『端くれ賭博人のバラード』ティルダ・スウィントンの引き出しの多さに驚く
コリン・ファレルが、ギャンブルに依存し、
ペテン師ドイル卿を演じることは、
彼のキャリアの文脈から見ても必然的、
かつ成功した選択と言えるかもしれない。
彼はかつて自身も薬物・アルコール依存症の経験を公にしており、
その経験は、虚勢と内なる焦燥に引き裂かれる主人公の孤独と悲哀を、
単なる役作りを超えて深く体現することを可能にしたのかもしれない。
台詞のない瞬間にこそ、その真価が発揮されている。
マカオのカジノの光と闇の中で、賭けに負け、
借金に追われる男の疲弊した眼差し、微かな震え、
そして一瞬の希望に賭ける時の猛烈なまでの渇望といった複雑な感情が、
彼の肉体と表情を通して、観客に直接訴えかけてくる、
それがこの作品の核を形成している。
そして驚いたのは、
ティルダ・スウィントンの芝居の器用さと多才さだ。
彼女はキャリアを通じて、性別や年齢、人間といった枠組みすら超えた、
概念的で非凡な役柄『コンスタンティン』、『サスペリア』等々、
圧倒的な存在感で演じてきた。
その為、コミカルな役どころ、特に本作で見せる小回りが効いた、
軽快で謎めいたユーモラスな芝居は、新鮮な驚きだった。
要所に現れる取り立て屋のような女性として、
一見すると不条理でコミカルな振る舞いの裏に、
深みとシニカルさを隠し持っている。
これは、彼女が伝統的な役柄の枠に収まらない、
表現者としての引き出しの多さを改めて証明している。
シリアスとコメディ、
現実と幻想の境界線を軽やかに飛び越える彼女の芝居は、
重くなりがちなドイルの物語に、絶妙な異物感と不可解な魅力を加えている。
彼女の登場シーンは、この映画における重要なギアチェンジの役割を果たしていると言えるだろう。
