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スーパーヒーローの妻になる

現在の夫と私は再婚で、振り返ってみればもう十数年以上、支え合って穏やかに仲良く暮らしている。再婚前の私は幼い子供ふたりと暮らすシングルマザー。夫は夢を追いかけ懸命にバイトを掛け持ちして暮らしていた。生活はお互いにギリギリで、まだまだ未熟なふたりだった。

生い立ちのことでお互いに共感するところがたくさんあって、惹かれあったのが始まりで、遠距離に住んでいた彼が月に一度泊まりがけで会いにくるようになった。彼は必死に時間とお金を作り出し、お土産を抱えて訪れる。その度に遊園地や動物園、回転寿司やいちご狩り、子供達が喜ぶ顔が見たくていろんな場所に連れていってくれた。公園にお弁当を持って行けば、どろんこになってへとへとになるまで駆けずり回って子供達と遊んでくれる。彼は我が家における誰よりもかっこいい、スーパーヒーローになった。

私は子供達と彼を心底愛していたし、毎日毎月、嬉しい気持ちになった。体調もままならなかった当時の不安定な私のことも彼は支え切ってくれた。私は大切な子供達にこれ以上寂しい思いをさせたくなかったし、スーパーヒーローの彼にも寂しい思いはさせたくなかった。その想いが、私を強くしてくれたと思う。いつか4人で暮らすんだという目標が、私を前に進ませた。毎日がかけがえのない時間だった。再婚しようと言ってくれている彼とふたりで子供達の笑顔を見守ることは、私にとってこれ以上ない有難い日々であり心が満たされる温もりだった。

そんな私だったが、同時に私が彼の足手纏いになってしまってないか、という気持ちも抱えていた。彼は私より10近く歳下であった。その彼に頼り切っている自分を許せなくなることもあった。心のどこかで私が幸せになることを、選択してはならないと、ブレーキがかかるのを感じていたし、将来に不安もあったと思う。

彼が明日遊びに来るという初夏、スーパーで買い物した帰り道。使われていない空き地に咲き乱れる、たくさんのねじ花を見つけた。ネジのようにクルクルと巻いて上に伸びるピンク色の可愛い花だ。柔らかな風にゆらゆらとたくさんのねじ花が揺れていた。その夢のような景色を見た時、なぜか全てを許されたような不思議な気持ちに私はなった。幸せになりなさいと言われたように私は感じた。わかった、わかったよ。私は幸せになろう。幸せになりたい。彼の妻になる。まず私が私に正直になったのだ。

次の日訪れた彼と話した。今度は彼に対して正直に全部の気持ちを話した。私は年齢的にも状況的にも、これから再婚しても、彼の子供は産めないこと、そして、私は今を生きている大切な子供達をふたりで育てたいことを彼に伝えた。彼が去るかもしれないとは思わなかった。私の気持ちは決まっていた。彼の足手纏いなんかにはならない。そうじゃない。私も幸せになるけれど、私が子供達も彼のことも、絶対に幸せにしてみせる。支えてみせる。スーパーヒーローの妻になろう。正直になった私の中には、聖火のような消えない灯りが、強くて確かな願いとして、赤く燃えていた。

彼は去らなかったし、私たちは上の子が中学に上がるタイミングでいろんな山を乗り越えて再婚し引っ越した。私たちの新しい生活が始まると、彼は平然ときっぱりと新たな仕事を始めて一気に増えた扶養家族を頼もしく養ってくれた。おおらかでタフな彼が俺に何かあったら困るからと、すぐさま生命保険にも入ったし、健康診断も受けるように変わった。贅沢はないし激安スーパーが頼りの生活はあの頃とあまり変わらないけれど、私たち4人は今も健やかに賑やかに、平凡で心豊かな暮らしを紡いでいる。

あの時、正直になって良かった。幸せになりたいと、気がついて良かった。彼に想いを伝えたあの日が、私が56年生きてきた人生の中でも、とびきり最高に正直になった瞬間だったと思う。そしてこれからもまた何度も、私は戸惑い迷う時があるだろう。そんな時は、まずは自分に正直になるところから始めよう。私に正直に向き合って、見えてきたその答えを信じるところ、叶えようとするところから、全てを始めていけば大丈夫。少し前を振り返って、勇気をだして正直になったからこそ、大きな願いが叶った私は、そんなふうに考えている。

2026.2.26

#正直になってよかったこと

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