人口の7%がサッカーをする国とは、どんな国なのだろうか|Japan’s Wayから生まれた問い①。
私は、最新版のJapan’s Wayをかなり高く評価している。
日本サッカー協会が作った長期ビジョンだから、きれいな言葉が並んでいるだけだろう、とは感じなかった。
むしろ読んでいると、
日本がワールドカップで優勝するには、代表チームだけを強くすればいいわけではない。
というところまで、かなりはっきり踏み込んできた印象がある。
代表強化。
ユース育成。
指導者養成。
そして普及。
それらを一体で進め、「世界一、サッカーで幸せな国」になる。その先にワールドカップ優勝がある。
JFAは2022年にJapan’s Wayを策定し、2025年12月に第2版へ更新した。2050年までにサッカーファミリー1000万人、そしてFIFAワールドカップ優勝という目標から逆算し、現在とのギャップを埋めていく考え方である。(日本サッカー協会)
その中で、私が特に気になった数字がある。
人口の7%。
Japan’s Wayでは、ワールドカップに手が届く国では、登録・未登録を合わせたサッカー競技者・愛好者が、ほぼ人口の7%を超えていると説明している。旧版では、その状態を、街、学校、職場、家庭の中にサッカーがある社会と結びつけている。(日本サッカー協会)
7%。
数字だけなら分かる。
でも、
人口の7%がサッカーをする国って、実際にはどんな国なのだろう。
今回は、この数字を日常の風景へ置き換えて考えてみたい。
「7%」は、どこから出てきた数字なのだろう
まず気になった。
なぜ7%なのだろう。
5%でも10%でもなく、なぜ7%なのか。
JFAはJapan’s Wayについて説明する中で、FIFAランキング上位国では、サッカープレーヤーが人口の7%を超えているという統計があることを紹介している。
これは単なる精神論ではない。
背景を調べていくと、FIFAが2006年に行った世界規模の「Big Count」という調査に行き着く。
この調査が面白い。
数えているのは、各国協会へ登録された選手だけではない。
学校や大学、企業などでプレーする人や、ストリートサッカー、さらに推計されたカジュアルなプレーヤーまで含めている。
つまり、
その国で実際にどれくらいの人がサッカーをしているのか。
を捉えようとした調査である。
FIFAの推計では、2006年当時、世界で約2億6500万人がサッカーをしていた。
世界人口に対する割合は約4.1%だった。
ところが地域別に見ると、南米は約7.5%、欧州も約7.6%になる。
確かに、サッカーが強い地域では「7%」という数字が見えてくる。
サッカー大国では、実際にどれくらいの人がボールを蹴っているのだろう
さらに国別に見ると、数字の意味が少し具体的になる。
FIFA Big Count 2006では、
ドイツ 約1631万人
ブラジル 約1320万人
フランス 約419万人
日本 約481万人
がサッカーをプレーしていると推計されていた。
絶対数だけを見ると、日本の481万人もかなり多い。
フランスより多い。
ところが、人口が違う。
ドイツは当時約8200万人だから、サッカーをする人は人口の約20%。
ブラジルは約1億9000万人に対して約1320万人なので、約7%。
フランスも約6100万人に対して約419万人なので、7%弱になる。
一方、日本は当時約1億2800万人に対して約481万人。
4%弱である。
もちろん、これは2006年の調査である。
現在の各国をそのまま表す数字ではないし、国によって非登録プレーヤーの推計方法にも違いがあるだろう。
だから、
「7%を超えればワールドカップで優勝できる」
という話ではない。
実際、7%を超える国がすべてサッカー強豪国というわけでもない。
それでも、JFAがこの数字に注目する理由は分かる気がする。
世界平均が約4%だった時代に、欧州と南米は地域全体で7%を超えていた。
そして日本は4%弱だった。
ここには、
サッカーが強い国と、サッカーをする人が社会の中に広く存在することには、何らかの関係があるのではないか。
という問いが生まれる。
JFA自身も、アマチュアとプロの二つのピラミッドには相関があり、ワールドカップ優勝を目指すなら、サッカーを愛する人の「強固な地層」を厚くする必要があると説明している。
私は、この「地層」という表現がとても面白いと思った。
いまの日本人口で7%なら、約860万人になる
まず、現在の日本で7%とは何人なのか。
総務省統計局によると、2026年7月1日現在の日本の総人口は概算で1億2293万人である。(総務省統計局)
この7%なら、約860万人になる。
860万人。
かなり大きい。
JFAの2025年度サッカー選手登録数は83万6297人である。(日本サッカー協会)
単純に現在の総人口で割れば、登録選手は人口の約**0.68%**になる。
もちろん、ここで、
0.68%しかいない。7%には全然届いていない。
と考えるのは早い。
Japan’s Wayの7%は、JFA登録選手だけを意味していない。
登録外の競技者・愛好者まで含めた数字だからである。(日本サッカー協会)
ここが、今回の話でかなり重要だと思う。
登録していなくても、サッカーをしている人はたくさんいる
例えば、会社帰りにフットサルをする人がいる。
友人と月に一度、個サルへ行く。
大学のサークルでサッカーをする。
地域の草サッカーへ参加する。
子どもと公園でボールを蹴る。
40代になっても週末に仲間とゲームをする。
そういう人の多くは、JFA登録選手ではないだろう。
でも、
サッカーをしている人
ではある。
実際、笹川スポーツ財団の2024年調査では、20歳以上で過去1年間に1回以上サッカーをした人は推計369万人、実施率は3.6%だった。(笹川スポーツ財団)
さらに、2025年調査では10~19歳のサッカー実施人口が推計237万人、実施率22.1%とされている。(笹川スポーツ財団)
調査年や対象年齢、定義が異なるので、この二つを単純に足して「日本はいま何%」と断定することはできない。
ただ、少なくとも一つ分かる。
JFA登録者数だけを見ていると、日本で実際にサッカーをしている人のかなりの部分が見えない。
ということである。
では、日本はいま何%なのか
これが今回一番知りたかったところだった。
調べてみたが、
現在の日本で、Japan’s Wayとまったく同じ定義による「登録・未登録を含む競技者・愛好者が人口の何%か」
を示す最新の公表値は、今回確認した範囲では見つけられなかった。
これは結構大事なことだと思う。
JFA登録者なら正確に分かる。
83万6297人。
成人のサッカー実施人口なら、笹川スポーツ財団の調査で369万人。
10代なら237万人。
でも、
4歳から高齢者まで。
登録者も非登録者も。
11人制もフットサルも。
草サッカーも個サルも。
そういう人を同じ基準で数えた「現在の日本のサッカー実施人口」は、簡単には出せない。
だから私は、
いま日本は7%に対して何%なのか
を一つの数字で言うことより、
7%になった社会とは何が違うのか
を考える方が面白いと思う。
860万人が全員、クラブチームに所属している必要はない
7%と聞くと、つい、
860万人の登録選手をつくらなければならない
と考えてしまう。
でも、それはおそらくJapan’s Wayが描いているものではない。
JFA自身がJapan’s Wayについて、競技志向だけに特化するのではなく、サッカーが広く人々の生活に浸透している状態を目指すと説明している。(日本サッカー協会)
新版でも、日本型ダブルピラミッドとして「競技」と「楽しむ」の両方を発展させる考え方を掲げている。(日本サッカー協会)
つまり860万人の中には、
Jリーガーがいる。
育成年代の登録選手がいる。
大学サッカーの選手がいる。
地域リーグの選手がいる。
そして、
会社帰りにフットサルをする人もいる。
年に数回しか蹴らない人もいる。
子どもと公園で蹴る人もいる。
シニアになってから楽しむ人もいる。
競技としてサッカーをする人と、生活の中でサッカーを楽しむ人が一緒にいる。
そういう860万人なのではないだろうか。
7%という数字を「860万人」にするとまだ遠い
ただ、860万人と言われても、まだ数字でしかない。
そこで、もう少し風景にしてみたい。
例えば会社員の10人に1人弱が、ときどきボールを蹴る。
職場で、
「今日、フットサル行くんですよ」
という会話が珍しくない。
大学へ行けば、体育会だけではなくサークルにも普通にサッカーをする人がいる。
子どもが公園でボールを蹴っている。
父親だけではなく母親も一緒に蹴る。
40代、50代になっても、
「久しぶりにやろうか」
と普通に集まる。
60代、70代にも歩くサッカーがある。
女子も、初心者も、障害のある人も、それぞれ自分のペースで参加できる。
そういう光景が全国にある。
7%とは、
巨大な登録者名簿
ではなく、
街のあちこちにボールを蹴る人がいる状態
なのかもしれない。
「サッカーをする」が特別な決断ではなくなる
今の日本では、大人がサッカーを始めようと思うと、少しハードルがある。
チームを探す。
メンバーを集める。
場所を確保する。
初心者でも大丈夫か確認する。
経験者ばかりだったらどうしようと思う。
女性ならさらに選択肢が少ない地域もある。
高齢者なら、自分に合う強度の場を探さなければならない。
つまり、
サッカーをするために、サッカーをする覚悟が少し必要になる。
7%の国では、それが違うのかもしれない。
駅前にフットサル場がある。
公園にボールを蹴れる場所がある。
会社にサークルがある。
地域に初心者向けの場がある。
今日は11人制。
来週は5人制。
年齢を重ねたらウォーキングフットボールへ移る。
一度離れてもまた戻れる。
JFAがJapan’s Wayで示す、人生の状況に応じて「競技」と「楽しむ」の間を柔軟に行き来できる姿は、まさにこういう社会なのだと思う。(日本サッカー協会)
子どもの頃にやめても、サッカー人口から消えなくていい
ここは、日本にとってかなり大きい気がする。
10代のサッカー実施人口を見ると、2025年の実施率は10~11歳で32.1%、12~14歳で22.2%、15~17歳で17.5%、18~19歳で11.0%と、年齢が上がるにつれて下がっている。(笹川スポーツ財団)
もちろん、受験や部活動、進学などさまざまな理由がある。
でも、
少年団をやめた。
部活をやめた。
競技サッカーをやめた。
だからサッカーも終わった。
でなくてもいい。
高校では友人とフットサルをする。
大学ではサークルへ入る。
社会人になったら個サルへ行く。
子どもができたら親子で蹴る。
50代になったらシニアへ行く。
競技から離れても、サッカーから離れなくていい。
Japan’s Wayの7%を考えるとき、私はむしろここが重要なのではないかと思う。
世界トップを争う国では、サッカーが「用事」ではなく「生活」になる
Japan’s Wayの旧版には、7%の説明の直後に印象的な描写がある。
街。
学校。
職場。
家庭。
そこでサッカーが日常になっている。
家庭にはサッカーの会話があり、街では普通にボールを蹴り、子どもの手を引いてスタジアムへ行く。(日本サッカー協会)
私は、この部分にJapan’s Wayの面白さがあると思う。
ワールドカップ優勝というと、
強いストライカーを育てる。
世界最高の監督を呼ぶ。
海外組を増やす。
そういう話を想像する。
もちろん、それも必要である。
でもJFAは、その土台に、
家庭や職場にサッカーがある社会
を置いている。
これはかなり大きな話である。
なぜ裾野の大きさがトップにつながるのだろう
単純に考えれば、プレーする人が増えれば才能の母数が増える。
860万人がサッカーをしている国と、100万人しかしていない国なら、世界レベルの才能が現れる可能性にも違いが出るだろう。
でも、それだけではないと思う。
サッカーをしたことのある親が増える。
指導者になる人が増える。
審判をする人が増える。
ボランティアをする人が増える。
スタジアムへ行く人が増える。
サッカーに理解のある企業人が増える。
自治体の中にも経験者がいる。
学校の先生にもいる。
メディアにもいる。
つまり、
プレー人口が増えることは、将来の代表候補を増やすだけではなく、サッカーを支える社会全体の理解者を増やす。
そう考えると、7%という数字の意味はずいぶん大きくなる。
日本は「0.68%の国」ではない
ここは最後に、もう一度整理しておきたい。
JFA登録選手は人口の約0.68%。
だから、
「日本は7%に対してまだ10分の1しかない」
と考えるのは正しくない。
登録していないサッカー実施者が大量にいるからである。
成人だけでも、年1回以上サッカーをする人は推計369万人いる。10代には237万人いる。(笹川スポーツ財団)
ただし、これらの統計とJapan’s WayのFIFA推計は対象や定義が違うため、
「現在の日本は○%です」
と同じ物差しで断定することもできない。
むしろ、この「正確には分からない」ということ自体が、次の問いにつながる。
日本で実際にボールを蹴っている人を、私たちはどこまで把握できているのだろうか。
会社帰りのフットサル。
大学サークル。
草サッカー。
親子サッカー。
こうした人たちはJFA登録者には現れない。
では、その差をどう考えればよいのだろう。
これは次の記事で考えてみたい。
世界一を争う国とは、ボールを蹴ることが普通の国なのかもしれない
人口の7%。
約860万人。
最初は、とてつもなく大きな数字に見えた。
でも、Japan’s Wayを読みながら風景に置き換えてみると、少し意味が変わってくる。
860万人のエリート選手をつくる話ではない。
860万人をJFA登録する話でもない。
子どもから高齢者まで、それぞれの距離でボールを蹴っている。
そして、
サッカーをすることが特別ではない。
そんな社会をつくる話なのだと思う。
世界トップを争うサッカー大国とは、代表チームが強い国である前に、
ボールを蹴ることが日常の一部になっている国。
Japan’s Wayの「7%」は、そんな日本の未来を数字にしたものなのかもしれない。
そして次に気になる。
その未来を目指すなら、会社帰りにフットサルをしている人まで、JFAに登録した方がいいのだろうか。
私は、そこには少し違和感がある。
次回:会社帰りにフットサルをする人まで、JFAに登録した方がいいのだろうか|Japan’s Wayから生まれた問い②
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