【随筆】記憶をつかむ
いちばん古い記憶
三才のとき
近所で
お葬式があった
古いしきたりで
執り行われた
集落では
最後になる
形の葬式だった
らしい
それから
時代とともに
葬式の形は
変わっていった
ある日
母の実家で
会合があり
親戚や
近所の人たちが
集まっていた
小学校一年生の僕は
昔話が
好きで
その日も
おじさんたちの
輪の中に
座っていた
ふと
思い出して
東側の
窓の外を
指さし
あのときの
葬式の話を
した
あそこの家の
葬式だったな
あれが
最後になった

おじさんたちは
うなずきながら
口々に
言った
しばらくして
ひとりが
僕に聞いた
なんで
お前は
知ってるんだ
見たからだよ
と
答えると
場の空気が
少し
変わった
大人たちは
子どもに
そんな記憶能力が
あるわけない
と
選んだ
そういうことに
なった
憤りも
諦めも
なかった
ただ
ああ
こうやって
決まるんだ
と
強く
思った
それでも
僕の中には
はっきり
残っている

白装束の
一行が
棺桶を担ぎ
東側の
畑の
畦道を
静かに
歩いていた

