ジャンク棚で眠っていた、世界最小の一眼レフ ─ PENTAX auto110
ロモグラフィーが110フィルムを復活させる前、110カメラは「もう撮れないカメラ」でした。フィルムが手に入らないのだから当然です。カメラ店のジャンク棚の箱の中に、いくらだったか思い出せないほどの値段で転がっていました。
私のPENTAX auto110も、そうして手に入れたものです。発売当時、とても欲しかったのに手が届かなかったカメラ。撮れないことは分かっていて、記念のつもりで買いました。
このカメラ、見た目はまるでミニチュア模型です。ただ、小さいだけなら今の時代、驚きはありません。デジタルならいくらでも小さなカメラは作れます。auto110が特別なのは、この小ささで構造も機能も本物のフィルム一眼レフだということです。
最初に驚かされるのはレンズです。広角18mmは、まるで洋服のボタンのような感覚。標準24mmも望遠50mmも、掌で転がるほどの大きさで、思わず笑みがこぼれます。ところが、これをボディに装着すると「カチリ」と正確に嵌まり込む。35mm一眼レフでレンズ交換をするのと同じ快感が、この小ささで得られるのです。

ファインダーを覗けば中央にマイクロプリズムがあり、像がくっきりと整う瞬間の感触は本格一眼レフそのもの。シャッターを切ると軽やかな「チャッ」という音とともに、小さなボディの中でミラーが跳ね上がります。オートワインダーまで作ってしまったところが、またマニアックで素晴らしい。
だから、フィルムの復活を知って最初の一本を通したとき——「記念」だったはずのカメラがちゃんと写ったときの喜びは、とても大きなものでした。



写真は、おもちゃの延長ではありません。TTL測光の自動露出がしっかり効いて、暗い室内でも明るい屋外でも安定した写りを残します。ネガサイズの制約はあっても、十分に作品として耐える写真が生まれます。精巧なミニチュアの愛らしさと、撮ったときの確かさ。この二面性が、auto110を特別な存在にしています。
ところで。
同じ110カメラには、まったく別の遊び方があります。

水平線が逆に歪む不思議

強烈なカラーシフト
ロモグラフィーの110カメラに、クセの強いフィルムを入れて撮る世界です。色が見た目とまるで違ったり、フレームの端が暗くなったり、光が入り込んだり。現像から上がってきた写真を見て「へー!?こんな感じになるんだ」と感心する。きちんと写らないからこそ出会える一枚が、確かにあります。
精密の極みと、予測不能の愉快。正反対に見えるふたつの世界が、指先ほどのフィルムフォーマットの上に同居しています。どちらにも共通するのは、思い通りにならないものと付き合う楽しさかもしれません。
この小さなフォーマットの両方の世界を、一冊の本にまとめました。『110カメラ・リターンズ』(👉Amazonで見る)。それぞれの世界の話は、また改めて書きます。
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