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日程くんは、サポーターが家に帰るところまで考えているか|80人しか来なかったのではない。80人しか来られなかった

私は、すべてのアウェイゲームへ駆けつけるようなコアサポーターではない。

月曜日から金曜日まで仕事がある。家族もいる。サッカーのために使える時間にも、お金にも限りがある。

それでも、年に一度か二度はアウェイへ行ってみたいと思う。

応援するクラブを追いかけて、普段なら降りることのない駅に降りる。知らない街を歩き、その土地のものを食べる。スタジアムでは、ホームサポーターに囲まれながら、自分のクラブを応援する。

勝てば最高だ。

負けても、時間がたつと旅の記憶として残っている。

しかし、対戦カードと日程を見た瞬間に、遠征を諦めることがある。

試合は日曜日。

しかも夕方や夜。

試合終了後に自宅まで帰れる列車も飛行機もない。現地に泊まれば、月曜日の仕事に間に合わない。

有給休暇を取れば行けるかもしれない。

しかし、サッカー観戦のために月曜日まで休める人は、どれくらいいるだろうか。

J2やJ3の中継を見ていると、遠方から駆けつけた少人数のアウェイサポーターが映ることがある。

「約80人のサポーターが駆けつけました」

そんな紹介を聞くと、私は思う。

本当に、そのクラブを応援している人が80人しかいなかったのだろうか。

80人しか来なかったのではない。

その日程では、80人しか来られなかったのではないか。

J1の感覚では見えにくいアウェイがある

J1のサポーターには、少しイメージしにくい話かもしれない。

もちろん、J1にも札幌や福岡など遠方への遠征はある。すべてのJ1アウェイが簡単だという話ではない。

ただ、首都圏や関西圏にはクラブが集まっている。

東京から横浜へ行く。
大阪から神戸へ行く。
京都から大阪へ行く。

同じ日曜開催でも、鉄道でその日のうちに帰れる対戦がある。

一方、J2やJ3には、地方都市から地方都市へ移動する対戦が数多く存在する。

秋田から大分へ行く。

八戸から沖縄へ行く。

山形から愛媛へ行く。

長野から鹿児島へ行く。

距離が遠いだけではない。直行便がない。新幹線を何度も乗り換える。空港や駅からスタジアムまで、さらにバスで移動する。

東京から1,000キロ離れた都市へ行くより、地方都市から500キロ離れた別の地方都市へ行く方が難しいこともある。

日本の交通網は、東京や大阪を中心に考えれば便利である。

しかし、地方から地方へ移動しようとした瞬間、急に難易度が上がる。

同じ「日曜日の試合」でも、その意味はまったく違う。

J2・J3は、本当に日曜開催が多いのか

私は当初、J1を土曜日、J2やJ3を日曜日に分け、試合のニュースや中継が重ならないようにしているのではないかと思っていた。

実際、そのような話をどこかで聞いた記憶もある。

もしそれが事実なら、J2やJ3のアウェイサポーターは、リーグ全体の露出を分散させるために、遠征のしにくさを引き受けていることになる。

しかし、記憶だけで書くわけにはいかない。

そこで、通常のホーム・アンド・アウェー方式で行われた2025年のJ2、J3の全日程を調べてみた。

結果は、私の印象とは少し違っていた。

2025年のJ2は全380試合。そのうち土曜日または土曜祝日に組まれた試合は188試合、日曜日または日曜祝日は162試合、それ以外の曜日は30試合だった[1]。

J3も全380試合で、土曜開催が206試合、日曜開催が149試合、その他が25試合だった[2]。

両リーグを合わせると、全760試合のうち土曜開催は394試合、51.8%。日曜開催は311試合、40.9%である。

少なくとも2025年については、

「J2、J3は日曜日が中心である」

とは言えない。

どちらのリーグも、土曜日の方が多かった。

また、「J1は土曜日、J2、J3は日曜日を中心にして、ニュースや中継の重複を避けている」という明確な公式方針も、私が確認したJリーグの公表資料からは見つけられなかった。

これは最初に明記しておきたい。

自分の印象に都合のよい数字だけを拾って、Jリーグを批判したいわけではないからだ。

それでも、問題がなくなったわけではない。

見るべきなのは、日曜開催の数だけではない。

どの対戦が、何曜日の何時に組まれているかである。

日曜開催の約4割が、600キロ以上の対戦だった

2025年のJ2とJ3には、合計311試合の日曜開催があった。

そこで、両クラブのホームタウン間の直線距離が600キロ以上になる対戦を、便宜上「長距離カード」として抽出してみた。

600キロはJリーグが定めた基準ではない。実際の移動距離でもない。問題の規模を把握するために、私が置いた目安である。

その結果、J2では日曜開催162試合のうち77試合、J3では149試合のうち46試合が該当した。

合計すると123試合。

日曜開催311試合のうち、約39.5%である。

つまり2025年のJ2、J3では、日曜に行われた試合の約4割が、ホームタウン間の直線距離で600キロ以上離れたカードだった[1][2]。

もちろん、600キロという数字だけで遠征の難しさは決まらない。

直行便があれば、800キロ離れていても比較的移動しやすいことがある。逆に、直線距離が400キロ程度でも、鉄道や飛行機の接続が悪ければ一日がかりになる。

本当に必要なのは距離ではなく、

「試合が終わってから、アウェイサポーターが自宅へ帰れるか」

という視点である。

日曜日の20時、大分にいる秋田サポーター

具体的な試合で考えてみよう。

2025年6月15日、日曜日。

J2の大分トリニータ対ブラウブリッツ秋田は、大分市のクラサスドーム大分で18時03分に始まった[3]。

大分市と秋田市の直線距離は、およそ1,050キロである。

試合が終わるのは20時前後。

アウェイサポーターは、そこからスタジアムを出る。観客の列に並び、バスや自動車で駅や空港へ向かう。

その日のうちに秋田まで戻る公共交通の行程を組むことは、極めて難しい。

現地に泊まり、翌日の月曜日に移動することになる。

月曜日が休みなら問題はない。

しかし、多くの会社員には仕事がある。学校へ通う人もいる。子どもを連れて遠征していれば、保護者だけでなく子どもの月曜日も休ませることになる。

同じ2025年には、次のような日程もあった。

愛媛対山形は7月6日の日曜日、19時開始。

熊本対水戸は8月3日の日曜日、19時開始。

仙台対徳島は8月10日の日曜日、19時開始。

長崎対藤枝は8月31日の日曜日、18時開始。

愛媛対仙台は同じ8月31日の日曜日、19時開始だった[1]。

J3にも、福島対琉球の7月20日日曜日18時開始、鹿児島対長野の8月24日日曜日19時開始などがあった[2]。

一つひとつには、それぞれ事情があるだろう。

スタジアムを確保できる日。

夏の暑さ。

中継予定。

ほかの大会との兼ね合い。

ホームクラブにとって集客しやすい時間。

日曜日の夜にしなければならない理由があったのかもしれない。

だから、これらの日程を並べて「おかしい」と断定したいわけではない。

ただ、日曜日の夜に遠く離れた街で試合が終わるとき、アウェイへ行ける人がかなり限られることだけは確かである。

コアサポーターは日程に自分を合わせる

それでもアウェイへ行く人はいる。

月曜日に有給休暇を取る。

高い飛行機を予約する。

何度も乗り換える。

駅からさらにバスに乗る。

試合が終わった後は現地に泊まり、翌朝早く移動して、そのまま会社へ向かう。

コアサポーターは、日程に自分の生活を合わせる。

私は、その熱量を否定しない。

むしろ、尊敬している。

選手にとって、どれほど遠い土地にも自分たちのユニフォームを着た人がいることは、大きな力になるはずだ。

ただ、Jリーグがこれから増やしたいのは、すでにあらゆる条件を乗り越えて遠征している人だけではないはずだ。

一度もアウェイへ行ったことのない人。

ホームゲームへ年に数回行く人。

DAZNでは見ているけれど、ゴール裏には入らない人。

旅行は好きだが、サッカーのために仕事を休むほどではない人。

そうしたライトファンが、一人でも二人でもアウェイへ行くようになれば、ゴール裏の景色は少しずつ変わる。

しかし、ライトファンはコアサポーターとは違う。

月曜日に休暇を取ってまで、サッカーへ行くことは難しい。

高額な飛行機しか残っていなければ諦める。

移動方法が複雑なら、計画を立てる途中で面倒になる。

これは、クラブへの愛情が足りないからではない。

生活の中でサッカーが占める位置が違うだけである。

コアサポーターは、日程に自分を合わせる。
ライトファンは、自分の生活に合う日程でなければ動けない。

リーグがアウェイ遠征者を増やしたいなら、後者の人たちが動ける条件を考える必要がある。

一度行くと、アウェイ遠征の魅力が分かる

アウェイ遠征へ行ったことがない人は、サッカーを見るためだけに遠くまで移動することを、少し大げさに感じるかもしれない。

しかし、一度行ってみると、ただの試合観戦ではないことが分かる。

普段なら降りない駅に降りる。

地元の商店街を歩く。

名物料理を食べる。

温泉へ行く。

城や史跡を見る。

路線バスに揺られながら、スタジアムへ向かう。

街中でホームクラブのポスターを見つけ、そのクラブが地域でどのような存在なのかを知る。

スタジアムでは少数派になる。

周囲とは違う色のユニフォームを着て、自分のクラブを応援する。

ホームで見る試合とは、緊張感が違う。

勝ったときの喜びも違う。

そして遠征から戻ると、相手クラブの見え方まで少し変わる。

これまで対戦相手としか思っていなかったクラブに、その街で暮らす人の顔が重なる。

旅行だけを目的にすると、行き先を決められないことがある。

しかし、アウェイゲームがあれば、目的地と日付が決まる。

サッカーは、一人で知らない街へ行く理由を作ってくれる。

これは、少子高齢化が進み、単身世帯が増えていく日本社会にも合っている。

家族旅行でなくてもいい。

大人数のグループでなくてもいい。

一人で移動し、一人で街を歩き、スタジアムへ行けば同じクラブを応援する人がいる。

お一人様でも成立し、スポーツと旅行を同時に楽しめる。

アウェイ遠征は、これからの社会に意外なほど適した趣味なのではないかと思う。

ライトファンは、なるべく安く遠征したい

もちろん、問題は曜日だけではない。

地方から地方への遠征にはお金がかかる。

飛行機、新幹線、ホテルを普通に予約すれば、数万円になる。家族で行けば、さらに負担は大きい。

年に何度も遠征できる人は限られる。

だからこそ、

* 夜行バス
* LCC
* フェリー
* 鉄道の割引切符
* カプセルホテル
* 安価なビジネスホテル
* ネットカフェ


といった選択肢が重要になる。

特に夜行バスは、節約して遠征したい人にとってありがたい。

金曜日の仕事を終えてから乗り、土曜日の朝に現地へ着く。土曜日に試合を見て一泊し、日曜日に観光して帰る。

あるいは土曜日の夜に試合を見て、そのまま夜行バスで戻る。

宿泊費と時間を節約できる。

しかし、夜行バスには独特の問題がある。

早朝に着いても、行く場所がない。

朝5時や6時に駅前へ降ろされる。飲食店は開いていない。観光施設も開いていない。スタジアムの開場までは何時間もある。

冬なら寒い。夏なら早朝から暑い。

大きな荷物を抱えたまま、街が動き始めるのを待たなければならない。

そこで助かるのが、快活CLUBのようなネットカフェである。

少し休める。

シャワーを浴びられる。

スマートフォンを充電できる。

着替えられる。

荷物を整理できる。

飲み物もある。

ネットカフェが遠征者に選ばれるのは、単に安く眠れるからではない。

夜行バスの到着時刻と、街の営業時間の間にある空白を埋めてくれるからである。

ただし、ネットカフェはスポーツ遠征のために作られた施設ではない。

スタジアムの近くにあるとは限らない。満席のこともある。未成年者や家族連れ、高齢者には使いにくい場合もある。

ならば、この機能を最初からスポーツ遠征向けに設計した施設があってもよいのではないか。

朝5時に着いても困らないSTAYX

私は以前、スポーツ遠征に対応した宿泊・滞在拠点として「STAYX(ステイクロス)」という構想を書いた。

STAYと、地域や人が交わるCROSSを組み合わせた名前である。

STAYXは、豪華なホテルである必要はない。

むしろ、遠征者が本当に必要としている機能へ絞る。

* 短時間の仮眠スペース
* 無人チェックイン
* シャワー
* 更衣室
* コインロッカー
* 充電設備
* Wi-Fi
* コインランドリー
* 軽食
* 地域の観光案内
* スタジアム行きバスの発着場所


夜行バスで朝5時に到着した人が、シャワーを浴び、着替え、荷物を預ける。

少し休んでから、朝市へ行く。

喫茶店が開いたら朝食を取る。

午前中は街を歩き、午後にスタジアムへ向かう。

試合後はもう一度STAYXへ戻り、着替えてから夜行バスに乗る。

一泊分の客室を使わなくてもいい。

遠征者が必要としているのは、必ずしも午後3時から翌朝10時までのホテルではない。

街が動き始めるまでの数時間と、帰りのバスが出るまでの数時間を過ごせる場所である。

施設は、新しく建てなくてもよいかもしれない。

駅前の空き店舗。

営業時間外の公共施設。

スタジアムの諸室。

温浴施設。

既存ホテルの一部。

クラブ、自治体、交通事業者、観光協会が連携すれば、小規模な実証実験から始められる。

遠征者は、宿泊費を抑えられる。

その分、地元で食事をする。土産を買う。観光施設を訪れる。

安く遠征する人は、その地域にお金を落とさない人ではない。

交通費と宿泊費を抑えながら、街の中で使う人である。

日程くんは、何を考えて決めているのか

Jリーグの日程を作成するシステムは、通称「日程くん」と呼ばれている。

正式には「Jリーグマッチスケジューラー」という[4]。

日程くんは、近年の生成AIのように、過去の文章からそれらしい日程を考えているわけではない。数理最適化の技術を使い、膨大な条件を満たす組み合わせを探すシステムである。

開発元の日鉄ソリューションズによれば、2014年の日程作成から導入されている[5]。

日程作成では、

* 同じクラブのホームやアウェイが過度に連続しない
* 開幕直後のホームゲーム数を調整する
* 平日や大型連休のホーム開催が偏らない
* 中2日で戦う回数を調整する
* スタジアムの使用可能日を反映する
* 同一会場を使うクラブの試合を重ねない
* ACLなど別大会の日程を考慮する
* クラブや自治体の要望を反映する


といった多数の条件を扱う[5][6]。

シーズンを通じた公平性も必要だ。

すべてのクラブの希望を同時に満たすことはできない。

日程作成が非常に難しい仕事であることは間違いない。

だから、日程くんを批判したいわけではない。

むしろ逆である。

これほど多くの条件を計算できるなら、そこへ新しい視点を加えられないだろうか。

Jリーグが公開している日程作成条件の説明を確認した範囲では、

* アウェイサポーターが当日中に帰宅できるか
* 試合後の最終列車や最終便に間に合うか
* 翌日の仕事や学校に間に合うか
* 遠征者が現地で宿泊や観光をしやすいか
* アウェイ客による地域消費がどれくらい見込めるか

といった項目は確認できなかった。

もちろん、公開されていない内部の調整まで、まったく行われていないと断定することはできない。

ただ、少なくとも公式に説明されている主要条件の中では、アウェイサポーターが自宅へ帰るところまでが強く意識されているようには見えない。

日程くんが冷たいのではない。

私たちが、まだその条件を日程くんに教えていないのだ。

「80人しか来なかった」は、まだ証明できない

ここで、一つ注意しなければならないことがある。

Jリーグの公式記録に掲載される入場者数は、原則としてスタジアム全体の人数である。

ビジター席だけで何枚のチケットが売れたのか。

そのうち、実際に相手クラブの地域から来た人が何人いるのか。

通常は公表されていない。

したがって、

「日曜日だったから80人しか来なかった」

「土曜日なら300人来たはずだ」

と事実のように書くことはできない。

土曜開催と日曜開催でアウェイ動員がどれだけ変わるのかも、公開データだけでは証明できない。

ホームクラブの人気、順位、天候、対戦カード、キックオフ時刻、企画、スタジアムの立地など、入場者数には多くの条件が影響する。

それでも、調べる価値はある。

Jリーグやクラブには、

* ビジター席の販売枚数
* 購入者の居住地域
* チケット購入者が登録している応援クラブ
* 曜日とキックオフ時刻
* 翌日が平日か祝日か
* 両都市間の所要時間
* 最終列車や最終便の時刻

などの情報を組み合わせ、アウェイ動員を分析してほしい。

土曜日なら本当に増えるのか。

日曜日でも13時開始なら動けるのか。

翌日が祝日なら、日曜夜でも遠征者は増えるのか。

直行便がある都市とない都市では、どれくらい差が出るのか。

感覚ではなく、データで確認できる。

80人しか来なかったのではない。80人しか来られない条件だったのではないか。

今の段階では、これは結論ではない。

検証すべき仮説である。

すべてを土曜日にしてほしいわけではない

私は、J2とJ3の試合をすべて土曜日にしてほしいわけではない。

日曜日の方がホームサポーターにとって都合がよいクラブもある。

スタジアムを土曜日に確保できないこともある。

夏は昼間に試合ができない。

放送予定、警備、地域行事、選手の休養、カップ戦、積雪地の事情もある。

土曜日にJ1、J2、J3の試合が集中すれば、ニュースや中継で一つひとつの試合が扱われにくくなる可能性もある。

曜日を分散することにも意味はある。

だから、単純に「土曜開催を増やせ」と言うだけでは、解決策にならない。

重要なのは、同じ日曜開催でも、遠征の難易度が違うことだ。

近隣クラブ同士の対戦なら、日曜夜でも帰れるかもしれない。

遠距離でも、翌日が祝日なら泊まりやすい。

日曜日の13時開始なら、試合後に飛行機や新幹線で戻れることがある。

一方、地方と地方を結ぶ遠距離カードが、通常の日曜日の18時や19時に始まれば、月曜日に休める人しか行けなくなる。

そこで、日程くんの評価項目に「アウェイ帰宅可能性」を加えてはどうだろうか。

アウェイ帰宅可能性を計算する

日程くんへ新たに加える条件は、それほど複雑な思想ではない。

試合終了後、アウェイサポーターが自宅へ戻れる可能性を評価する。

たとえば、

* ホームタウン間の公共交通所要時間
* 直行便の有無
* スタジアムから主要駅・空港までの時間
* 試合終了から最終列車・最終便までの時間
* 夜行バスやフェリーの有無
* 翌日が平日か祝日か
* 周辺の宿泊施設数と価格


などを点数化する。

距離だけで判断しないことが重要だ。

600キロ離れていても直行便があれば移動しやすいことがある。300キロでも山や海を越え、何度も乗り換えるなら難しい。

そのうえで、次のような優先順位を置く。

1. 地方間の長距離カードは、可能な範囲で土曜日を優先する
2. 日曜日に開催する場合は、昼のキックオフを優先する
3. 日曜夜は、当日中に帰宅しやすい近距離カードを中心にする
4. 翌日が祝日なら、遠距離の日曜夜も選択肢にする
5. 日曜夜を避けられない場合は、公式バスや宿泊商品を同時に用意する


絶対に守らなければならない条件ではない。

日程を比較するときの加点、減点項目の一つでよい。

たとえば、競技上の公平性やスタジアム確保の条件が同じ二つの日程案があったとする。

一方は、秋田と大分の試合が日曜日の18時。

もう一方は土曜日の18時。

その場合、アウェイ帰宅可能性の高い土曜日を選ぶ。

その程度の小さな変更でも、遠征できる人は増えるかもしれない。

日程と交通を別々に考えない

日程をどうしても変えられないなら、移動手段を用意する方法もある。

試合終了後に出発する公式夜行バス。

アウェイチケットと交通を組み合わせた商品。

クラブスポンサーのバス会社や旅行会社との連携。

スタジアムから駅や空港へ直行する臨時便。

宿泊施設、観光施設、飲食店をまとめたアウェイパスポート。

STAYXのような早朝・深夜の滞在拠点。

日程発表と同時に、モデルルートを公開してもよい。

「この試合は、土曜日の夜行バスで出発すれば行けます」

「試合後はこの臨時バスで空港へ向かえば、最終便に間に合います」

「日曜日は一泊が必要ですが、月曜日の始発便で東京へ戻れます」

こうした情報が最初から示されていれば、ライトファンも検討しやすい。

現在は、遠征者自身が検索し、時刻表を調べ、ホテルを探し、スタジアムへの移動方法を組み立てている。

この計画作りそのものを楽しむ人もいる。

しかし、初めて遠征する人には難しい。

「行けるかどうか分からない」

そう思った時点で、多くの人は行かない。

クラブが売るべきものは、アウェイ席のチケットだけではない。

自宅を出て、試合を見て、街を楽しみ、無事に戻るまでの体験である。

土曜日開催は、地域消費を生み出す

仮に、千葉県から秋田の試合へ行くとする。

土曜日開催なら、金曜日の夜行バスで出発できる。

土曜日の朝に秋田へ到着する。

朝食を食べる。

街を歩く。

午後に試合を見る。

夜は地元の店で食事をして泊まる。

日曜日は観光し、土産を買って帰る。

月曜日は通常どおり仕事へ行く。

地域には、

* 飲食費
* 宿泊費
* 交通費
* 土産代
* 観光施設の入場料

が落ちる。

一方、同じ試合が日曜日の夜なら、月曜日に休めない人は、遠征そのものを諦める。

その人が地域で使うはずだった金額はゼロになる。

もちろん、土曜日にすれば必ず遠征者が増えるとは限らない。

「土曜日なら80人が300人になる」といった数字も、今は示せない。

しかし、少なくとも土曜開催には、

「日曜日を観光と帰宅に使える」

という大きな利点がある。

これは単なるサポーターサービスではない。

交流人口を増やし、地域での滞在時間を延ばす施策である。

J2やJ3のクラブは、遠征者一人が地域へ落とす金額を、小さく考えない方がよい。

一人が食事をする。

一人が泊まる。

一人が土産を買う。

最初は、それだけかもしれない。

しかし、その人が街を好きになれば、次は家族や友人と来るかもしれない。

アウェイ遠征は、地域を初めて訪れる入口になる。

理想のアウェイ遠征日程

私が理想とする遠征は、特別に豪華なものではない。

金曜日

仕事を終え、いったん自宅へ帰る。

シャワーを浴び、ユニフォームと最低限の荷物を持って夜行バスへ乗る。

土曜日

早朝、アウェイの街へ着く。

STAYXで少し休み、シャワーを浴びる。荷物を預け、街へ出る。

市場や喫茶店で朝食を取る。

午前中は観光する。

午後、スタジアムへ行く。

試合を見る。

勝っても負けても、夜は地元の店で食事をする。

安いホテル、カプセルホテル、STAYXなどに泊まる。

日曜日

午前中に、前日には行けなかった場所を観光する。

昼食を食べ、土産を買う。

午後から夜に自宅へ戻る。

月曜日

いつもどおり仕事へ行く。

これなら、コアサポーターでなくても挑戦できる。

一人でも行ける。

高級ホテルでなくてもいい。

新幹線でなくてもいい。

若い人なら夜行バスでいい。体力に不安があれば一泊増やしてもいい。

重要なのは、自分の予算と生活に合わせて選べることだ。

そして、初めての遠征が楽しいものになれば、翌年は別の街へ行きたくなる。

ホームゲームへ年に数回しか来なかったライトファンが、いきなり毎試合ゴール裏へ通うようになるとは限らない。

それでも、一度のアウェイ遠征によって、クラブとの距離が縮まることはある。

サッカーが試合結果だけではなく、自分の人生の記憶になる。

アウェイは、特別な人だけの趣味ではない

私は、毎週アウェイへ行きたいわけではない。

月曜日に休暇を取り、高い飛行機とホテルを予約し、すべての試合へ駆けつけることもできない。

でも、年に一度か二度なら行ってみたい。

夜行バスでもいい。

安い宿でもいい。

一人でもいい。

応援するクラブを追いかけて、知らない街を歩く。

そこで地元のものを食べ、試合を見て、日曜日のうちに帰る。

そして、月曜日からまた仕事をする。

そんな普通の人が、一人、二人とアウェイへ行くようになれば、少人数だったビジター席は少しずつ変わるかもしれない。

その人たちは、チケットを買うだけではない。

街で食べる。

泊まる。

土産を買う。

その地域を知る。

いつか家族や友人を連れて戻ってくる。

日程くんは、すでに何百もの条件を考えている。

スタジアム、放送、選手の休養、他大会、地域行事、公平性。

そこに、もう一つだけ加えられないだろうか。

この試合を見に行った人は、日曜日の夜までに家へ帰れますか。

アウェイに80人しか来なかったのではない。

その日程では、80人しか来られなかったのかもしれない。

その可能性を調べることから、J2、J3の新しい地方創生が始まるのではないかと思う。

続きはこちら

出典・参考資料

[1]Jリーグ「2025明治安田J2リーグ試合日程」。曜日別試合数は掲載された全380試合を筆者集計。
2025明治安田J2リーグ全日程⁠

[2]Jリーグ「2025明治安田J3リーグ試合日程」。曜日別試合数は掲載された全380試合を筆者集計。
2025明治安田J3リーグ全日程⁠

※長距離カード数は、両クラブのホームタウン代表地点間の大圏距離を筆者が概算し、直線距離600キロ以上を便宜的に抽出したもの。Jリーグの公式区分ではなく、実際の鉄道・道路距離や所要時間とは異なる。

[3]Jリーグ「2025年6月15日 大分トリニータ対ブラウブリッツ秋田」。
Jリーグ公式試合情報⁠

[4]Jリーグ「Jリーグ用語集・Jリーグマッチスケジューラー」。
Jリーグ用語集⁠

[5]日鉄ソリューションズ「進化する最適化技術VOL.1―『日程くん』でJリーグの試合日程作成を絶妙にアシスト!」。
日鉄ソリューションズ⁠

[6]Jリーグ「村井満チェアマンの『日程くん』に関するコラム」。ホーム・アウェイの連続数、開幕直後のホーム試合数、平日開催、中2日の試合数、スタジアム利用可能日などの日程作成条件を参照。
Jリーグ公式コラム⁠


本記事は、Kindle書籍『Jリーグアウェイ経済論 サポーターの移動から始まる地域交流』の調査・構想記事です。アウェイ遠征を、交通、宿泊、観光、地域消費、関係人口の視点から考えています。

蒼色真琴
MA Publishing

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