シネマ歌舞伎「風の谷のナウシカ 後編」観てきました!
先週、新橋演舞場にて「もののけ姫」を観てきたばかりだが、今日も今日とてシネマ歌舞伎「風の谷のナウシカ 後編」を堪能した。
封切られてから既に40周年を迎えたアニメ映画の「風の谷のナウシカ」ではなく、月刊「アニメージュ」に足掛け13年に渡り掲載されていた原作を歌舞伎化されたものを、これまた高性能のカメラで撮影しスクリーンで上映する、松竹ならではの映像作品である。
詳細はこちらを御覧くだされ。
「もののけ姫」は昼公演に行ったのだが、「ナウシカ」の場合は原作全7巻を完全舞台化ということで昼夜続けての公演、映画も前編171分、後編192分の2部作となっている。映画だけでも6時間近く、芝居では文字通り1日仕事な訳ですな、観客も役者も。タフやわいな…
新作歌舞伎とスーパー歌舞伎との違い
両者を立て続けに観たことで、少しは違いにも気づいた。AI先生にきいたら何でも教えてくれる時代になったけど、そこはぐっと堪えて自分なりの気づきを纏めてみるとしよう。
台詞の言い回し
スーパー歌舞伎「もののけ姫」の観劇記事にて世界の普通からさんから
歌舞伎はセリフが独特で聴き取りにくいところがありますが、スーパー歌舞伎はそのあたりどうでしたか?
と問われたのだけど、全く気にならなかったことを思い出した。
例えば「おかえりなさいまし」とかではなく「おかえりなさい」と言ってたし、アシタカも普通に「~なんだよ」とか現代語風。発声こそ歌舞伎だったかも知れないのだが。
一方、新作歌舞伎「ナウシカ」は違う。
「いざゆかん」とか…もっと抑揚ついて「いぃざ、ゆ~~か~~~ぬ~~」みたいな感じと言ったら伝わる?
見得を切る、屋号&掛け声
同じ新橋演舞場での舞台なのに、「もののけ姫」にはほぼ登場していないと思われる演出がある。見得。
感情の高まりなどを表現するために、演技の途中で一瞬ポーズをつくって静止する演技をさし、その人物をクローズアップさせる効果があります。
「ナウシカ」では随所に現れ、その度にカメラが役者をクローズアップしていた。
見得≒舞台での盛り上がりとは切り離せないのが役者の家系を表す屋号と、その掛け声ではなかろうか。
これも「もののけ姫」ではほぼなかった気がする。ちょっと期待していたのだけど。「ナウシカ」では事あるごとに「~~屋!」と誰かが発していた。正直よくはきこえなかったがナウシカは八代目尾上菊五郎なんで「音羽屋!」、クシャナ殿下は中村七之助なんで「中村屋!」かな?
長唄&日舞
こちらから画像を拝借。

この場面は後編のハイライトのひとつだと思う。土鬼帝国がトルメキア王国を壊滅させるため人為的に栽培した不妊性の粘菌が引き金となり、大海嘯という災禍を引き起こすのだが、それを鎮めるために各地より集った王蟲と共に森になろう…とナウシカが希うシーン。
舞台上手に唄方と三味線方が陣取り、その歌舞演曲が流れるなか八代目尾上菊五郎が華麗な舞いを披露するのだ。ひたすら。ひたすら。王蟲への想いを込めて。数十分になんなんとする時間を。
新橋演舞場のキャパは1,428席らしいので、毎日毎日、その数十分を己ひとりで背負っておられたのだね…
悪の華
前編を観たとき、土鬼神聖皇帝ミラルパの描き方に唸ったことを書いた。
歌舞伎という表現方法をうまく使い、ナウシカの世界観をめちゃめちゃ表しているようで目が離せなかった。蒼い隈取りだけで「悪」を表現するというやつである。
後編では、超常の力がないために皇弟ミラルパに虐げられてきた皇兄ナムリスが登場。正直その男振りに震えた。色悪って役で合ってるのか?
あとヴ王は外せぬ。クシャナ殿下の父君ね。

原作漫画ではふとっちょで無慈悲、腐れ外道な描かれ方だったが、中村歌六どののヴ王は、男振りが格段に増していた。この物語のキーとなるシュワの墓所でのやり取りや、その後の死の間際でクシャナ殿下へ「王位を譲る」と宣ったとき等。
毛振り
そもそものあらすじを知っている故に、結末をどう決着つけるのかは興味があった。特に、蘇ってしまった史上最恐兵器巨神兵と、シュワの墓所の主との対決。まさかこう来るとは…
連獅子だと、白が親獅子、赤が子獅子のはず。
「ナウシカ」ではこうだ。白がシュワの墓所の精、赤が巨神兵の精。
本作をオススメしてくだった同僚のひとりが「ありえない設定が歌舞伎には多いので、ファンタジーをSFXなくても受け止められるくらい懐が深い」を体感したひとときでありました。
シネマ歌舞伎「風の谷のナウシカ 後編」について、上演中のスーパー歌舞伎「もののけ姫」とも絡めつつ、感想を述べてみた。どちらもそれぞれのよさがあり、役者さんや裏方さんたちの原作へのリスペクトがひしひしと伝わってくる素晴らしい演目だった。映画は間もなく終わってしまうけれど、「もののけ姫」の興行はあと1ヶ月程続きます故、まだ席に余裕があれば是非とも、劇場へ足を運んでいただけましたなら恐悦至極に存じまする。
