【ピープルカラー・実践編】AI部下を使いこなせ、人手不足ニッポンの生き残る道はこれだ
前回、「ホワイトカラーの終焉とピープルカラーの出現」というテーマで、AIが引き起こす働き方の構造変化を大きな視点から診断した。今回はそれを、もっと手元の話に落として書きたい。あなた自身の仕事、あなたの部署、来週の月曜日から何をするか、という話だ。
「AIが仕事を奪う」という言い方を、そろそろやめた方がいい。
正確には、こうだ。これまで部下を持ったことのない若手にも、「任せる側」の役割が回ってくる。仕事そのものが消えるのではなく、仕事のレイヤーが一段シフトするのである。
「初めて部下を持ったら読む本」はもうあった
書店の自己啓発コーナーに行くと、10年以上前からずっと同じ棚がある。「マネージャーになったら読む本」「初めて部下を持ったら読む本」「部長になったら読む本」。今もその棚は健在だ。
つまり日本社会は、「委任し、評価し、フィードバックする」というスキルを、教育・研修として提供してきた実績がすでにある。これは重要な事実である。今回求められているのは、まったく新しい能力の発明ではない。かつて課長・部長になった人たちに提供してきたノウハウを、入社2年目のスタッフにまで対象を広げ、相手を「人間の部下」から「AI部下」に置き換えて再設計するだけでいい。
管理者の仕事は「スキルセット」と「マインドセット」でできている
管理者の仕事を分解すると、大きく二つの要素からできている。
一つはスキルセットだ。部下に指示を出すとき、いきなり方法論を押し付けるのではなく、背景と目的をきちんと説明し、相手自身に考えさせる。これは驚くほどそのままAIにも当てはまる。良いプロンプトとは、良い指示出しそのものである。「何を」だけでなく「なぜ」を伝え、「どうなったら完了か」を先に握っておく。これができる人ほど、AIからの戻りの質が高くなる。
もう一つはマインドセットだ。相手の特性や価値観を尊重し、良さを伸ばし、弱みに見える部分も温かく認めていく。こちらはAIには、今のところあまり意味を持たない。AIには尊重すべき人格も、傷つく自尊心もないからだ。
まず着手すべきは「棚卸し」
若手がまず取り組むべきは、自分の仕事の棚卸しである。
AIに任せられるもの
AIに任せるべきもの
自分の手元に残すべきもの
この仕分けそのものが、実は初めての「委任」の練習になる。かつて新任管理職が部下に何を任せるかで悩んだのと、構造は同じだ。
これは個人の自己責任ではない
ここで一つ、はっきりさせておきたい。「AIを使いこなせるかどうかは個人の努力次第」という話にしてしまうと、話を矮小化することになる。
委任し、評価し、フィードバックするというスキルは、本来訓練によって身につくものだ。だからこそ企業は、管理職研修という形でそこに投資をしてきた。同じ投資判断を、AI部下を持つことになったスタッフ全員に対して行う責任が、企業側にある。「使いこなせ」と号令をかけるだけで、育成の仕組みを用意しないのは、責任の放棄に近い。
最後に、少しだけ先の話
AIが吸収してくれるのは、委任のスキルセットの部分までだ。マインドセットの出番、つまり相手を尊重し、良さを伸ばし、弱さも温かく認めるという営みは、なくなるわけではない。むしろ、AIに渡した分だけ浮いた時間とエネルギーが、人間同士の間により多く向けられることになる。
AI部下を使いこなす人ほど、実は人間への向き合い方が上手くなっていく。この逆説については、また稿を改めて書きたいと思う。
