高市政権に潜む亀裂 憲法改正が座礁する日 多分、改憲の発議は出来ない
衆院選での大勝を受け、高市早苗総理はいよいよ悲願の憲法改正へと舵を切ろうとしています。幼少期より教育勅語を暗唱してきたという、その徹底した国家観と信念の強さは、支持者には希望を、反対派には強い警戒感を与えています。
しかし、足元の「改憲勢力」を精査すれば、そこには数以上に深刻な「思想の矛盾」という名の断層が走っています。私は、この内部矛盾こそが、発議を阻む最大の障壁になると見ています。
1. 「天皇」をめぐる改憲派内部の歪み
「国体」を重んじる高市総理にとって、天皇陛下を「元首」と明記することは改憲の核心かもしれません。しかし、皮肉なことに、糾合すべき「改憲派」政党のなかには、必ずしもその価値観を共有しない勢力が混在しています。
一部の急進的なポピュリズム政党や、合理主義を掲げる新興勢力のなかには、伝統的な天皇制に対して冷ややかな、あるいは明確に否定的な考えを持つ人間も紛れ込んでいます。彼らにとっての改憲は「統治機構の効率化」であり、高市総理が目指す「日本の心を取り戻す」改憲とは、ベクトルの向きが決定的に異なるのです。
2. 自民党内部に燻る「護憲」の血脈
「自民党=改憲」という図式も、実は幻想に過ぎません。党内には、かつての宏池会(宮沢喜一氏ら)の流れを汲む「9条堅持派」や、慎重派が厳然として存在します。
彼らは、高市総理の思想的純度が高まれば高まるほど、党内のバランスが崩れることを危惧しています。高市総理が党内反対派を抱き込み、密着してコントロールしようとしても、その「鎧」の下では、平和主義という伝統を守ろうとする抵抗勢力の力が、静かに、しかし確実に働いています。
3. 糾合か、それとも空中分解か
高市総理が「雷撃」のごとく発議を急げば、こうした思想のズレは一気に表面化します。
9条を巡る対立: 廃止を望む右派、明記に留める公明、現状維持を望む自民穏健派。
天皇の地位を巡る対立: 元首化を急ぐ高市政権 vs 伝統の変容を恐れる保守本流 vs 天皇制に批判的な一部新興野党。
このバラバラなパズルのピースを、一つの「改正案」として嵌め込むことは、もはや政治技術の限界を超えています。
結論:家訓「生き残る」が示す皮肉な結末
筆者の家訓である「生き残る」という視点に立てば、各政党・各議員が最終的に優先するのは、国家のグランドデザインではなく、自らの政治生命の継続です。国民投票で「NO」を突きつけられるリスクを冒してまで、異質な思想を持つ者同士が手を組むことはあり得ません。
結局、高市政権の「純度の高い思想」が、逆に改憲勢力の「不純な混合」を際立たせ、発議というゴールを霧の中に消し去ってしまう。これが、今の永田町に漂う、語られない真実ではないでしょうか。
「女性宮家の創設」に反対する方針 保守系国会議員(19/06/20) この動画は、自民党内の保守系議員や他党(維新など)が、皇位継承や伝統を巡ってどのように集結し、どのような議論を行っているかの実態を示しており、改憲勢力内部の思想的背景を理解するのに役立ちます。
自民党内護憲派の動き
自民党内の「慎重派」の動き、特に高市政権下で注目される勢力の動向について整理しました。
筆者と縁のある林芳正氏を中心とした、旧宏池会(岸田派)系の動きは、改憲の行方を占う上で最も重要な「重石」となっています。
1. 「林芳正氏」を筆頭とする旧宏池会系の沈黙と牽制
林芳正氏は、高市総理とは対照的に、リベラルで現実主義的な「保守本流」の象徴です。
「法の支配」へのこだわり: 林氏らは、改憲そのものを否定しませんが、「手続きの正当性」と「国際社会への説明責任」を極めて重視します。高市氏が掲げる「教育勅語」的価値観や「国家主権の絶対化」が、国際秩序(特にG7諸国との関係)を揺るがすと判断すれば、閣内や党内から音もなくブレーキをかけます。
参議院への影響力: 林氏は衆議院に転じましたが、参議院自民党には今も旧宏池会系の議員が多数存在します。彼らは「衆議院の熱狂」を冷ます役割を担っており、強引な発議には「時期尚早」「国民の理解不足」という言葉で抵抗します。
2. 「生き残る」ための現実主義的な抵抗
慎重派議員たちが最も恐れているのは、改憲発議の失敗による「政権瓦解と党の分裂」です。
選挙への影響: 参議院議員にとって、3年ごとの選挙は死活問題です。改憲が争点化しすぎて中道層が離反することを恐れる議員たちは、高市総理の「雷撃」のような突破力に同調せず、あえて「鎧組討」のように密着して、総理の勢いを削ぐ戦術をとります。
公明党との「生命線」: 慎重派は、公明党との選挙協力がなければ落選するリスクが高い議員が多く、公明党が嫌がる「9条廃止」や「天皇の元首化」には、党内から真っ先に異論を唱えます。
3. 自民党内の「リベラル派」という名の生存者
石破茂氏や、かつての「リベラル保守」の系譜を継ぐ議員たちは、現在、高市政権の影に隠れていますが、決して消滅したわけではありません。
「立憲主義」の堅持: 彼らは「権力を縛るのが憲法である」という本来の立憲主義を重視します。高市総理が進める「国家を強くするための改憲」に対し、党内勉強会などを通じて「国民の権利が制限されすぎる」との懸念を密かに共有しています。
内部からの静かなる拒否権
高市総理の背後には、林芳正氏を筆頭とする「慎重派」という名の巨大な壁がそびえ立っています。彼らは、総理の掲げる理想を正面から否定はしません。
しかし、実務的な議論の積み上げや、連立政党との調整という「手続きの迷宮」に議題を放り込むことで、発議という刃を封じ込めます。武術でいう「密着」は、攻撃のためだけではありません。相手の動きを封じ、力を無効化するための密着です。
自民党内部の慎重派は、高市総理の熱量を吸収し、政治のリアリズムという冷水で冷やし続ける「生存のプロフェッショナル」たちなのです。
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