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岩手・一関、新幹線駅前8.3ヘクタール。NEC跡地の事業者公募が白紙になった、本当の理由と、五つの提言

岩手県一関市、JR一ノ関駅東口。 8.36ヘクタールという、地方都市では桁外れに広大な一等地が、いま、静かに止まっております。

旧NECプラットフォームズ一関事業所の跡地、東京ドーム約1.8個分。新幹線(東北・秋田)が停車する駅の、ほぼ目の前。一関市がNECから直接買い取り、民間事業者に開発を委ねるはずだった土地であります。

その事業者公募が、2026年5月28日、白紙になりました。 公式の理由は、「急激な物価高騰と資材調達難、中東情勢の影響もあり、提案内容が公募要件と合致しなかった」というものであります。

私は最初に申し上げておきたいのですが、このnoteは一関市を責めるために書くものでは、断じてありません。 むしろ、提案内容が要件に合わないと判断して、優先交渉権者の選定を白紙にしたという市の判断は、極めて誠実なものだと思っております。形だけ走らせて後で破綻するよりも、いま立ち止まる方が、よほど傷は浅い。

そのうえで、同じ岩手県の駅前で、現場に17年関わってきた一人として、このnoteで申し上げたいことが、いくつかあるのであります。

公募中止の本質は、物価高ではありません。 本当の論点は、もっと深い、構造の問題に他ならないのであります。


建設費、金利、不動産価値。三つのバランスが、完全に崩れた時代である

まず、時代環境の話から始めなければなりません。

いま日本中の不動産・開発プロジェクトを苦しめているのは、たった三つのバランスであります。

ひとつ目、建設費。資材価格と労務費は、コロナ前と比べて2〜3割は跳ね上がっております。木材、鉄筋、設備機器、職人単価。中東情勢の不安定化で、原油・物流も上振れし続けております。

ふたつ目、金利。長く続いたゼロ金利が終わり、長期金利は明確に上方向にあります。事業会社の調達コストも、ノンリコースローンのスプレッドも、明らかに変わりました。

そして三つ目、不動産の価値。これが地方都市では、ほとんど上がっていない。賃料相場も売却バリューも、首都圏のごく一部を除いて、横ばいか微増にとどまります。

健全な不動産開発というものは、この三つがバランスする世界でしか成立しません。 ところが現在は、建設費と金利は急上昇し、不動産価値だけが据え置かれているという、極めていびつな状態にあるのであります。

これは、一関だけの話ではありません。今、日本中の地方都市の開発プロジェクトが、同じ岩盤に頭をぶつけ続けているのが現実であります。

ですから、「物価高で公募が止まった」というのは、嘘ではない。しかし、それは一関NEC跡地に固有の理由ではなく、現代の地方開発すべてに共通する前提条件なのであります。 だからこそ、この前提条件を踏まえて、それでも動くスキームを設計しなければならない。立ち止まる理由を時代環境に求めて終わらせるなら、この8.3ヘクタールは、おそらく10年単位で動かないままになります。

公募要項を開いてみて、私は静かに息を呑んだのであります

ここから、構造の話に入っていきたいのであります。

一ノ関駅東口まちづくり株式会社が公表した公募要項を開いてみました。そして、私は静かに息を呑んだのであります。

公募が民間事業者に求めていたのは、なんと、「イノベーション創出機能」「賑わい創出機能」「公的機能」の三つを、すべて民間事業者の提案で整備することだったのであります。

念のため申し上げますが、ここで言う「公的機能」とは、屋内子供遊戯施設、ウォーキングパス、公園、研究機関、産学官連携拠点といった、本来、行政が住民サービスとして整備すべき施設を指すものに他なりません。 それを、民間事業者の自前資金で、建ててもらい、運営してもらう、という公募設計だったのであります。

これは、もはや公民連携の話ではありません。「行政がやるべき仕事を、土地と引き換えに民間に押し付ける」という、極めて筋の悪いスキームに他ならないのであります。

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