「今後18年で過去1万年分と同じ量の銅を採掘する必要がある」、銅不足時代の投資戦略|3つの切り口で銘柄を整理する

「今後18年で、過去1万年分」という衝撃
「GDP成長率3%を維持するだけでも、今後18年で過去1万年分と同じ量の銅を採掘する必要がある」
引用の言葉は、Ivanhoe Minesの創業者Robert Friedland氏の発言です。
レトリックとして大げさに聞こえるかもしれません。

しかし、IEA(国際エネルギー機関:各国のエネルギー政策を分析し、需給見通しを公表する国際機関)のデータを見ると、Friedland氏の主張が単なる誇張ではないことがわかります。
2024年の銅需要は約2,670万トン。

一方、リサイクル由来の二次供給(使用済み製品から回収された銅を供給源として使うことを指します)は約440万トン規模にとどまっています。


つまり、銅需要の8割以上を新規採掘に頼っている状況です。
しかも18年と1万年を比較した試算には、データセンターの急増や送電網の拡張は含まれていません。

「本当にそんなに足りないのか?」と疑問に思う方もいるでしょう。
次のセクションで、銅不足の構造的な理由を解説します。
なぜ今、銅が不足しているのか
銅が不足しやすい理由は、需要が加速しているのに、供給が「増やしたくても増えない」構造になっているからです。
需要側:電化+AIで銅の使い道が増えすぎている

エネルギー転換:送電網の増強、再エネ、EV(電気自動車:内燃機関ではなく電池で走る自動車のこと)の普及により、銅需要は長期で増加傾向にあります。
IEAは電力グリッド(発電所から需要地へ電気を届ける送配電網のこと)向け銅需要が2040年に向けて大きく伸びるシナリオを示しています。
AI・データセンター:S&P Global(金融・商品市場のデータや調査を提供する米国の情報企業)は、電化に加えてAI(人工知能:大量データを学習し判断や生成を行う技術のこと)需要が銅需要を押し上げると分析しています。
S&P Globalの「Rocky Road」シナリオ(電化とAI需要の伸びを前提に需要が強く伸びる想定)では、2040年に需要が約5,000万トンに達するとしています。
供給側:鉱山が「時間と制約」で増えない

新規鉱山の立ち上げが遅い:発見から生産までのリードタイム(準備期間)は平均17年程度。
IEAはリードタイムの長さを供給ボトルネック(供給が増えにくい主因となる制約のこと)の重要要因として挙げています。
鉱山の老朽化:S&P Globalの分析では、現行の開発パイプライン(計画中や準備段階の鉱山プロジェクトの集合を指します)を前提とした場合、供給は2030年頃にピークを迎え、ピーク後は伸びにくいとされています。
供給ショックが重なりやすい:ICSG(国際銅研究会:銅の需給統計や見通しをまとめる国際機関)は主要産地での供給混乱などを受けて見通しを下方修正し、精錬銅市場が不足に向かう可能性を示しています。
中流のボトルネック:製錬・精錬も詰まる

銅は「掘る」だけでは終わりません。
精鉱(鉱石から有用成分を濃縮した中間原料のこと)→製錬→精錬→電線/部材という鎖があります。
したがって、鉱山側が詰まると、製錬側は原料不足で稼働や採算にしわ寄せが出て、供給全体がタイトになりやすい構図です。
リサイクルだけでは埋まらない
「リサイクルを増やせば解決するのでは?」と思うかもしれません。
しかし、S&P Globalの試算では、二次供給が現在の約440万トンから2040年に約1,000万トンへ増える想定でも、需要増の方が大きく、ギャップが残るとされています。


筆者(きらく)の考察:「掘れない」が生む逆説的な投資機会
銅不足の本質は、需要増ではなく「供給の硬直性」にあるのではないかと考えています。
通常、価格が上がれば供給が増えて均衡するはずです。
しかし銅の場合、新規鉱山の開発に17年もかかるため、価格シグナルが供給に反映されるまでに大きなタイムラグが生じます。
17年というリードタイムは事実として確認できる構造的な特徴です。
供給の硬直性が意味するのは、短期的には「既存鉱山の価値向上」ではないかと推測します。
新規参入が難しいからこそ、すでに生産能力を持つ企業の希少性が高まると考えられるためです。
一方で、長期的には「代替技術の台頭リスク」も考慮すべきでしょう。
銅価格が高止まりすれば、アルミへの代替や省銅技術の開発が加速する可能性があります。
今後は、単に「銅が不足する」という一方向の見立てだけでなく、「代替が進む閾値はどこか」「どのセグメントで代替が効きにくいか」という視点も持っておくと、投資判断の精度が上がるのではないでしょうか。
「銅が足りない」だけでは投資できない
銅不足テーマに乗るなら、「銅価格が上がる」だけではなく、どこにお金が落ちるかで分けて考えたいところです。
新鉱山の開発には時間がかかります。
開発期間を踏まえ、当面の現実解は以下の4つです:
既存鉱山の増産(設備・掘削・選鉱)
製錬/精錬のボトルネック解消
回収・リサイクルの拡張
送電網(ケーブル/変圧器)の増強
「銅が足りない」はテーマですが、収益ポイントは意外と分散しています。
では、どこに投資すればよいのでしょうか。
3つの投資カテゴリと具体的な銘柄
4つの現実解のうち、製錬とリサイクルは同じ企業が手掛けることが多いため、投資先としては3カテゴリに整理しました。
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