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石油精製の概要(ナフサ編)

ナフサとは何か(概要)

まずナフサとは何かというところからですが、ナフサ(Naphtha)は、常圧蒸留装置で原油を蒸留した際に得られる軽質留分で、 主に 炭素数 C5〜C12 のパラフィン・ナフテン・芳香族の混合物です。
常圧蒸留塔で蒸留分離したばかりのナフサはフルレンジナフサと呼ばれまだ工業用途で使用するには蒸留分離が不十分であり、また原油由来の硫黄分も多く含んでいるため、そのままでは製品としては利用されません。

ナフサの性状(特徴)

  • 炭素数:C3〜C12

  • 沸点範囲:およそ 30〜180℃

  • 比重:0.65〜0.75 程度(軽質)

  • 揮発性が高い(常温で容易に蒸発)

  • 引火点が低い(可燃性が高い)

  • 硫黄分は原油由来で微量含むため、後工程前に脱硫が必須

ナフサの種類(精製現場での区分)

精製現場では用途に応じて次のように区分されることが多いです。

  • ライトナフサ(C3〜C6) → 主に石油化学(エチレン製造)に使用

  • ヘビーナフサ(C6〜C12) → 主に改質装置へ送られガソリン基材に

ナフサの主な用途

ナフサは石油精製・石油化学の中で最も用途が広い中間原料で、特に次の2つが中心です。

① ガソリン製造(石油精製)

  • ガソリンの製造には主にヘビーナフサを使用します。ヘビーナフサはそのままでは製品の規格に見合う性状とならないため、改質装置で脱水素反応により成分に変換してガソリン基材となります。

白金触媒による脱水素反応により、不飽和分の多い炭化水素を生成することができます。
※オクタン価は芳香族化合物やオレフィン類の成分ほど高い傾向にあります。

② 石油化学原料

  • ナフサクラッカー(蒸気分解炉)で高温分解し、エチレン・プロピレンなどの基礎化学品を製造。(日本のエチレン製造は大半がナフサを原料としています。)

  • BTX製造装置(改質装置)で脱水素反応により成分を変化させ、芳香族化合物を生成する。(行われる反応はガソリン製造における改質装置と同じ)

ナフサクラッカーにはライトナフサが原料として用いられており、その用途としてガソリンと競合することはヘビーナフサと比べると多くはありません。
BTX装置についてはガソリンを製造する改質装置とほぼ同じ反応を起こしていますが、改質装置の後工程で不均化や異性化などを行うことで化学製品として満足する性状へとさらに手を加えられていきます。

ナフサの脱硫工程から改質までの概要

1. ナフサ脱硫装置について

● 目的

  • ナフサに含まれる硫黄化合物(メルカプタン、チオフェンなど)を除去することによって、後段の改質触媒(白金系)を硫黄毒から守るために必須の前処理工程となっています

● 仕組み

  • フルレンジナフサを水素とともに 300℃以上、数MPa の条件で触媒層に通すことによって、硫黄化合物が水素と反応し、硫化水素(H₂S) となります。硫化水素は常圧のドラムで気体として分離され、ナフサ中から取り除かれます。

  • 反応例:R−S−R′+H2→H2S+R−H+R′−H

● 生成物

  • 脱硫ナフサ(硫黄分ほぼゼロ)

  • 副生ガス:硫化水素(硫黄の原料となる)

● 次工程への接続

  • 脱硫されたナフサはさらに蒸留分離され、ライトナフサとヘビーナフサに分留されます。

  • ヘビーナフサは改質装置 へ送られ、ライトナフサは石油化学向けにナフサクラッカーへ送られる


2. 改質装置について

● 目的

  • 今回はガソリン向けの解説となりますが、改質装置ではナフサ中の炭化水素を反応させて、ガソリンのオクタン価を大幅に向上させる芳香族やオレフィンなどを生成することを目的とした装置になっており、非常に付加価値の高い装置となっています。

  • 副生する水素は、脱硫装置や他の水素化工程で利用されるため、石油精製装置をスタートアップする際にはこの改質装置を立ち上げるところから始まる製油所も多いです。(石油精製には脱硫のために水素が大量に必要となるため)

● 仕組み

改質装置では、白金系触媒を用いて主に脱水素反応が行われます。脱水素反応とはその名の通り、炭化水素中の水素を取り除く反応で、水素を除かれた炭化水素は不飽和炭化水素となります。
化学に明るい人であれば察しがつくかもしれませんが、脱水素を行うには非常にエネルギーを必要とするため運転条件は 約500℃、数MPa と高温、高圧条件下での反応となります。

脱水素反応例

改質されたナフサは高オクタン価となりますが、まだこのままではガソリンとしては扱えません。脱水素反応の例にも示したように、この反応ではベンゼンが生成されます。そのためこのベンゼンや高付加価値なキシレンを取り除く工程などがさらに後段の装置に存在しますが、今回は割愛いたします。
このようにして製造された高オクタン価なガソリン基材と、低オクタン価な脱硫ナフサやLPGなどを混合し製品ガソリンが製造されていきます。

まとめ

今回はナフサからガソリンを製造する工程の概略をまとめました。
ナフサはそのままでは製品としては使用できないこと、また留分(炭素数)によって分けられ、それぞれ用途が異なることなどをご理解いただけたかなと思います。
私は製油所が中心のキャリアだったためエチレン装置やBTX装置についてはそこまで明るくないため、今回は説明しておりませんがナフサはガソリンや化学製品を作るための原料で、安全保障上も国際経済的にも非常に重要なものであることを知っておいていただければ嬉しく思います。

灯油や軽油のプロセスはたいして面白くないので、次に書くならば重油系の装置を説明したいなと考えています。

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