見出し画像

世界を魅了したトルコ料理

遊牧民から定住へ 変化する食文化

トルコ料理は中央アジアの遊牧文化とアナトリアの豊かな大地、さらにオスマン帝国が支配した広大な地域の食文化が何世紀にもわたって融合した結果、生まれた料理です。

今回は、その歩みを歴史とともにたどります。

トルコ人の祖先であるテュルク系民族は、中央アジアの草原で遊牧生活を送っていました。

羊やヤギ、牛、馬を飼い、牧草地を求めて移動する生活では、肉と乳製品が食生活の中心になります。

この時代に発達した代表的な食品がヨーグルトです。


発酵乳は中央アジアなどで古くから作られておりトルコに限定したものではありませんが、『ヨーグルト(yoğurt)』という名称はトルコ語に由来します。

保存性を高める知恵から、チーズやバターなども盛んに作られ、現在のトルコ料理でも乳製品は欠かせない存在となっています。

11世紀後半、セルジューク朝がアナトリアへ進出します。

中央アジアから移住したテュルク系の人々の食文化と、アナトリアに以前から存在していた農耕・都市文化が融合していきます。

小麦、大麦、野菜、果物、豆類などが食卓に加わり、現在のトルコ料理につながる食文化の基盤が形成されていきます。

帝国が育てた宮廷料理

オスマン帝国は14世紀から勢力を拡大し、やがてバルカン半島、中東、北アフリカなど広大な地域を支配しました。


各地から集まる食材やそれぞれの土地で培われた調理法は、宮廷の食文化にも取り入れられていきます。

皇帝が暮らしたトプカプ宮殿には大規模な厨房が設けられ、多くの料理人や職人が料理の種類ごとに分業していました。

宮廷では肉料理だけでなく魚介料理、米料理、野菜料理、菓子など、多彩な料理が作られていたことが記録されています。

帝国の拡大や交易によって、さまざまな地域の食材や香辛料もオスマン帝国へもたらされました。

こうした食材は宮廷料理に取り入れられ、料理の種類や調理法をさらに豊かにしていきます。

近代に入ると料理書も出版されるようになり、宮廷や都市で培われてきた料理が文字として記録されていきました。

こうして長い時間をかけて、オスマン帝国の宮廷料理は複雑で多彩な食文化へと発展していきます。

現在のトルコ料理には、長い交流の痕跡が残されています。異なる地域の食材や調理法が一つの食卓に集まり、そこから現在の豊かな食文化が形づくられていきました。

トルコ最大の都市 イスタンブール


トルコを代表する料理

トルコ料理といえば、まず思い浮かぶのがケバブです。

日本では回転する肉を削ぎ落としてパンに挟むドネル・ケバブが有名ですが、本場では皿盛りや薄焼きパンで包むなど食べ方はさまざまです。


串焼きのシシ・ケバブや、パンの上に肉をのせてトマトソースとヨーグルト、溶かしバターをかけるイスケンデル・ケバブも人気があります。


粉もの料理も豊富です。

舟形の生地に肉やチーズをのせて焼くピデはトルコ風ピザと呼ばれることもあり、小麦文化の豊かさを感じさせます。

小さな餃子のようなマントゥは、ヨーグルトとトマトソースを合わせる独特の味わいで家庭でも親しまれています。

前菜にはメゼが並びます。

フムスや野菜のマリネ、魚介料理などを少しずつ楽しみながら食事を進めるのは、トルコらしい食文化の一つです。

家庭ではメネメンというトマトと卵の炒め料理や、ナスにひき肉を詰めたカルヌヤルク。

茄子の皮を剥いて縞模様にするのが伝統的トルコ流


レンズ豆や豆類の煮込み、オリーブオイルを使った野菜料理などが日常の食卓を彩っています。

デザートでは、薄い生地を何層にも重ねてナッツとシロップを合わせたバクラヴァが有名です。

また粘りのある独特の食感で知られる冷菓ドンドゥルマも、多くの観光客が楽しみとする名物となっています。


飲み物としては、トルココーヒーは外せません。

細かな粉を専用の小鍋で煮出す独特の抽出法は、2013年にユネスコ無形文化遺産へ登録されました。

また、飲み終えた後に残る粉で未来を占う「コーヒー占い」も受け継がれています。

飲んだ後カップをひっくり返して冷まし、残った粉の模様を見る
ハート=恋愛運UP 鳥=吉報 道=転機など


小話 世界三大料理という概念

日本でトルコ料理はフランス料理、中国料理と並ぶ「世界三大料理」の一つとして紹介されることがあります。

しかしこの分類を最初に提唱した人物や機関は確認されておらず、国際的な公式基準でもありません。

1950年代〜60年代から、雑誌や新聞などでぽつぽつと散見され始めたようです。

とはいえ、トルコ料理が世界有数の豊かな食文化であることは間違いありません。


遊牧民の知恵、農耕文化、交易、宮廷料理、そして家庭の味。

幾つもの歴史が一つの食卓の上で重なり合い、現在の豊かな食文化を形づくっています。

首都 アンカラ




文化が混じり合う場所の食文化は素晴らしい。


いいなと思ったら応援しよう!

深水 夜名河(フカミ ヨナガ) 無理にやるようなことじゃありません。