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家族・所有・経営。3つに分けて、承継のモヤモヤを地図にする

「親子で揉めている」「兄弟で役割に対する意見が割れた」「社長と先代(会長)の言うことがまるで違う」
承継のご相談では、こういう話をよく聞きます。

中身は会社ごとに違いますが、共通しているのは、「家族の話と経営の話と所有の話が、一緒に持ち込まれてしまう」という点です。

ファミリービジネスの研究では、こうした三つを一枚の図に重ねて見る スリーサークルモデル (3円モデル)がよく使われます。
1982年に提唱されたフレームで、「ファミリー(家族)」「オーナーシップ(所有)」「ビジネス(経営)」の三つの枠で整理していきます。

組織開発の現場に立つと、話し合いにおいて、それぞれが何についてどんな立場で話しているのかが違うという場面によく出会います。かみ合うはずもありません。。

3つの円は重なりがあるので、計7つの領域になります。まずはこの7つの領域に、創業者や現社長、親族株主、幹部、社外株主などなどの関係者を書き込んでみる。それだけでも”立場の違い”に気づくはずです。
地図が広がると、いまどの円(家族・所有・経営)の話をしているのか が見えてくるのです。



立場によって、見るものが違う

スリーサークルモデルでは、三つの円それぞれに、優先したいことが違うとされています。

●ファミリー(家族) の優先事項

愛情、感情、平等、血縁

● オーナーシップ(所有) の優先事項

財産の保全、投資リターン、相続論理

● ビジネス(経営) の優先事項

成果、効率、成長、競争

たとえば所有の論理では「資産を次世代に残したい」
経営の論理では「成長への投資を優先したい」
どちらも会社のための意見ですが、立場が違います。

同じ「事業承継」に向き合っているようでいて、違う立場から臨んでいることがわかってきます。

たとえば、
先代はビジネスと所有の両方に身を置き、「会社を成長させたい」と「資産を次世代に残したい」の両方を語る。
後継者はファミリーと経営の重なりに立ち、「先代の期待を受け継ぐ」と「経営としての刷新」を同時に背負う。
親族で株を持つが経営には関与していない兄弟は、所有の論理が強く、「自分の持分はどうなるのか」が先に来る。

すれ違いが起きやすいのは、別の円の論理で話している ときです。
「会社のため」という経営の言葉で所有の話をしていたり、「家族だから」というファミリーの言葉で経営の話をしていたり。

三つの論理が同時に動いているのに、一つの話題にまとめようとすると、収束しにくくなります。


7つの領域に、誰がどこにいるかを描く

整理するためには、まず3つの円を描き、重なりを含めた7領域に関係者の名前を書き込みます。

  1. ファミリーのみ(家族だが、所有やビジネスには関与しない)

  2. オーナーシップのみ(株主だが、家族でも就業者でもない)

  3. ビジネスのみ(就業者や幹部だが、家族や株主ではない)

  4. ファミリー + オーナーシップ(株を持つ親族・就業はしていない)

  5. ファミリー + ビジネス(株を持たない親族の就業者・役員)

  6. オーナーシップ + ビジネス(親族以外の株を持つ就業者・役員)

  7. ファミリー + オーナーシップ + ビジネス(オーナー社長など、すべてを兼ねる親族)

地図の全体像は、こんなイメージです。

たとえば「親子で揉めた」とき、先代と後継者がそれぞれどこに立っているかから書き込みます。

  • 先代
     創業者として、ファミリー・オーナーシップ・ビジネスの3つすべてが重なる場所にいる。

  • 後継者
    最初は「ファミリー+ビジネス」の立場から入り、現場や経営の論理を背負っている。

持分や相続の話が入ってくると、所有の論理も加わり、三つの円が同時に動きます。

地図を見返すと「今は所有の話と経営の話が絡んでいる」と分かり、今日はどの円の立場で話を始めるか、という置き場所を決めやすくなります。


承継の現場での例

承継期によく見るのが、会長(先代)と社長(後継者)が並存する。
いわゆる二重権力の状態です。

先代は親族であり、株主でもあり、経営にも関わる。後継者も、家族としての立場と経営者としての立場を同時に背負う。
どちらも経営の論理で話すのに、先代は所有(「自分の会社」)も、後継者はファミリー(先代の期待)も、それぞれ引き受けている。

地図に描くと、「今は経営の円で、誰が最終決定権を持つかの話」「所有の円で、資産をどう渡すかの話」が絡んでいる、と見えてきます。

社員は経営の円にだけ立つ。家族でも、株主でもない。
だから家族内の事情には踏み込みにくい。

一方、後継者は家族と経営の両方の論理を背負う。
社員から見ると、後継者の言動が経営の話なのか家族の話なのか、判別しにくい。

立場によってコンテクストが違う、という見方もできます。

承継期は、三つの円の論理が同時に動きやすい時期です。絡み合うので、シンプルな一直線な解決には至らないことが多い。
地図は正解を示す道具ではなく、いま、どの円の話をどの立場でしているか を確かめるための助けとして使っています。


まとめ

  • 承継期のすれ違いの多くは、「家族・所有・経営のどの円の話が絡んでいるか」の置き場所がずれていることに近い

  • 同じ「事業承継」という話題でも、立場によって見えるものが違う

  • 3つの円と7つの領域に、いま誰がどこに立っているかを描くと、対立が構造として見えやすくなる

同族企業では、家族・経営・所有の三つが重なり、立場ごとに見えるものが違います。すれ違いの多くは、別の円の論理が混ざったまま一つの話題で話していることに近い。

7つの領域に関係者を置くと、いまどの円の話が絡んでいるかが見えやすくなり、今日どの円から話を始めるかの置き場所を決める助けになります。

承継期のモヤモヤは、一人で抱え込むべきものではありません。
いまいちばん揉めている話が、家族の話なのか、持分の話なのか、経営の話なのか。
どの円から地図を広げるか、よかったら一緒に考えましょう。


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※本記事は一般的な情報提供であり、個別の状況に対する助言ではありません。具体的なご相談はお問い合わせください。

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