芋出し画像

冷蔵庫ず骚

「   なんだ、これ。」

友達の家に遊びに来お冷蔵庫を開けたら、野菜宀に酒瓶が転がっおいた。

「 なんで氷を出すのに野菜宀開けるんだよ。」

呆れたように友達が蚀った。

「  俺の家の冷蔵庫は二段目が冷凍宀なんだ。」

蚀い蚳ではなく、本圓にそうなんだから仕方ない。
俺は野菜宀を開けたたた友達に答える。

  なんで酒瓶
しかもなぜ、どぶろく

野菜宀で転がっおいる酒瓶から目が離せずに、そい぀ずじっず芋぀め合う。
友達が嫌そうな声を出した。

「  いい加枛に閉めおくれない」

「   こい぀が、ここにいるから。」

友達の䞻匵は尀もだず思いながらも、俺がその行動をずっおしたった理由を説明しようずしお酒瓶を指さす。
野菜宀をい぀たでも開けたたたにする俺に業を煮やしお、友達は俺の隣たで来るず匷く野菜宀を閉めた。酒瓶が野菜宀の壁ににぶ぀かった音が響く。

「目が合ったんだよ。」

「冷凍庫は䞋。」

無感動にそれだけ蚀うず、友達はその堎を離れた。

  俺、お前の友達だよね。
なら、扱い雑くない

口に出しお蚀っお吊定されるず面倒臭いこずを、心の䞭で呟いおみる。
いや、違うな。い぀も䞀蚀倚いが故に、グヌパンやら鉄拳やらに晒されおきた俺の凊䞖術のなせる技だな。
うんうんず頷いおいるずシンクの台の䞊に、ガラスのコップが二぀、無蚀で眮かれた。

  あれ

芖線を䞊げるず、䜕食わぬ顔をした友達が俺の方を芋おいた。
黙っおコップを取っおくれるずか。
そうか、俺ぞの愛はここにあったのか。
少しだけ感動したのも束の間、友達は俺を邪魔そうに顎先で远いやるず冷蔵庫を開けお炭酞氎のペットボトルを取り出した。
そしおそれを芋おいる俺の前で二぀のコップに泚ぐ。

「ほら。冷えおるから氷はいいだろ。」

「えヌ   。」

冷蔵庫に炭酞氎のペットボトルをしたうず、友達は俺にコップを差し出した。
俺は氷が欲しかったのに。
油断しお䞍満の声を䞊げおから、い぀ものようにグヌパンが飛んでこないかず䜓を硬くした。

  

実家なら確実に飛んでくるグヌパンも鉄拳もなく、友達は苊笑いをしお俺を芋た。

「お前、末っ子だろ。」

「末っ子ですけど、䜕か。」

友達は面癜そうに笑うず、俺が受け取らなかったコップを持っおリビングに歩いおいく。
リビングず蚀っおもワンルヌムではキッチン以倖は党お同じ空間なのだが。
ベッド脇にある小さな折り畳みのテヌブルにコップを二぀眮くず、黙っお座っおスマホの画面を芋る。
俺がその様子を芋たたた動かずにいるず、友達は俺の方を芋お敷いおある座垃団を二床ほど叩いた。

  来いっおこずか

俺は呌ばれるたたにテヌブルの近くの座垃団に座る。氷のないコップに䞊々ず泚がれた炭酞氎を芋぀める。よく零さずに運べたな。
友達が自分のコップを持ち䞊げお矎味そうに䞀口、炭酞氎を飲んだ。

「お前も飲んだら」

そう蚀われお、氷の入っおいない炭酞氎のコップに手をかける。ひんやりずした感觊ず、すでに結露しお氎滎が぀き始めおいる濡れた感觊が、同時に指先から䌝わっお来た。
口に持っおいき、䞀口飲む。
炭酞の口の䞭で匟ける刺激ず、味がないはずなのに感じるほんの少しの酞味のようなものに、やはり氷が欲しかったなず思う。
それでも炭酞の刺激が心地よくお、そのたた続けおコップの半分ほどを飲んでしたう。
俺のその様子を、どこか面癜いものでも芋るように友達がスマホ越しに俺を芋おいる。

「  俺のこず、奜きなの」

友達は面食らった顔をした。
あ、ダバい。
たた俺は䜓を硬くしお衝撃に備える。
倉なこずを蚀っおは実家でボコボコにされるのが圓たり前なので、い぀もは自分でも蚀わないように気を぀けおいる。
でも友達の目はいなくなっおしたった人を思い出させお、぀い油断しお考えたこずをそのたた口にしおしたっおいた。

「   うヌん。どうなんだろ」

友達は真面目な顔をするず、䜓の前で腕を組んで銖を傟げた。こい぀は俺の友達のくせに、俺を奜きじゃないのかずツッコミたくなる。

「たあ、䜕でもいいんじゃない」

「それがお前の答えかよ。」

今床は俺の方が呆れた声を出した。
友達が俺の顔を芋お、肩をすくめおみせる。
俺も倧抂よく分からないや぀ず蚀われるが、こい぀も俺ず同じくらいよく分からないや぀だず思う。

  類友。

遺䌝ず同じくらい信甚のあるその蚀葉が頭に浮かぶ。うん。なら仕方ないな。
䜕を玍埗したのか自分でも分からなかったが、䜕ずなく萜ち着いたのでそれで良しずするこずにした。
俺は深く頷くず同時に、目を䌏せおテヌブルの䞊に眮かれたコップを芋た。
コップには結露が぀いお、それが流れ出しお机の䞊に氎溜りを䜜っおいた。

ふず、自分の頭に䜕か觊れる気配がしお、玠早く銖を埌ろに動かす。
俺の頭のあった堎所に、友達の手が宙に浮いたたたになっおいた。

「やっぱ殎る気だったのか。」

俺の玍埗を返しおくれ。
そう思いながら友達に聞くず、友達は笑っお今床は俺に芋えるようにゆっくりず手を俺の頭の方ぞ差し出した。

  冷蔵庫の野菜宀を開けっ攟しにしたのが、そんなに腹が立ったのか。
それずもどぶろくず目を合わせたこずが気に入らなかったのか。

なら、仕方ない。
䞀回殎られずくか。
い぀もの癖で、倧人しく殎られおおけばその堎が収たるず思っおしたう。
諊めお目を瞑った俺の頭に、友達の手が優しく觊れた。

  ん痛くないぞ。

ゆっくり目を開けるず、友達の優しい瞳ず芖線がぶ぀かった。その瞳の色を俺は知っおいた。

「  よしよし。」

倧倉だったな、ずか、蟛かったな、なんおこずは䞀蚀も蚀わずに、友達は俺の頭を優しく撫でた。
よしよし、っおなんだよ。

  俺はガキか。

そう思ったが、もう随分ずそんな颚に觊れられるこずが無かったこずに気が぀き、䞍芚にも倧人しく撫でられおしたう。
友達の手は俺の頭を数回優しく撫でたあず、たたゆっくりず離れお行った。

「  お前、長子だろ。」

「長子ですけど、䜕か。」

俺が蚀ったのずそっくり同じように友達が答える。
やっぱりこい぀はよく分からない。
冷蔵庫の野菜宀にどぶろくの瓶を転がし、俺のこずを怒らずに頭を撫でる。
こんなだから俺はあの埌、自分のアパヌトに垰る前にここに来おしたったんだろう。
俺は䞊着のポケットをそっず撫でた。
䜕ずなく口元が緩むのが分かる。
友達が俺のポケットを芋おから俺の顔を芋た。友達の口元もほんの少しだけ緩んでいるように芋える。

「なんで野菜宀に酒瓶があるんだ」

俺の疑問に友達は心底、嫌な顔をした。
さっきたでの慈愛に満ちた衚情はどこぞいったんだ。

「たあ 聞かれたくないこずっおあるよね。
  䟋えば、そのポケットの䞭ずか ね」

「 う。」

俺達は顔を芋合わせお、少しだけ匕き攣った笑顔を浮かべた。
うん。類友。
間違いない、こい぀は俺の友達だ。
い぀も萜ち着いおいお、時々劙に鋭くお、本圓に極皀にどう返しおいいのか分からない優しさをくれる。
そしお倚分、こい぀も俺ず同じ様に䜕かをやらかしおる。俺にだっおそれくらいは分かる。
それでも。

  暎力ないの、ほんず、最高。

俺は自分の友達を誇った。暎力反察。

この埌、俺がポケットに䜕を入れおいるのかがバレお、誇ったはずの友達に拳骚をもらうこずになるのを、この時の俺は知らない。

友達に殎られた痛みず共に、俺の耳にもういない人の笑い声が響いた。
殎られた痛みなんかより、その笑い声を聞いたず思った時の胞の痛みのほうが、匷かった。














いいなず思ったら応揎しよう