千葉の豪雨、ガソリン残量ゼロ。暗闇の車内で私たちが下した「一か八かの賭け」
「いつもの大雨かな」 そう軽く考えていたが、
美容院を出た一歩目で完全に打ち砕かれた。
想像を絶するほどの土砂降りの雨。
手元にあったのは、晴れ渡る空の下で差していた
「小さな日傘」だけ。
外に出た瞬間、容赦なく叩きつける雨粒に、
一瞬で全身がずぶ濡れになった。
あのとき、私はまだ知らなかった。
このあと、想像を絶する恐怖の連続が
私たちを待ち受けているなんて。
お仕事がお休みの日。
夫と一緒に車で柏へ向かい、私は美容院へ。
夫は別の場所で時間を潰してもらうことになった。
行きは雨なんて降っていなくて、
むしろ晴れていたから「日傘」を持って
出かけたほどだった。
施術の途中、美容師さんが
「外、すごい雨みたいですよ」と
教えてくれたけれど、そのときは
「きっとすぐに止むだろうな」と、
どこかでのんきに構えていた。
だが、いざ美容院を出ると想像を絶する土砂降り。
小さな日傘しかなかった私は一瞬で
ずぶ濡れになり、慌てて夫の待つ車に飛び乗った。
「ふう、これで一安心だ」と思った。
だけど、甘かった。
雨の量は一向に減らない。
それどころか、道路の脇には車体の半分まで
水に浸かって動けなくなっている車が何台もあり、みんなUターンしていくのを目撃した。
「この道、大丈夫なのだろうか…」
「この先、もっと水が深くなって車が水没したらどうしよう…」
いつ自分の車が動かなくなるのか分からない
恐怖と緊張感で、心臓がバクバクしていた。
そして、もう少しで家というところまで
近づいたとき、最悪の事態が起きた。
なんと、ガソリンの走行距離表示が
「0」になってしまったのだ。
乗る前はちゃんと50キロもあって、
家までの距離なんて余裕で足りるはずだった。
それなのに、激しい雨の水圧や
ワイパーのフル稼働で、想像以上にガソリンを
消費してしまっていたらしい。
他の車の邪魔にならないよう、
慌てて車を道路の脇に寄せる。
すぐにロードサービスに電話をかけた。
しかし、回線が混み合っているのか、
一向に繋がらない。
外では雷が鳴り響き、近くには大きな木もある。
「いつ落雷してもおかしくない」という
最悪の状況だった。
雨は止まない。
不安と恐怖で押しつぶされそうになる。
やっとの思いで電話が繋がっても、
「10〜15分以内に折り返します」と言われたまま、
その時間が過ぎても音沙汰がない。
痺れを切らしてこちらからもう一度かけ直すと、
ようやく繋がった。
「ガソリンを届けに行きますが、この大雨で渋滞や冠水が起きていて混み合っています。1時間前後かかります」と言われた。
仕方がないと頭で理解しつつも、
「1時間もこの中で待つのか…?」と絶望した。
近くの川が氾濫したらどうしよう。
雷が落ちたらどうしよう。
恐怖で息が詰まりそうだった。
そして、言われた1時間経っても、誰も来なかった。
結局、2時間半近くずっと車の中で待ち続けたが、
連絡も何も来ない。
電話をかけてもずっと繋がらない状況が続いた。
「私たちはこのまま家に帰れないのでは…?」
「この暗闇の中、車中泊になるのか…?」
その日は幸いにもそこまで暑さがなく、
涼しかったのだけが唯一の救いで、
エンジンを切ってエアコンがなくても
過ごすことができた。
電話が繋がっても、
「混み合っていて、いつ向かえるか目処が立っていません」との返事だった。
そのとき、隣りにいた夫が言った。
「ガソリンは0になったけど、こういう表示が出てからでも数10キロは走れる仕組みになっていることが多い。一回、このまま走ってみてもいいかな?」
私は怖かった。
焦りと不安で頭がいっぱいになっていたけれど、
隣の夫はずっと冷静で落ち着いていた。
ただでさえ心配性で不安症な私にとって、
ここで動くのは賭けすぎだ。
「このまま大人しく待っていた方が安全なのでは」
「もし途中で止まってしまって、後ろから追突
されたらどうしよう」と頭をよぎった。
でも、夫は言った。
「このままここで待ち続けても、いつ来るか分からない。行けるところまで行って、無理だったらまた端に避ければいい」
私は免許を持っていなくて、車の感覚が全く分からない。だからこそ、夫の言葉を信じるしかない状況だった。
「…わかった。一か八か、走ってみよう」
家までは、まだ二駅分くらいの距離があった。
心臓が口から飛び出しそうなくらいドキドキして、全身の緊張感がピークに達する。
「どうか止まらないで」
「このまま走り続けて、お願いだから家まで持っていて…!」
祈るような気持ちで、暗い夜道を車は進んだ。
そして――。
なんと、ガソリンは家まで持ってくれた。
無事に、私たちの自宅の駐車場に
たどり着くことができたのだ。
車を降りた瞬間、緊張の糸がプツリと切れた。
「怖かったね…」と、お互いにホッとして
ぎゅっと抱き合った。
もし私一人だったら、自分のこの心配性な性格上、あのまま何時間でも車内で待ち続けた。
きっと家には帰れなかった。
夫のチャレンジ精神と行動力に、
またしても助けられた。
私は終始パニック気味だったけれど、
夫はずっと冷静でいてくれた。
本当に性格が違う二人だけど、
そのおかげでピンチを乗り越えることが
できたんだなと実感した。
当たり前のように家で過ごせること。
電気や水が使えて安全な場所にいることが、
こんなにもありがたいことなんだと
改めて痛感した夜だった。
(※このとき、地域によってはさらに大変な被害に遭われた方もいらっしゃると思います。私たちの経験は一つの体験談ですが、日常の無事がいかに尊いかを深く考えさせられる出来事でした。)
数日経った今でも、まだドキドキしている。
それでも私たちの「生還劇」として、
一生忘れられない出来事になった。
あの日、あの時、あの決断をして本当に良かった。
日々。
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