で行われます。機知と論理の火花が飛び散る、見応え聴き応えのある試合です。全国代表の40チーム前後が頂点を目指すハイレベルの大会で、審査員泣かせの様に紅白の旗が分かれます。

韻文や作文・小論文等々、学生対象の課題における今日的課題の一つとして、AI機能を駆使した作品が提出されつつあるという事実です。今や、夏休み課題や読書感想文などもこの種の弊害が現れ、出題者は、偽物の課題提出に頭を悩ませる傾向にあります。

私は、授業内の1時間内で韻文を詠んでもらったり、作文を書き上げてもらったりしています。途中であっても、後日提出は受け付けません。それは、生徒を信用しないのではなく、与えられた時間の中で書き上げることを身に着けさせたいと考えているからです。

そんな悩みがある一方で、この俳句大会の最優秀作品を読むと、AIでは発想の及ばない、10代の感性の鋭さや、ほれぼれするような表現力に心打たれるのです。「俳句甲子園」の言葉のバトルの永遠性をそこに見ます。いかがでしたか?

今から9年前の2017年は、正岡子規(1867年10月生)・夏目漱石(1867年2月生)の生誕150年記念のメモリアル大会だったそうです。

十七音にかける青春の息吹と鼓動と熱量が、今年も楽しみです!今大会は、8月22日(土)23日(日)に開催されるそうです。夏よりも熱いバトルが。


※画像は、クリエイター・楽加生(らくかせい Rakukasei)さんの「noteの創作大賞の締切に向けて遅い筆に疲れた頃、ふと見上げた久しぶりの夕焼…」の1葉をかたじけなくしました。お礼を申し上げます。