看護師になって初めて知った「先生」の本当の姿
医者は神様じゃない。
看護師になる前の私は、医者という存在を少し特別に見ていました。
どんな病気でも分かる。
どんな患者さんでも治せる。
先生によって多少の性格の違いはあっても、
医学的な判断は誰でも同じ。
そんなふうに思っていました。
でも、その考えは看護師になってすぐに崩れました。
同じ患者さんを診ても、
「今日は様子を見ましょう。」
と言う先生もいれば、
「すぐに検査しよう。」
と言う先生もいます。
ある先生は「この薬で十分」と言い、別の先生は「薬を変えよう」と判断する。
最初の頃の私は混乱しました。
「どっちが正しいの?」
と。
でも経験を重ねるうちに気付きました。
医学は、必ず一つの答えだけがある世界ではないということです。
専門分野や経験、患者さんの状態によって、考え方が変わることもあります。
だからこそ、セカンドオピニオンという考え方があるのだと、現場で働いて初めて理解しました。
「人気の先生」が、「現場で信頼されている先生」とは限らない
患者さんへの説明がとても上手で、いつも笑顔。
外来では「あの先生がいい」と指名される先生もいます。
一方で、看護師から見ると、カルテの記載が遅かったり、口頭だけで指示を出したりして、現場が混乱することもあります。
逆に、患者さんからは「ちょっと怖い先生」と思われていても、看護師からの相談には必ず耳を傾け、夜中でも病院へ駆けつけ、必要な指示を丁寧に残してくれる先生もいました。
患者さんが見る先生と、医療者が見る先生。
その姿は、必ずしも同じではありません。
尊敬する先生には共通?
私が尊敬する先生には、共通点がありました。
それは、「分からない」と言えることです。
難しい症例では他の診療科に相談する。
自分より詳しい先生がいれば、その意見を聞く。
看護師から「何かいつもと違う気がします」と声をかけられたら、一度立ち止まって患者さんを診に行く。
そして忙しい中でも、カルテにはきちんと指示を残す。
実は、こうした一つ一つの積み重ねが、患者さんの安全につながっています。
看護師は医師の指示がなければ、多くの医療行為を行えません。
だからこそ、「先生、カルテにも指示をお願いします」とお願いすることがあります。
忙しい先生には申し訳ないと思いながらも、その一文が患者さんを守り、先生自身を守ることにもなるからです。
おわりに
医療現場に入る前は、「できる先生」とは、何でも知っていて、何でも一人で決められる先生だと思っていました。
でも今は違います。
本当にすごい先生は、完璧な先生ではありません。自分の限界を知り、人の力を借りることができる先生です。
医師、看護師、薬剤師、検査技師、リハビリスタッフ…。
それぞれの専門性を信じ、チームとして患者さんを診ることができる先生ほど、現場では深く信頼されていました。
医者は神様ではありません。
知識にも経験にも得意不得意があります。
疲れる日もあります。
迷う日もあります。
感情的になることだってあります。
でも、それは医師の価値が低いという意味ではありません。むしろ、自分は万能ではないと知っている先生ほど、学び続け、相談し続け、患者さんに真摯に向き合っていました。
私は、そんな先生方の背中をたくさん見てきました。だから今、「先生」と聞いて思い浮かべるのは、完璧な人ではありません。
悩みながらも学び続け、患者さんのために最善を探し続ける、一人の医療者です。
白衣を着ているから神様なのではない。
白衣を着ていても、一人の人間。
それでも目の前の命と向き合い続ける姿があるからこそ、私はその仕事に敬意を抱いています。
ではまた★
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